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AF―After Fantasy―  作者: 04号 専用機
Beyond belief
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どこで知った?

書き溜め尽きそう!

 少しだけ、正直に話してみようと思った。ミカエルならきっと、僕の願いを受け入れてくれると。

 そして僕は俯いて、ふと考えを整頓する。

「…………方舟に居たいんだ」

 ミカエルの目を真っ直ぐに見つめて。

「ここでなら。俺は」まだ前に進める。「もっと強くなれる」

 だから、そのためには、ここに居なくては。帰りたくない理由なんてそれだけで、けれども僕には、それだけで充分なのだ。

 僕の我侭を聞いて、ミカエルは「うーん……」と唸る。

「不満か?」

「まぁまぁね」肩を竦め。「私が焚き付けたのも悪いんだけど、さ」

 不意に目を逸らされた。何か後ろめたいことがあるのだろう。

「故郷に返さないと。ゼウスにもそう言われたし」

「“トビラ”まで送れ……というやつか?」

 頷いた。

「方舟にある唯一の出口だよ。そこを通らないと、君の世界……というか、人間の世界には出られないの」

「ほう……」ならば、僕はそこを通ったわけだ。「……連れていってくれ。トビラまでで良いから」

 ミカエルがまた不満そうに唸った。

「や、そうしたいんだけどさ……私も仕事……というか、やりたいこと残ってるし……でもなぁ」

 うーん、と長く、再び唸って。ミカエルが腕を組んで思考する。

「ダメっぽいんだよね」

「なぜ」理由があるのか。「なぜダメっぽい」

「ちゃんと送らないと帰らないでしょ」

 間髪入れずに返された。

 その通りだ。まだ帰るつもりは――というか、もう帰るつもりはなかった。

 帰って何になるのか、と考える。

 僕は死んだ。

 いや、実際は生きているが。

 だが間違いなく、あの世界では死んだことになっているはずだ。

 あの男が作り出したのは殺人現場。僕の血痕も残っている。

 どうなっているか、ということに興味はないが、戻っても碌なことにはならないだろう。疑われるに決まっている。

 そんなのは御免だ。家族を殺した罪など誰が被りたいものか。

 ただでさえ仲の良くない家族だ。僕の遺体だけは見つかっていないはず。そう思うと、……自分でも足が止まるのが分かる。

「…………お父さんのことは好きだったの?」

「誰がだ?」僕がか?「冗談はよしてくれ」

 肩を竦めて。

「あの人とは数年まともに話してないんだ」

 事実だった。

 そのきっかけはふとしたこと――と言ってしまうのはいけないか。父さんにとっては許せないことだったのだろう。僕は父にとっての禁忌を犯し、それに対し反省を見せなかったから。

 父さんは僕を許せなかったし、僕もそれに納得出来なかった。

 ただそれだけ。

「でもなんていうか……そのぅ……」

 歯切れが悪いぞ。

「…………心の中、強く残ってない?」

「何が言いたい」家族の死を悼んでいると?「言っておくが、期待するような答えは返せないぞ」

 家族とは折り合いが悪かった。


 父は僕に剣を教えてくれた。

 その技術は今もこうして活きている。

 死してなお、この身に叩き込まれた剣術が僕に道を与えた。

 ……確かに強く残っていると言えるかもしれないが。


「そうね。君がびっくりするくらい強かったから……かな」なんだかムズ痒いな。「君のお父さんは、確かなものを残してくれたんじゃない?」

「…………なぜそんなことを聞く」

  誰に習った剣術か、なんて一言も言っていない。

 ミカエルがどこかで知ったのだ。

 眉間に皺を寄せると、ミカエルが慌てたように弁明する。

「や、いやいや。基礎がすっごくかっちりしてたからさ。誰かに習ったんだろうなーと思って」

「…………父さんから習ったのは確かだ」そしてもう追い越してしまったことも。「確かに役に立つことは役に立つよ」

「尊敬してた?」

「まさかだな。考えが合わなかった」

 何度も言われた。勝ちを求めすぎるなと。

 僕の頭にあるのはいつも、如何にして相手を倒すかということだけ。

 耳にタコができるほど言われたものだ。

 この剣は誰かを打倒するためにあるのではない。

 剣と言うものを通し、如何にして自分を顕すか――自らを知るためのものだと。

 笑える言葉だ。剣とは人を斬るために作られたもの。それを扱うための術で誰かを打倒せずして如何にするというのか。

 あの言葉を耳にするたび、僕の心に浮かぶは一つ。

「ああいうのを軟弱者と言うんだろ」

 僕は自分が間違っているとは思わない。

 この剣の在り方が。

 剣士としての在り方が。

 誰かを倒し、勝利を重ねるという自分自身が。

 僕はこれで、正しいと思っている。

「考え方に関しては何も言わないよ」

「助かる」

「ただ、凄い人なんだなぁって思うな」

「あぁ……」

 それは、そうかもしれない。

 清く真っ直ぐな人だ。

 だからこそよく衝突したのだが。

「けど嘘つきだ」

 そう、よく喧嘩した。結果はいつも同じで僕の負けだったが。

 単純な勝負なら勝てていただろう――でも口喧嘩なら話は別だ。

「そうは思えないけど?」

「いいや、嘘つきだよ」たった一つの嘘だけど。「嘘を重ねたなら同じことだろ」

 頭を掻く。

 立ち上がった。

「歩きながらでも出来る話だ」

 それで、少しだけ、整理しながら話をしよう。

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