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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第84話 決意

 ミラさんが真っ赤な顔して狼狽える。


 自分の身を抱いて捩り、落ち着かない様子だ。


「え?いやそんな……でもだって……ねぇ?」


 俺に目配せして同意を求めてくる。


 たぶん「困ったわ、ジンさんもそんなこと言われても困るでしょう?」って感じだろう。


「ジン様は冒険者。お母様は元冒険者で優秀な治療師です。必ずお役に立てるはず」


 どうやらリザの言う体で返せというのは、治療師として働いて返せという意味らしい。


 何となくそうだろうと思った。かなり誤解を生みそうな発言だったけど。


 ミラさんはその言葉に我に返ったのか――


「……あ、そっか。なんだぁ……」


 そう言って、少し残念そうな表情を見せるのだった。




 冒険者というのは多くの場合、複数人で組んで依頼を行う場合が多い。そういう形態をパーティーと呼称される。


 F級では壁内での雑務が主な仕事であるため、1人で依頼を行うのがほとんどだろう。


 E級になると野外での薬草採取などが主な仕事になるために、人によっては2~3人で組んで依頼を行うものも出てくる。


 D級になると討伐の依頼が主になってくるために、このあたりの階級から本格的にパーティーを結成する者が増えてくるといった具合だ。


 だがパーティーというのは、そう簡単に組めるものではない。


 近い実力の者を集めるのも一苦労だし、性格、考え方の不一致で解散なんてこともある。


 誰が苦労して誰が楽している、だから分前をもっと寄越せ――などと金のトラブルはよくあること。


 複数の人間が集まり、命の危険のある依頼を行うのだ、そう簡単に互いに信頼の置ける良いパーティーといったものが出来るはずがない。


 だが1人で活動するには何れ限界が来るのは目に見えている。


 つまり信頼できる人材の確保は、極めて重要な案件なのだ。


「後ろに治療師が控えていれば、ジン様も戦闘時に余裕が出来るでしょう。魔法薬では瞬時に傷を癒やすことが出来ませんし。それに傷を癒やすぶんに費やしていた魔法薬を、他に回すことも出来ますからより戦闘も効率化させることができるでしょう」


 勿論パーティーには私も参加しますが。と付け加えた。


「でも私は……」


 そうだ。


 今の状態ではミラさんを戦闘に参加させることは出来ない。


 魔力枯渇症は病気ではない。


 特性に近いものだ。


 故に薬で治療というわけにもいかない。


 住む環境が適さないことから、体の調子が悪くなるといったものなのだ。


 淡水の魚は海水で暮らせない。


 逆もまた然り。


 だけど本当にどうにもならない事なのだろうか?


「完全に治せるかどうかはわかりませんが、改善する方法はあると思います」




>>>>>




 霊芝。


 強い魔力を宿す、キノコの一種である。


 大森林の至る所で発見されるが、去年ここで発見したから、また来年同じ場所で見つけられるとは限らない、場所の特定しづらい薬素材の一種だ。


「乾燥させそれを煮だした汁が体質の改善に効果があるのです」


 発見が難しく、中々市場でも出まわらない希少な素材らしい。


 飲めば魔力の吸収効率を高めてくれる、つまりは魔力の回復速度を高めてくれる効果があるようだ。


「エルフ族にとっては相性のいい素材です。特別副作用もないですし……まとまった量を手に入れ飲み続ければ、お母様の症状もかなり改善されるのではないかと」


 なるほど。それがあればミラさんが1人で森に帰ることもないのか。


 リザも僅かばかりを所有し、実際にミラさんもそれを飲んでいるようだが残りが僅からしい。

 素材を今後も安定して手に入れられる保証はない。故にミラさんは俺に彼女達を託し、自分は去る決意をしたのか。


 ミラさんが俺を利用するかのような言い方をしたのは、きっと自分が悪役になってすんなりと身を引こうという思いからなのだろう。

 彼女達の安全という意味では、アルドラという最強の戦士が側に控えているのだしな。


 しかし中々市場に出回らない希少な素材となると、探しだすのも簡単では無いのだろうな……


 それはそうと……


「ミラさんはどうなんですか?実際の所、森へ帰りたいですか?可能であれば体質を改善して、この街で暮らしていきたいですか?」


 森へ帰りたいと願うのなら、無理に体質改善を強要することもない。


「私は……」


 ミラさんが言葉に詰まる。


「正直に答えて下さい。精霊に誓って」


 エルフにこの文言は効くだろう。少々ずるいかもしれないが、お互い様だ。


 口を開いたまま、一瞬何かを考えこむ表情を見せるが、それも子供たちの顔を見て……決意は決まったようだった。


「……私はみんなと一緒に居たい」


 そう振り絞るように答えるのだった。


「わかりました。霊芝ってやつを手に入れてきますから、体質改善しましょう。俺には魔眼がありますからね、きっと見つけられますよ。リザは腕の良い薬師だ。素材さえ手に入れば、きっと良く効く薬を作ってくれますよ」


 まぁこの件に関して魔眼が役立つかは不明だが、必ず見つけてみせる。俺はみんなの顔を見て改めて決意を固めた。 


 彼女はこの家で養生してもらって、回復に努めてもらおう。


 そう思ったのだが、リザはその考えを否定した。


「いえ、このままだとお母様はこの家に残れない可能性があります」




 通常、城塞都市と呼ばれる城壁に囲まれた堅牢な都市は、魔物や盗賊(戦時には敵兵)などの外敵から住民を守り安全な生活を与えてくれる。


 しかし土地は限られる。誰しもが自由に城壁内に住める訳ではないのだ。


 通常の城塞都市であれば、壁内に住めるのは市民権を持つ住民だけである。


 だが冒険者の街ベイルでは、一定の仕事に就いていれば例外的に平民でも城壁内に住むことを許されている。


 それは冒険者か、または冒険者を補助する仕事のいづれかである。


 ミラは治療師だ。街の治療院に勤め、怪我や病気の冒険者を多く診てきた。これもまた冒険者を補助する仕事なのである。


 だが現在ミラは休業中だ。


 一時的に仕事を休んでいる状態であるため、今はまだ壁内から追い出されてはいない。


 だが休業を許されるのは1年間のみらしい。


 残された時間はあと僅か。万全な状態まで回復する時間があるのかは難しい所だという。


 

 

「……残された時間で霊芝を探しましょう」


 残された時間が僅かとは言っても、今日明日どうこうなるわけではないだろう。


 ならば時間内に見つけ出せばいいだけだ。


 俺が多数のスキルを扱えるのも、こういったときにこそ役立てるべきだろう。


 必ずやりようがあるはずだ。


「ジンさん、よろしくお願いします」


 ミラは深く頭を下げるのであった。


 

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