表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AF―After Fantasy―  作者: 04号 専用機
Beyond belief
10/166

何の用だ

 目がチカチカする。


 前まで真っ黒だった方舟の空にはいつの間にか、時折七色の筋が走るようになっていた。

 それが突然視界に入ったかと思うと、光を放ちながら地平の彼方へ過ぎ去っていく。最初のうちは問題なかったが、何度も繰り返し見るうちに、どうやらそれが、目が眩む原因だと気づく。

 ふと疑問に思うのは、方舟の空を覆って見えていた、そして今は時折走る、七色の光は一体なんなのだろうということだ。

 もしかすると、あれが魔力だったりするのだろうか? いや、それはないだろう。今見えているこの光がそうなら、あの化物と遭遇した時だって、身に纏った七色の光が見えたはずなのだ。

 これは魔力ではない。そうでなければなんなのか、は分からないが。

 そもそも情報が足りないというか、経験が足りないと言うか――とどのつまり、僕は頭が悪いのだった。与えられた情報では足りず、かと言って、経験したことだけでは考える材料に出来ない。ならばもっと戦ってみるべきだが、今は異形に会いたくないのだ。

 魔力の扱いは依然として分からない。

 あの勝利をたまたまとは言いたくないが、次また勝てるかと聞かれると怪しい。僕はあれで精一杯だったし、次の相手はもっと強いかもしれない。それはそれで楽しみであるが……

  なんと言うか、要するに。そんなどうでもいいことを、足りない頭で考え出すほど、僕は随分長いこと歩き続けていた。

  もう何時間かになると思う。方舟の景色は見たままで、黒い空に平坦な地面が延々と続いている。印をつけるようなものもなければ、そもそも足跡も着かない。どこまで歩いたか分からないならまだいいが、自分がどこにいるのかさえも分からない。

 いや、地図があっても読めないのだが。


 正直こんなことになるとは思ってもみなかった。前回はすぐあの異形と出会ったのだから、今回だってすぐだ。そう思っていた。

 疲労は感じないものの、進むのが億劫になってきた。目のチラつきが酷くなっている。

 時折走るだけだった光は今は一度に数本まで増え始め瞬いている。僕は太陽を見上げるように目を細めて空を仰ぐ。

 見ていられない。僕は堪らず目を伏せる。

 ここが限界だろうか? いや、そんなはずは。まだ歩けるはずだ、体力には余裕がある。魔力だかなんだか知らないが、ここまで慣れたのだ。もうしばらくすれば、このグラグラした感覚からも開放されるはず。

 息苦しい。

 膝をつく。

 不味い傾向だ。今のうちに行けるところまで進まなくては。いつまで経ってもドクトルの元から離れられない。

 あいつは良い奴だが、ずっと近くにいてはいけないような気がする。

 これは一種の予感だが。ドクトルは何か企んでいる。もう巻き込まれているのかもしれないが、だからと言って、簡単に乗るつもりはない。僕には今、やらねばならないことがある。

 そうだ、やらねばならない。あの男の元まで。

 辿り着かなければ――一歩でも近くに。

「…………!」

 眩しさが止んだ。

 一歩踏み出した途端だ。

 明確なイメージを思い浮かべたからか――と考えたが、どうやら違うとため息をつく。

 散々だ。

 方舟の一歩に常識は通用しないとつくづく思い知る。

 たった一歩だ。

 それだけで、ここまで距離を詰められたのか? 否、と一人否定する。

 なぜ視線や呼吸を感じなかったのか分からない。だが、確実に言えることがあった。

 結論に至ると同時、ドクトルの言葉が頭を過ぎる。

 方舟における遭遇は。

「俺になんの用だ?」

 決して偶然足り得ない。

 散々だ、ともう一度思っておこう。

 刀の柄に左手を置き。

 願いましては……物言わぬ人型が十五体。

 僕が進もうとする先に、壁のようになって立ち塞がっている。

 おそらくこいつらが、ドクトルの言っていた「ノアシード」だろうか。視界の端から端までじっくり観察してみると、全員が戦場にでも行くのかという格好をしている。そのせいか、顔や体に個体差があるのかがはっきりと分からない。

 詳しく確認するのはまた後か。

 こっそりと生唾を飲んで、視線を正面に戻す。

 セーラー服を着た女がいる。

 僕の前にだ。

 見たところ、身長は僕より幾分か低い。

 顔立ちは幼く、髪は濃い茶。栗色とか言うのだろう。それが肩あたりまで伸びている。

 視線を僅かに落とす。

 肩の力は抜けているようだ。その華奢な体からは、信じられない程に力みというものを感じ取れない。

 さらに視線を落として。

 一番に目を突くのは、右手から提げられた剣だ。

 刃渡りと女の胴体は、どうやら同じ程度と見ていい。

 その刃は分厚く黒く、切っ先は尖らず平坦だ。

 長い長方形の剣。

 鍔はあたかも盃を模した台のようで。

 振れるわけがないと思う。

 もう片方の手に備わった、半身を覆うだろう丸い盾を見ればなおさら。

 まだ抜くな、と言い聞かせた。

 目の前にいるのはセーラー服の女。

 戦うような格好ではないし、その体格で扱いきれる装備でもない。

 それは分かっている。

 だから分からない。なぜここまで自信に溢れているのか。

 自信があるのか。

 勝てるという自信が。

「今日こそ逃がさないから」

 その女は、その容姿によく似合う声で言った。

 置いただけの手に力が入る。

「いやー、ホント大変だった! どれくらいかかったっけ? ノア様から通告があったのが確か……えーと……二週間くらい前だっけ?」

 同い年くらいの容姿に同い年くらいに感じる声。それがまるで、親しい誰かに語りかけるようにして、僕に向かっている。

 そこに、隠す気のない敵意を混ぜて。

「あーもう、ホント」

 女が俯いた。

 来――

「手こずらせてくれたよねッ!」

 ――何かが僕の体に激突し――体が数メートル後ろに飛び――女が剣で僕の方を指してい――る。

 遅れて感じた、あまりの衝撃に咳き込む。

「よォーし、囲め! 今日で片付けるんだから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ