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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鏡の中のディストピア

作者: 雪国竜

 ミ~ン、ミ~ンミ~ン。


 蝉が元気よく鳴く中。

 時計は九時なろうとしていた。

 まだ、朝と言える時間の中、燦々と照らす太陽が当たらない建物の日陰に寄り掛かりながら、わたしこと二木にき裕香ゆうかは人が来るのを待っている。

 予定の時間よりも十分ほど早く来たわたしは、ある人が来るのを今か今かと待っていた。

(まだかな、まだかな・・・・・・・・・)

 わたしはデート用に買った白いワンピースを見ながら、ソワソワしていた。

 胸元に赤いリボンがワンポイントなっており、袖や裾に薄いピンクのレースが付いているのがオシャレだと思った。

 お小遣い三ヶ月分なのは痛かったが、それもこの日の為だと思い涙を呑んで買った。

 今日、家族以外で初めてのお披露目だ。

 なので、彼がどんな反応を取るか楽しみだった。

 ワクワクしながら待っていたら。

「ごめんごめん。少し遅れちゃってっ」

 わたしが居る所に駆け寄ってくる人。

 半年前にわたしのクラスに転校してきた男の人だ。

 名前はチャン飛翼フェイイー君だ。

 中国からの短期留学生だけど、英語と日本語もペラペラなうえにイケメンだ。

 モデルになっても稼げそうなくらいだ。

 刃のように鋭い瞳。頬から顎のラインが細いので女性のような印象を抱かせる。

 それを意識してか、髪は肩に掛かるか掛からないぐらいの長さで切り揃えている。

「ごめんね。誘ったのに遅れてしまって」

 歯を輝かせながら、笑顔を浮かべる飛翼君。

 ああ、その笑顔を見るだけで、この暑い中待っていた甲斐があったわ。

「だ、だいじょうぶ。そんなに待っていないから・・・・・・・」

 本当は三十分ほど早く来たのだが、そんな事を言って飛翼君を恐縮させるのは、宜しくないと思い言わなかった。

「じゃあ、行こうか」

 彼は手を出してくれた。わたしは手を伸ばして、その手を握る。

 そしてわたし達は歩き出した。


 わたしと彼がデートをするのは理由があった。

 あれは四日前の事だった。

 飛翼君がうちの高校に来て、しばらく経ちクラスに慣れれてきた。

 そんな時に彼が、クラスの女子に熱心に話し掛けている。

 何時もは女子が彼に話し掛けられて、相手をしているのに、彼の方から声を掛けているのが珍しかったのを覚えている。

 わたしは気になって見ていた。

 すると、女子たちが済まなそうに謝っている。飛翼君は、手を振って気にしないでと言って、女子たちから離れて行く。

 わたしは気になって、彼に声を掛ける事にした。

「飛翼君」

「やぁ、二木さん。おはよう」

 彼は笑顔で挨拶してきた。

 その笑顔だけで、もう胸がいっぱいですと思いつつ、わたしは挨拶をする。

「おはよう。さっき、クラスの人達と何か話していたけど、何を話していたの?」

「ああ、実はね」

 彼は胸ポケットをまさぐる。そして、何かのチケットのような物を出した。

「近くにある遊園地があるの知っている。デビデビランドっていうの」

「ああ、あそこ」

 何十年も前に出来た遊園地で、今でも一風変わった遊園地として地元では知られている。

 何処が変わっているかというと、全部悪魔をデフォルメしているからだ。

 マスコットも熊に蝙蝠の羽を生えさせた「熊デビ」というのが居る。

 他にもマスコットは居るらしいが、詳しくは知らない。後はそこら辺の遊園地と変わらないと聞いている。ぶっちゃけ、そこの遊園地に行った事がないので、どんな遊園地か知らない。

「実は友達がそこの遊園地でアルバイトをしていてね。そこのチケットくれたんだ。十二枚」

「へぇ、それで?」

「十枚売れたんだけど、残りの二枚残っているのだけど、誰か買ってくれないかなと思って、声を掛けていたんだけど」

「売れてないの?」

「そうなんだ」

 しょんぼりした顔をする飛翼君。

 ああ、そんな顔をされたら罪悪感が半端ない。

 ・・・・・・うん? 二枚?

 という事は、その遊園地に二人行けるという事だよね。

 だったら。

「ねぇ、チケットが余っているなら、その・・・・・・わたしと一緒に行かないかな?」

 上目遣いで見ると、飛翼君はパッと笑顔になった。

「いいのかい? 余っているから僕は良いけど」

「うん。わたしはいいよ」

「じゃあ、今週の土曜日に行こうか」

「うん!」

「待ち合わせは、近くの駅で九時でいいかな?」

「うん! それでいいよ」

「分かった」

 話し終わると、丁度良くチャイムがなった。

 飛翼君は席に座りに行く姿を見て、わたしはその日がウキウキしながら、自分の席に座る。

 

 で、駅を乗り継いで、わたし達は、目的地である『デビデビランド』に着いた。

 わたし達はチケットを受付に渡して、パンフレットを貰い園内に入る。

 園内に入ると、親子連れの人達やわたしたちみたいなカップルみたいな人達が多くいた。

(結構、人気有るのかな? 来た事ないから知らなかったけど)

「アトラクションは沢山あるようだし、楽しめそうだね」

「そうだね。ねぇ、どれから乗る?」

「まずは近場に有るのから乗って行こう」

「うん、そうしよう!」

 わたし達は仲良く歩きながら、遊園地のアトラクションに回った。

 端から順番にアトラクションを回って行く。途中でお腹が空いたので昼食を挟んでから、また回った。

 アトラクションをある程度回っていたら、小さい子供が何処かに向かって走っていく。

 その子供達が行く先に目を向けると、この遊園地のマスコットキャラクターが居た。

 可愛い熊の姿に蝙蝠の羽を生やしていた。この遊園地のマスコットキャラの『熊デビ』だろう。

 『熊デビ』は手にこの遊園地のマスコットキャラが描かれた風船を、子供達に囲まれながら渡している。

 子供達と触れ合う姿を見て、わたしは携帯を取り出した。

「すいませ~ん」

 わたしは子供達に風船を配り終えて、バイバイと手を振る『熊デビ』に声を掛ける。

 声を掛けられた『熊デビ』はこっちに来てくれた。

「一緒に写真を撮っても良いですか?」

 そう尋ねると『熊デビ』はコクリと頷いてくれた。

 わたしは携帯を飛翼君に携帯を渡す。

「写真を撮ってもらっていいかな?」

「うん。いいよ」

 わたしは『熊デビ』に抱き付きながら、ピースをする。

 カシャッという音がしたので撮れたと思い、わたしは飛翼君に元に行く。

 携帯を見ると、わたしが『熊デビ』に抱き付いてピースしているのがよく撮れていた。

 わたしは満足して、その場を後にしようとしたら『熊デビ』が止めてくれた。

 何か用なのだろうかと思い、見ていたら無言で手をわたし達を差して、そして自分を差しておにぎり結ぶようなポーズをした。

(うん、意味が分からない)

 わたしは意味が分からず、首を傾げていたら飛翼君が。

「多分、僕達のツーショットを撮ってもいいよと言っているんじゃないかな?」

「え、ええ、そうなの?」

 わたしは『熊デビ』に訊いた。すると『熊デビ』は頷いた。

(え、ええ~、あの手で写真撮れるの?)

 そう思うが、向こうがそう言うなら撮れるのだろう。

 ちょっと疑わしいが、わたしは飛翼君と一緒に撮れるなら、文句はなかった。

「じ、じゃあ、お願いします」

 わたしは携帯を渡して、飛翼君と並ぶ。

 本当は腕を組みたいけど、恥ずかしいので出来なかった。

 そんなわたしの気持ちを察してくれたのか、飛翼君はわたしの肩を抱いて寄せてくれた。

「・・・・・・・いやだった?」

「う、うんうん。別に大丈夫だからっ」

 心臓が激しく脈打つのを感じながら、わたしは前を見る。

 パシャッ。

 シャッター音を聞いて、本当に撮れたんだと思いながら、わたしは『熊デビ』の元に行く。

 うん。ちゃんと撮れている。

 あのモフモフした手でどうやって撮ったんだろうと思いながら、わたしは手を振る。『熊デビ』も手を振り返してくれた。


 遊園地を一頻り回っていたら、日が沈みだして来たのを、乗った観覧車から外を見て分かった。

 そろそろ帰ろうと思っていたら、飛翼君が最後に此処に行こうと誘ってきた。

 何処と聞くと、彼はパンフレットで指差してくれた。

 そこは「ミラーラビリンス」というアトラクションだ。

 多分、ミラーハウスみたいなものだろうと思う。

 最後だし行ってみる事になった。

 そこに行くと、ドーム状の大きな建物があった。

 入る前に受付に行くと、そこで携帯を預かるそうだ。

 どうしてと聞くと、携帯の着信音が建物の中に響いて煩くなるので、入る前に預かるそうだ。

 わたしはそう言われて、何の疑問を抱く事無く、携帯を受付に入る。

 そして建物に入った。

 鏡の迷宮と言われる通りに、迷路じたてのミラーハウスだった。

 色々な所が鏡になっており、鏡だけでは面白く無いと思ったのか、色々な絵が額縁に収まりながら、かざられていた。

「へぇ、凄いねえ~」

 わたしは歩きながら、辺りを見回す。

 色々な角度の鏡があって、その鏡にわたしや飛翼君が映るのだ。

 面白くて見ていたら、ふと鏡に映った女性が見えた。

 後ろを向いてもその女性はいなかったので、どうやら女性を描いた絵を鏡に中に埋め込んだのだろう。

 女性は悲痛な表情で、わたしを見ている。

 何だろう。絵なのに、まるで生きているみたいだった。

「どうしたの?」

「う、うん。何でもない」

「中々、いいでしょう。ここ、偶に一人で居たい時によく来るんだ」

「へ、へえ、そうなんだ」

 少し変わっているねと思うが言わない。

 そのまま歩いていたら、今度はわたしと同じ位の女の子が鏡を叩いている姿が見えた。

 ギョッとしたが、でも鏡は揺れているようには見えない。

 叩いているのに鏡が揺れもしないし音がしないの何でだろうと思った。

「凄いでしょう。何でも、鏡の中に立体映像を投影しているそうだよ」

「へぇ」

 そう言われて、納得して見ていたら、女子が叩くのを止めて飛翼君を指差して何か言っている。

 声が聞こえないので、何を言っているか分からないが、何かを訴えているのだろう。

 でも、それで何で飛翼君を指差すのかが分からない。

 何で飛翼君を指差しているのだろうと思っていると、飛翼君が先に進んで行ったので、わたしも後着いて行く。

 そしてミラーハウスの中心部に来たようだ。飛翼君はそこで立ち止まって何かを見ている。

 わたしも飛翼君の隣に行き、それを見た。

 鏡の容器の中に綺麗な女性の姿があった。

 見た目はわたしよりも一つか二つ上の年齢くらいだと思った。

 綺麗だった。そうとしか言えないくらいに綺麗だ。

「綺麗でしょう?」

「うん」

 こんな所に何で、こんな像があるのだろうと思った。

「これはね。このミラーハウスの目玉として配置されたモノなんだ」

「へぇ、よく知っているね」

「うん。だって、これは僕の姉さんがモデルなんだ」

「お姉さんが居たんだ」

 初耳だったので驚いた。

 飛翼君は少し辛そうな顔をする。

「うん。ずっと前に亡くなったけどね」

「あっ、・・・・・・ごめん」

「いいよ。別に、それよりも二木さん。周りを見て」

「周り?」

 わたしは言われて周りを見ると、周囲の鏡に女の子が映っていた。

 皆、色々な行動を取っていた。

 泣いている人。怒りながら鏡を叩いている人。体育座りしながら、ジッと動かない人。

 死んだ魚のような目をしてブツブツ何かを言っている人。狂ったように笑っている人など様々だ。

 わたしは見ていたら、一つだけ何にも映していない鏡があった。

「あれ、これは何も映してないの?」

 わたしはその鏡に近付く。その鏡をジッと見たが、不思議な事にわたしも映らない。

「どうして?」

「その鏡はね・・・・せい・・で、鏡に手を当てると何か見えるそうだよ」

 わたしはそれを鏡に手を押しあてた。

 だが、何も映しはしない。

(もう、嘘ついてっ)

 わたしは飛翼君に一言言おうとしたら。

 ズブッ、ズブズブッ。

 手が鏡に沈みだした。

「えっ⁈」

 意味が分からず、困惑するわたし。

 腕を引っ張っても、鏡から腕を出てこない。寧ろ腕が沈みだすスピードがあがる。

「た、助けて。飛翼君っ」

 だが、飛翼君は動かない。

 それは驚いて動けないのではなく、まるで捕食される動物を観察しているようだ。

「た、助けて、助けてよっ、飛翼君、飛翼君っ」

 助けを求めても、飛翼君は一向に動かない。

 やがて、わたしの身体の半分が鏡に飲み込まれる。

「い、いや、いやあああああああっ、たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてっっっっっっ‼」

 どんなに叫んでも誰も助けてはくれなかった。

 そして、身体の殆どが鏡に飲み込まれた。

 最後に手を伸ばした。誰か助けてと思いながら、だが、その手は誰も取られる事無く鏡に飲み込まれる。

 飲み込まれる寸前。飛翼君が呟いた「これで百人」

 そこで、わたしは意識が途切れた。


 二木さんが鏡に飲み込まれて、直ぐに何にも映していなかった鏡に、倒れている二木さんを映した。

 しばらくしたら、意識を取り戻して、鏡を叩くか泣きわめくだろう。

 まぁ、俺にはもうどうでも良い事だ。

 そう思っていたら、背後から誰かの足音が聞こえる。

 このポス、ポスと独特な音を立てながら歩く奴は僕は一人しか知らない。

『よう、相棒。仕事は順調に終わった様だな』

 話し掛けてきたのは、この遊園地のマスコットキャラ『熊デビ』だ。

 見た目こそこんなファンシー感じだが、本当は悪魔でこの遊園地の陰の支配人だ|(ちゃんと表向きに園長はいる)そして、僕の友人でもある。

「ああ、終わったよ」

『流石は相棒だ。仕事はきっちりこなしてくれるぜ』

「そうでもないさ。ここに連れて来るのに時間が少し掛かったよ。正直、今日は無理かと思っていたからね」

『はっはは、それでもきっちりここに連れて来れるのだから、たいしたものだぜ』

「・・・・・・そんな事よりも、この子で百人だ」

『そうだな。これで約束の三分の一まで来たな。相棒』

「本当に契約を守るんだろうな?」

『当たり前だ。悪魔は契約には忠実だ。ちゃんとお前の願い通りにしてやるよ』

「そうか」

 僕は鏡の容器の中居る人を見る。

「姉さん、もう少しだよ」

 この鏡の容器の中には、姉さんの遺体が入っている。

 腐敗臭がないのは、この『熊デビ』に頼んで腐らないようにしてもらったからだ。

 僕と姉さんは腹違いの姉弟だった。

 初めて会った時から、お互いを好きになった。

 それは姉弟だと知っても変わらなかった。

 家を何度も駆け落ちをしたが、父親が家の権力を使って何処に隠れて居ようと探し出した。

 そして、最後には追い詰められた僕達は、最後には一緒に死ぬ事にした。

 一緒に死んで、来世で一緒になろうと約束して、僕達は薬を飲んで海に飛び込んだ。

 だが、僕が目覚めると病院のベッドの上だった。

 運悪く、近くを通りかかった船に発見されて、僕達は引き揚げられた。

 更に不幸なのは、僕は死なず姉さんだけ死んでしまった。

 発見が遅かったので海水を多く飲んでしまい、溺死したそうだ。

 それを看護士の人から聞いた時は、あまりの悲しみで血涙を流しながら泣き喚いた。

 僕は生きる意義を失い、生きているけど死んだような生活を続けた。

 そんな生活を続けていたら、突然、僕の前にこの悪魔が現れた。

『お前の姉さんを蘇らせたくないか』と言ってきた。

 僕は一も二もなく即返事した。

 そして、悪魔が出した条件は二つだ。

 一つ。生贄として女性を三百人程用意する事。

 二つ。蘇えった姉さんと僕が悪魔に成る事。

 僕はその条件込みで頷いた。

 そして、数十年前にこの遊園地を築き、僕は生贄に選んだ女性をこの鏡の迷宮の中に捧げる。

 それを何度も繰り返して、ようやく百人になった。

『しっかし、最初はデートに誘う事も出来なかった奴が、今じゃあ立派な女たらしか、相棒の姉さんが蘇えったら、何て言うかな』

 ケケケケッと笑う『熊デビ』

「そんなのは、根気よく説得するよ」

『ケケケケ、まぁ、頑張りな』

 他人事みたいに言って、お前にも一肌脱いでもらうからな。

『さて、相棒。そろそろ。閉園時間だ。鏡で出来た連れて来た子の分身を連れて、早く出な』

「そうだね。だけど、少しまってくれ」

 僕は姉が収まっている容器に抱き付く。

「もう少しだけ待っていて、そうしたら、二人で仲良く暮らせるから」

 僕が目をつぶり、そう言うと。

『フェイ』

 そう呼ぶ声が聞こえた。

 姉さんはいつも僕をそう呼ぶ。

「姉さんっ」

 そう声を掛けるが、姉さんは何も言わない。

 空耳かも知れないが、それでも久しぶりに姉さんの声を聞いた。

 僕は嬉しくて、顔を綻ばせた。

『相棒、そろそろ』

「ああ、分かっている」

 僕は容器から離れ、振り返らないでその場をを後にする。

 出口に着くと、二木さんによく似た人が立っていた。

 これは『熊デビ』が自分の力で生み出した人の形をした鏡だ。

 鏡なので喋れないが、姿かたちはそっくりに出来る。

 何でこんな事をするのかというと、この遊園地で行方不明の人が出たら、警察とかが調べるかも知れない。そんな事にならないようの偽装工作だ。

 この鏡はある程度時間が経つと自然と消えるようになっている。

 携帯を持たせて、この遊園地を出て、その後適当に歩き回らせていたら、自然と消える。

 その際、人に見られても神隠しだと思われる。

 何度も実験しているので、問題はない。

 僕はその鏡と一緒にミラーハウスを出ようとしたら『熊デビ』に声を掛けられた。

『相棒、聞いてもいいか?』

「何だい?」

『もう五十年掛けてしているの、まだ百人にしか達していないぜ。それでもするのか?』

 その問いかけは、興味よりも心配しているように聞こえた。

「君のお蔭で悪魔になったからね。老化しないし、寿命もほぼ永遠に近いんだ。だから、じっくりやるさ」

『そうかい。じゃあ、がんばりな』

 僕はミラーハウスを後にした。

 数日後、二木さんが行方不明になったとホームルームで訊いて、内心上手くいったと思った。

(次は誰にしようかな・・・・・・・・・)

 僕は次の生贄は誰にしようかと、クラスに居る女子を物色した。

(後、二百人だけど、根気よくやろう。待っていてね。姉さん)

 







 





熊デビが飛翼と契約したのは、実は悪魔に成る前。まだ子熊だった時に、張姉弟に助けて貰ったので、その恩返しで契約したのだ。

本当は契約なしでも、姉を蘇らせる事も出来るのだが、飛翼が「僕と姉さんを悪魔にしろと」と言われた。流石にそこまでは無理なので、そこで姉を蘇らせるついでに悪魔にする事にした。

なので、契約の条件に盛り込まれた。

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