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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第94話 霊芝2

「ここが彼らが言っていた場所か」


 たどり着いた場所は奇妙な場所であった。


 森を覆っている背の高い木々がある場所から途切れ、その広場が顕になった。


 腰ほどまで伸びた草が地面を覆っている。空が広く見える開けた場所。木は幾つかある程度で、代わりにあるのは岩だった。


 壁の様に巨大な岩石が周囲に幾つも存在している。大森林には何度も立ち入っているが、このような情景は初めてだ。


 よく見ると、それは岩の板のようだった。


 厚み1メートル弱はあるだろうか。高さ幅は大きい物だと5メートル以上はある。それがいくつも衝立のように立ち並んでいる。


 だが人の街にある城壁というようなものでもない。ただ無造作に地面に立ててある。または積み重ねて置いてあったり、適当に存在しているといった感じだ。


 大きさも様々である。大きな壁のような物もあれば、柱のような形状の物もある。ただ古代遺跡の石の柱といったような立派なものではなく、悪く言えば不細工、良く言えば荒削りといったような感じだ。


 巨大な岩を乱暴に削りだして、それっぽい形にした。という雰囲気に感じる。


 また、ある場所では無数の岩板が広く互いに積み重なり、巨大な岩山を作り出していた。賽の河原の積石の塔の様に、高くそびえ立つものまである。


 そのどれもが圧倒的に巨大で、人ではない何かが作り上げた造形に間違いないと悟らせるものがあった。


 一体、なんだろうこの場所は……


「……不思議な場所ですね。私も初めて来ました」


 積石で作られた塔は数を数えきれないほど無数にあった。


 俺たちはその中を縫うように進んだ。


「わしも初めてだな。この森にこのような場所があったとは知らなんだ」


 明らかに自然の造形ではない。


 これも遺跡の1つなのだろうか。



 巨大な岩の壁が乱立しているせいもあって、見通しは悪い。


【探知】は展開してあるし直感を持つアルドラもいるので、奇襲を掛けられる危険性は少ないとは思う。


 だが、それを掻い潜る魔物の存在もあるため、魔眼にて注意深く周囲を警戒しておく。


「ただの岩ではないようじゃな」


 アルドラが岩に触れながら呟いた。


 俺の魔眼を通しても、岩としか表示されない。


 触った感じや【探知】を持ってしても、特別な違和感は感じなかった。


「何か危険があるのか?」


 俺が僅かに身構えると、アルドラは軽く首を振った。


「いや、そういうわけではない。どうやら魔力で作られた物じゃろうな」


 ベイルの城壁もそうらしいが、土魔術にはそういった創造魔術があるらしい。


 まったくの無から生み出すというよりは、触媒を用いて行使するタイプの魔術のようだ。


 土を素材に石のブロックを作るといった様なものらしい。


 作られた物質には特有の魔力が含まれるので、わかる者にはわかるのだという。


 何者かが作り、ここに残した物なのは間違いないようだ。




>>>>>




 巨岩がひしめく場所を抜け、積石の塔が羅列した場所を進み、石畳のように積み上がった石の道を進む。


 石が積み重なった道は、ぐらぐら揺れて不安定だ。


 先へと進むと、積石の塔が円状に配置された広場にたどり着いた。


 中央部にはビルのように巨大な積石の塔が存在している。


 1つ1つは同じ形状とは言えない石の板を、段違いに上手く組み合わせて巨大な塔を作り上げているのだ。


 石の隙間から僅かな植物が顔を覗かせる。


 周囲に魔物は疎か、生物の気配は感じない。


 この周辺に限っては、瘴気の存在もないようだ。


「……あの上からやってみるか」


 石の塔は垂直に立っているわけではない。土台の部分は広く、上に行くほど狭く細くなっていっている。おおまかに言えば円錐形といっていいだろう。

 

 リザに【浮遊】【脚力強化】を付与してもらい、石の塔を登る。


【浮遊】を掛けると風の力により、体が浮き上がる。魔力を調節して付与する効果を微弱にすれば、ロッククライミングのような山登りにおいて、かなりの手助けになるだろう。


 しかし普通に地面を走る場合には、地を蹴る力が上手く使えなくなるため、逆に走りづらくなったりするようだ。 




 ただ石を組み合わせて積み上げた塔の割には、存外しっかりした作りのようだ。


 緻密に計算されて作られているのだろう。かなり高度な技術のような気もするが、地下遺跡と比べるともっと古い原始的な時代の技術のような気もする。まぁ、俺には何一つわからないのだが。


「この高さからだと、随分先まで見渡せますね」

 


 はるか遠くには砦の存在も確認できる。


 俺1人で塔に登り【探知】を行おうと考えていたのだが、結局2人とも登ってきた。


 一瞬危険だと思ったが、こういう時は一緒に行動したほうがいいのかもしれない。


 頂上となる部分は、広さ6帖ほどのスペースしかない。


 そっと下を覗き込むと、けっこうな高さがある。我ながらよく登れたな。魔術の補助があると楽に行けるため、気軽に来てしまったが上から見ると、ちょっと怖い。


 ビルの5階くらいはあるだろうか。少なくとも4階くらいの高さはありそうだ。


 高いところから周囲を見渡すと、かなりの部分で瘴気が発生しているのがわかった。特定の場所からというより、散発的に広範囲にこの事象が起きている感じだ。


 濃い霧のようなものが森の木々を覆っている。あれが高濃度の瘴気というやつなのだろう。


 頬に強く風を感じる。


 西の空を見ると、分厚い雲が流れてくるのがわかった。




「よし、始めるぞ」


 高いところから【探知】を使えば、遠くまで射程を伸ばせるのかと問われれば、そんなことはないと答えるだろう。


 登ってきた理由は単純に周囲を見渡せるからだ。あとは見えざる敵を発見しやすいだろうという考えもある。



 再び魔力を注ぎこみ【探知】を展開して行く。


 アルドラは周囲を警戒し、リザは俺をそっと支え見守っていた。


 意識を【探知】に、霊芝の発見のみに集中させる。


 通常であれば【探知】(嗅覚 魔力 地形)という複合したスキルとなると、それを使用するとなれば全部が一纏めになって行使される。


 嗅覚、魔力、地形を同時に【探知】するということだ。


 しかし魔力の操作に慣れれば、意識することで能力をカットすることもできるようだ。


 俺であれば、魔力と地形の【探知】をあえてカットして使用しないようにするといった具合だ。


 それによって嗅覚をより鮮明に意識することができる。と考えている。あくまで俺の感覚ではあるが。


 皆に聞いた所、そのようなやり方は聞いたことがないというので、もしかしたら俺の思う効果はないのかもしれない。


 しかし余分なスキルをカットすることで、無駄な魔力の消費は抑えられるので、まったくの無意味という訳でもないと思っている。




【探知】の感覚が徐々に広がっていく。


 しかし霊芝の発見には至らなかった。


 もしかしたらやり方が間違っているのだろうか。俺はその身に備わった雷精霊の腕輪を撫でる。


「……普段大して役に立たないんだからよ。こんな時くらい力貸してくれ」


 精霊は気に入った者に加護を与えるらしい。


 そしてこの世界のあらゆる場所、何処にでも存在している。


 精霊使いとは精霊とコンタクトをとれる者。


 アイツはより強い恩恵を受けられると言っていたが、俺はまだそれを感じたことはない。


「雷精霊よ俺を気に入ってくれているなら、俺の声が届いているなら、頼むその力を貸してくれ――」


【探知】にて広がっていく感覚が、一段階鋭くなったような気がした。



 体の中でザワリと何かが波立つ。


 波が【探知】の後を追うように広がっていく。


 鏡面の水面に波紋が立つように、それは静かに素早く確実に浸透していった。



「……あったぞ!!」



 いや、実際に目で見て手にとって、リザに確認して貰わなければ行けないのだろうが、あまりの興奮に思わず声が出てしまった。


 腕輪から魔力のような反応を感じる。


 俺の願いを汲みとってくれた、ということなのだろうか?


「やりましたねジン様!」


 わぁと花開くような笑顔でリザが喜んでくれる。


「あぁ!」


 アルドラの反応が見えなかったので、視線をやると彼は険しい表情で叫んだ。


「伏せろッ!」


 その言葉に俺とリザは咄嗟に身を屈めた。


 直後、俺達の頭上を岩が勢いを付けて通りぬけ、そして明後日の方向へと音を立てて転がり落ちていった。


「……なに?」


【探知】が岩を投擲した犯人を補足する。


 それは俺達が登ってきた塔を包囲するように布陣する、6体のサイクロプスだった。     

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