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ランサムはこの暗闇と人混みの中、大通りを抜けてギルド区の方への道を歩いた。ギルド区へ進むにつれ灯りの数は少なくなり、それに伴い人間の数も減っていった。
センリアのギルド区は、大陸中の主要ギルド支部が集結しており、このセンリアを本部として構えているギルドも少なくはなかった。
ランサムもこの中にあるギルドから突発的な依頼を受けては、少なくもないが多くもない金を稼ぎ生活の足しにしていた。
しかし、ギルドはほぼ解散してしまったという風の噂は、ランサムも聞いてはいた。その噂に間違いはなかったようであり、ギルド区は閑散としていた。
世界が終わる間際にギルドなんて馴れ合いをしている場合ではないだろうし、魔王との決戦で壊滅状態になったことも要因かもしれない。
あれだけ啀み合い、時に助け合い、騙し合いながらもそれぞれが特化した請け負いをしてきたギルド達が一蓮托生した結果なのだ、それは仕方ないのかもしれない。
ギルド区に入ると正面に見えるのは、センリア最大の戦士ギルド「土の伽藍」の建物だった。
しかし建物に灯りはなく中に人がいるようには遠目からは確認することはできない。
そういえばさっきの喧噪の中に戦士ギルドの者たちらしき人たちはいたなと思い返した。このご時世でも散開することなくやがてくる終わりを楽しむ度胸はさすが戦士というところなのだろうか。
ギルド区の中央道路に左右に続く建物は、灯りがついていないものもあれば、中には明るく暖かな光を出しているところもある。
その並びの7つ目の建物である盗賊ギルドを左に折れた時である。
飛び出して来た人物とブツかりそうになった。ランサムはその人物に見覚えがあった。
「ちっ……あぶねぇな。……ってランサムじゃねぇか、帰ってたのかよ」
黒い装束を身にまとい、深く被るフードから覗く目にまだあどけなさが残っている人物は、荒い口調でまくしたてた。
「エミーか、こんな時にまで盗みか?」
「いいんだよ、これがオレのここでの生き甲斐だったんだ。ほら」
ランサムがエミーと呼んだ人物は、フードを脱ぐと手に持った袋をランサムへ投げた。それはランサムがさきほどまで腰につけていたものだった。
「相変わらず見事だな……」
「じゃオレは、もっと居住区へ行くからな。最期なんだやるだけやってやる」
エミーがそう言った時にエミーの顔に一筋の光が映った。それは暗闇に走る一筋の光にエミーの持つ素材の良さも相まって非常に可愛らしい笑顔であった。
ランサムは、盗賊でなければともう何度目かとも分からない思いを馳せていた。
「あぁ、もう日蝕終わりはじめてんじゃねーか、急がないと。じゃぁお疲れ、またどっかで会うことがあったらよろしくな」
音も立てずにあっという間にエミーは特有の非常に軽い今生の挨拶とともに闇の中へ溶け込んでしまった。
「俺もいい加減急がないとな」
ランサムは、その足を早めた。




