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AF―After Fantasy―  作者: 04号 専用機
Vengeance is mine
151/166

タイトル思い付かんわ

 能力を発動。縄を消して立ち上がる。視界はまだ揺れている。


「寝てろって――おっと」


 ボクに意識が向いた瞬間、藤高の発砲がルシフェルを襲う。ボクに対して少しだけ距離を開け、トラックから引き離していく。

「そんなに大事かね、そのトラック。どうせ中身は空だろ?」

 見抜かれている。

「そうとも限りませんよ。急な襲撃だったものでね、鍵を使う暇も無かった」

「吹かすじゃないか、安全運転マンめ」

 そう言えば、銀剣を帯びていない。あれは魔力を通さないから、鍵を使って召喚することはできないはずだ。思い込みは良くないが、使う時はいつも腰に帯びていた。可能性は低いだろう。

 あれがないなら、援軍まで待てる。

「ホーントにやな仕事だよ。これで休みを貰えるって言うんなら、今頃俺は一生有給取っていられる」

「ちょっとさぁ、真面目にやんなってルシフェル」

「あのなぁ……別に弾丸飛び交う戦場ってわけじゃないんだ。たまには気楽にやらせてくれよ」

 ちらりとミカエルを見ると、間合いの外からこちらを警戒しているだけだ。運転手の春原をどうにかしようとは思っていない。

 春原が連絡を回しているはず。どんな援軍かも分からないが、陸路が使えない以上は空からだ。

 悟られないようにしなければ。あわよくば倒せることが最善だが、そう都合良くはいかないだろう。ルシフェルの強さはまだ底が見えていない。方舟で戦った時もそうだった。

 あの時は運良く逃げられただけ。今回はそういう訳にもいかない。

 処理できるところからだな。ミカエルから片付けるしかない。

 知っている動きをどう掛け合わせて隙を作るべきか……そう言えばそうか。ボクらは盾を持った相手と戦ったことなど無いんだ。今のスサノオならいざ知らず、今再現できる動きは昔のスサノオのそれだけ。経験があるとしても、それは精々二刀流、しかも竹刀に限った話。真剣ではなく盾すらもない。

 今になって理解することだが、ボクらは本当に、戦闘──闘争というものから遠い世界にいたのだ。

 なんの因果か、こんな厄介なやつを相手にしているけれど。というか、猛攻を凌ぎながらまだ生きていることが奇跡に等しいわけだけど。

「防御ばっかじゃつまんないよ君ィ」

「すみませんね、こちとら少し前まで普通の人間だったもので」

 人を殴ることに今更躊躇はない。しかし攻撃の隙がほとんどないのだ。盾で受けるだけでなく、いなしたり、その盾で直接打撃に転じたり。多彩な攻撃をなんとか防ぐだけで手一杯。とてもじゃないけれど藤高たちの援護になど回れない。

 正直このまま時間を稼ぐしかないだろうな。手がないこともないが。


「案外粘るな。紅黒以外は相手にならんと思っていたが、ちゃんと鍛えてる」


 紅黒を押さえつけながら、藤高を警戒する。


「いや、相手になるかって聞かれればそんなことは全然ないわけだが」


 弾丸をものともせずかわし、開いた距離でも紅黒と戦える。刀一本。武装の差があると言うのに大したものだ。

 ボクはボクで。


「ほれほれ来なよ。そろそろ本気でやっちゃうぞ!」

「ああもう……!」


 問題がある。

 想像していたよりも威力が出ない。

 動きは全く同じはずだけど、盾を弾き飛ばすこともできなければ吹っ飛ばすこともできない。


「……スサノオと比べて、どうです?」

「重さ不足かな。動きも全然違う」

「はぁ……?」動きは同じはずだろ。「節穴ですか?」

「俄は嫌いって言ったでしょ」


 さて、意味が分からないな。動きが同じなら威力は同じはず。足りない筋力は魔力で補っているはずだ。しかし動きまで違うという。

 盾による殴打をかわしながら、動きについて考える。

 運動量の違いか。恐らくそこだ。何かが決定的に違う……今考えても仕方ないことか。身体能力はボクの専門ではないし……おっと。


「さすがに刃物は怖いですね」

「当たらないのはスサノオと一緒か」


 思考をシフト。回避を重点的に行う。相手の動きはだいたい覚えた。回避行動をインプットして、魔力によるイメージ強化によって体を自動で動かす。体力の消耗がどうなるかは予測できないが、このまま意味の無い攻撃を続けるよりかは効率的だ。


 頭に幾つかのイメージを浮かべる。魔力の消費は高速回転させることによって抑える。スサノオが見せた動かし方だ。


 さて、回避する方法は決まった。あとはどうやって乱戦に持ち込むか。

 ……どうにかできそうな技を一つだけ知っている。当て方を工夫すれば決まるはずだ。


 ミカエルの行動は防御が基本だ。ボクに対して散々言っておきながらなんとも腹の立つ話だが、余計な考えだ。今はそれは置いておこう。

 盾を構えての突進。まずはこれをかわす。体の角度を変えて剣の側へと回り込む。

 魔力の強化も無しに手を出すと、当然嫌がるようにかわす。そこまではいい。


 どうしても盾を正面に構え直すというのだから、これ以上無いほどに分かりやすいと思う。

 イメージを追加。

 あの技のイメージに魔力を乗せて──背筋に電流。


「カットバシ!!」


 手に持った剣をバットのように振るい、盾の縁に打ち当てる。


 鈍い音がして、ミカエルの腕が若干上がる──それだけだ。

 最初から威力には期待していない。

 この僅かな隙が必要だった。

 たった数秒の隙間が。


 空いた掌を相手に向ける。

 能力を発動し、肉体を消せないまでも魔力を打ち消す。

 剣と盾。重いはずだ。強化を張り直すまでの時間があればいい。


 藤高の方へ脚を向けて駆ける。

 ルシフェルとミカエル、その二人を結ぶ線の中間へ。

 魔力を広範囲に広げる。多少の巻き添えはやむを得ない。

 それに、影響が大きく出るのはミカエルだけだ。

 広げた魔力の全てに、一気に能力を展開した。


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