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終わり往く世界、歩み往く男。  作者: 千代
中央都市センリア
6/15

センリアの町は、中央都市で各地方都市への道が集結しているところであるためか、他の町よりも人はまだ多くいるようであった。


煉瓦造りの大通りは、奇麗に彩られたままであり、町の中央に高くそびえる時計塔から聞こえる鐘の音は、それがまだ文明が生き続けていることを教えてくれていた。


大通りを歩く人々は、この世界が終わりゆく前日であってもどこか楽しそうであった。

広場でフリーモールを開催している人もいれば、ただだべり続けている人もいる、それは活気という言葉にふさわしい状態であった。


ランサムは、ベンチに座る男性に酒場の場所を聞いたが男性はただ楽しげに理解不能な返答をするだけであった。


どうやら世界の人々は、この町に集まりそして楽しく騒いで最期の時を迎える、というのが共通の感情であり認識であるようだった。


地方の町との大きな違いに驚きを覚え気分が悪くなった。

人の生き死にをどう考えているのだろうか、それはまるで人間らしい生活をしているセンリアの人間こそが何か人間の皮を被った魔物のように見え、パスアルカのような辺境の町にへんくつに生きるあの男こそが人間らしく見えてしまうのであった。


気分が悪くなったランサムはどこかで休憩できるところを探そうと考えていた。それが最期の休憩であることを含めてそれは十分に考えておかなければならないことであった。


その刹那、視界が唐突に暗くなった。初めはそれは貧血の類いかと思ったがどうやらそうではないようだった。


自分の視力がおかしくなったのではなく、世界全体の色彩が失われて闇に飲まれていくような表現が正しいように思えた。


ランサムはそこでようやく空が急に暗くなったという事実に気付いた。


空を見上げると、そこには巨大な衛星が見えた。

だが、それはこれまで何度も翼竜と見てきたはずの衛星とは比べ物にならないくらい紅くそして巨大だった。


落ちて来ているんだ。


ランサムは咄嗟にそう感じた。翼竜は、肩の上に止まるとその爪が強く力がはいり肉にのめり込むのが分かった。


その不気味さからこれが世界の終わりの総決算なのだと直感したが、それよりも不気味なのは人間だった。



狂乱の宴。マッドネスパーティー



そう例えるのが相応しいとランサムは思った。


町にいる人々は、恐れるどころか騒ぎ立て、その喧噪が反響するように更なる喧噪を呼び、盛り上がりを増していた。


暗闇の中に照らされた人間のシルエットが人間ではない何かに見えてきたランサムは、早急に安心できる場所を探さなければならなかった。


翼竜は、この人間が作り出す人工的な空気に耐えきれなくなったのか翼を広げるとゆっくりと垂直に上昇すると飛び去っていった。


「こうなるとしばらくは帰ってこないな……」


ランサムは翼竜のことをよく知っていた。


ペットは飼い主に似るとはよく言うが翼竜はまさにそれであった。


人間臭い場所をあまり好まないのだ。

その人間臭さというのはただ人間の体臭というわけではない。人間が作り出す生活環境、文明、機械など一見問題ないようなものでも翼竜はその違和感を敏感に感知してしまうのだ。


なので、これまでも今のように急に飛び立っていってしまうことは何度もあった。


ランサムが町から出た時や、自然に囲まれた場所にいると自然と戻ってくるのだ。ランサムも大都市の喧噪や人との会話を好む方ではなかった。


しかし、翼竜と共に旅をするようになり翼竜のこの特性を知ってからはその傾向に磨きがかかっていると本人も気付いていた。


これはむしろランサムが翼竜に似てきているのではないのかとも思うのだった。


飛び去った翼竜は、紅い月に照らされて非常に美しく映った。


人間たちは、その様子をまるで一興であるかのように騒ぎ立てグラスを重ね合ったり、他人数で歓声をあげたりしているのであった。




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