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「提案だと?」
「提案の前に一つ、お聞きしたいことがある」
ランサムが前のめりになったところでタナベがそれを遮った。
「……なんだ?」
ランサムはため息混じりにそう返答した。
「さきほど私がお話したあなたの前世とでも言うべき内容ですが、それに対してあなたは何か思い出したことはあるのでしょうか」
タナベはこれまでよりもゆっくりと話した。ランサムは空気が張りつめたのを感じた。
なぜならば、タナベもサイトウもランサムの母親も固唾を飲んでランサムの反応を待っているからだ。
「残念ながら……何も思い出したことはない。俺はパンゲアの孤高の旅人ランサムだ」
そんな……とランサムの母親が小さな声で呟き、震えるのが分かった。
「ただ」
ランサムは言葉を続けた。落胆の色が隠せていなかった母親もランサムを再び見つめた。
「ただ……俺にはあなたが非常に懐かしく見える。これを優しさというのか愛というのかは分からない。あなたが私の母親だと言うのならば、あなたは私の母親なのだろう」
「ああ…ああ……」
ランサムの母親は言葉を見つける事ができず、泣き伏せた。
「分かった。ありがとう。私は彼女をここまで連れて来て正解であったよ」
「あぁそうか、それなら良かった。じゃあ改めて提案というのを聞かせてもらおうじゃないか」
「それでは提案をさせていただきます。そもそも今回なぜ本サービスが終了されたのかをお考えになったことがありますか。」
そういえばそうであったとランサムは思った。
そこで自分のような人生を送る人々がいるのならばこの世界を終える理由などないのではないだろうか。
「確かに、なぜだサイトウ」
サイトウは明らかに残念そうに語りだした。
それはこの空間が自分が作り出したものであるからこその制作者故の悲しみであるように。
「本サービスが開始された直後は、確かに全感覚没入型のゲームとして社会現象となりました。ですが、それは当時の話。
盛者必衰、流行りがあれば廃れもあるのです。
簡単に言えば、似たようなサービスが乱立されたのです。
競合各社、更に弊社も続々と類似のサービスを打ち出し、世は全感覚没入型ブームとなりました。
本サービスは老舗のサービスとして長く生き延びてはいたのですが、やはり時代の波には勝てません。
プレーヤーの数も少なくなり、サービスへとログインするための機器も時代遅れとなった今、サービスを継続させることは得策ではないと判断し今回残念ながら終了となったのです。」
「すまない、難しい話をされても俺には分からないんだ……つまり何が言いたいんだ」
「今回、あなた様には弊社が現在世界最大規模で運営している最新の全感覚没入型のサービスにご招待したいと考えています。
そこで新たな人生をその命が果てるまで、もう一度体験していただきたいのです。」
「ほう……」
「ですが、それには一つの制約があるのです。」
「制約?」
「このサービスに加わると、あなた様の記憶はリセットされてしまいます。
現在、ここでこう話していることも、そしてこれまでパンゲアにて体験してきた思い出すべてが消去されてしまいます。
それでもよろしければ、このサービスへの移行を開始させていただきます。」
「ちょっと待ってくれ……消える…?記憶がか?」




