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男は俯いたままグラスに入ったブランデーを揺らしながらちびちび飲んでいた。
彼は自然と彼の方へと足が進んでいった。まるでそれは予めここで会うのが約束されていたかのように。
「おい、ちょっといいか……」
彼が男の前まで歩いて、声をかけたときに気付いたことがあった。
入り口に立っていた時は暗くてよく見えなかったが男の服装は、非常に整った装備であったからのだ。
砂塵に汚れていながらもその被っているカウボーイハットは非常に丈夫そうに見えた。
更にグラスを持つその腕は引き締まっており、歴戦の強者であることが簡単にみてとれた。
しかし、男は彼対して、顔を見ることもなくただグラスを握っていない方の手で机の上をコツンコツンと叩いた。
「座れってことかい」
彼は、男の向かいの椅子に座ると翼竜は彼の足下に丸まって座り込んだ。
「さて、改めてだが」
「……おいおい座って何も飲まねぇってのはないだろう」
男はようやく喋ったかと思うと、男に注文を要求した。
「それもそうか……おい!ウォッカくれ」
彼は、カウンターにいる女にそう言うと、再び舌打ちが聞こえたが、がさがさと動いている音が聞こえたのでそれが肯定の返事であると理解した。
女は、グラスにウォッカを乱暴に入れると「はいよ」と粗雑に机に置いた。
そのグラスを掴み喉へ一口流し込むと、体が一気に熱くなるのを感じた。
「じゃあ、そろそろいいか」
彼の問いかけに男は、しばらくの沈黙した後にようやく口を開いた。
「まずは名乗ってもらおうか」
「ふむ……俺の名前は、ランサムっていうんだ」
彼、いやランサムは「焦じらせてめんどうな男だ」と思ったが、この町でほかに人間を探すのも骨が折れそうであったし、名前を言うことに不都合もなかったため正直に言うことにした。
「ランサム……もしかしてお前さん、そしてその翼竜、孤高の討伐者のランサムか?」
「あぁ……そう呼ぶやつもいるようだ。だがそんな異名は俺にはどうでもいいことだ」
「やはり、そうなのか。まだ、いたのか、いやそんなことはいい。俺の名前はボウデンってんだ。ガンナーをやっていた……のは昔の話だ。で、なんの用だ」
ボウデンはようやくランサムの目を見て語りかけた。
「この町はどうなって、いやそうじゃねぇ、この世界はどうなっちまってんだ?」
ランサムは正直な疑問を投げかけたつもりだった。だが、ボウデンはそれがひどくおかしく感じだようであり、くくくと忍び笑いをしだした。それはまるで陽が沈んでまた昇ることを何故なのかと質問されたかのように。
「くくく……いやぁ、なんだって?この世界はどうなっちまっただって?くくくくく……これは愉快なことを言ってくれるもんだ、討伐者様よ」
「なにかおかしいことを俺が言ったか?」
ランサムはさすがにイラつきを隠せなくなり、握るグラスに力が入る。
「なんだ……その感じじゃほんとに知らないようだな。たまには町に降りてこないと知るべきもんも知らずに時は過ぎ去るぜ」
「お前は俺に教えてるのか教えないのかどっちなんだ。御託は聞きたくない」
ランサムが声を荒げると、翼竜は顔をあげたが少し様子をみるとまた首をすぼめてくつろぎはじめた。
「落ち着けよ。お前は一人でいる時間が長過ぎたんだ。こんなんでいちいち荒れてたんじゃこの世界じゃ生きていけねぇぞ。まぁもう生きてく価値もない世界だがな」
「どういう意味だ?いい加減もったいぶるのはよせ」
「負けたんだよ俺らは」




