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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第71話 エルフの秘薬15

 城壁門にほど近い倉庫街の1つにその場所はあった。


 今は荷入れの作業者の姿も見えず、人影もないその場所は閑散としていて静寂に満ちている。


 辿り着いた場所は、大きな倉庫に挟まれた木造の小屋だ。


 俺は渡された鍵を、小屋の扉に備え付けれた錠前に差し込む。

 

 何の変哲もない鉄の錠前のように見えるが、コレもまた魔導具らしい。


 魔導錠 魔導具 D級


 カチンッ


 軽い抵抗感の後、何かが噛み合ったような甲高い音を立てて鍵が回った。


 


 小屋の中に入った。内部は何もない。


 ただ正面の石壁は、見覚えのある色合いだった。


 緑晶石だ。


 俺は徐ろに壁に触れる。


 状態:隠蔽


 壁に触れ隠蔽を見破ると、体から魔力が奪われていく感覚を得た。


 奪われた魔力は僅かなものだ。


 それと同時に、壁に魔法陣のようなものが浮かび上がる。


 幾何学模様にルーン文字を組み合わせたような、不思議な図形。


 その文字が図形が、淡く光りだす。




 石壁が崩れるように消え去り、その奥に地下へと続く螺旋階段が姿を現した。 


 火魔術【灯火】により明かりを得る。


 俺は闇へと続く螺旋階段を下っていった。


 石造りの急階段は、僅かに湿気を帯びカビの臭いもする。


 俺は滑り落ちないように、慎重に歩みを進めた。



 

 しばらく階段を下ると石造りの小部屋に辿り着く。天井壁すべてを石で作られた部屋だ。


 


 遠くから水の流れる音が聞こえる。


 正面には鉄格子の扉が備えられている。酸化による腐食が酷く痛みは激しい。


 手をかけゆっくり力を入れると、ギギギィと軋んだ鈍い音を立てて扉は開いた。

 

 


 独特の鼻につく刺激臭の中を進む。 


 しばらく狭い通路を突き当りまで進むと、広いトンネルの様な通路に出た。


 天井はドーム状に湾曲し、床には水が流れる溝があって緩やかな流れがある。


 溝とは言っても幅2メートルはあるだろうか。


 深さは不明だが、それなりの水量がありそうだ。


 溝を挟んだ両側には、幅2メートル程の通行用と思われる道が備わっている。


 天井には見覚えのある照明装置が等間隔に設置され、明かりは十分確保されているようだ。


【灯火】を解除し先へ進む。


 懐から獣皮紙を取り出し現在地を確認した。


 この辺りの水路内部を示した地図だ。


 エリーナさん手書きの地図で、魔物が潜んでいそうな箇所を示してある。





 水の流れる音だけが響く地下水路を1人進む。


 ザパァッ


 突然水面から勢い良く何かが飛び出し、俺の行く手を阻むものが現れた。


 ザパァッ


 背後からも。【探知】で既に接近していたのはわかっていたので、驚くことはないのだが。


 そういや【隠蔽】を付与し忘れていたな。


 

 ウォーターリザード 魔獣Lv7


 ウォーターリザード 魔獣Lv8


 

 暗い青色をした細長い蜥蜴である。

 顔は小さく細く、鋭い牙と爪が見える。


 俺を挟み撃ちにして、今日の晩飯にするつもりなのだろう。


 雷魔術【雷撃】


 杖先から迸る光の帯が、青い蜥蜴を貫いた。


 魔物は暴れる間もなく、口を大きく開け全身の筋肉が硬直したかのように固まって絶命した。


 水から上がったばかりで全身が濡れていたので、雷の通りが良かったのだろうか。


 まぁ名前からして雷は効きそうな気もするので、単純に弱点だったのかもしれない。


 ともかくD級でも1撃である。無駄な魔力の消費を抑えるためにも、ポイントはD級のままで行こうと思う。




 ウォーターリザードの肉は水っぽくて、あまり旨くないらしい。

 そのため放置することにする。


 皮は防具の素材になるらしいので、一応回収しておいた。

【解体】スキルのおかげか、皮を剥ぐのも大した時間は取られないので助かる。


 時折対面の通路に鼠系の魔物の姿も見られた。


 ラット 魔獣Lv1


 鼠というより、カピバラみたいな見た目のやつだ。見様に寄っては可愛いかもしれない。


 今回の目的は蟻だ。水路の魔物を殲滅せよ!といった依頼では無いので、特に邪魔にならない魔物は基本放置で行こうと思う。

 さっさと仕事を終わらせて俺は帰りたいのだ。




【雷撃】


 その後も時々通路を塞ぐ蜥蜴を撃退した。


【隠蔽】を施してあるため、いきなり強襲を仕掛けられることは無かったが、進路を塞がれれば撃退する他ない。


 一撃であるために倒す事に苦はないのだが【解体】スキルを用いても、そのたびに立ち止まっては少々面倒だ。

 既に皮は20枚程までたまっているので、次からは全部放置にするか。




 既に何箇所のポイントは調べたが、今のところ蟻の姿は見ていない。


 無論【探知】は常に発動させている為、何かあれば直ぐにわかるだろう。


 だが今のところ反応しているのは、蜥蜴だけのようだ。




 ガサガサガサ……


 通路を曲がった先から、何やら不審な物音が聞こえる。

 それに血の匂いだ。


 俺は壁に張り付き、慎重に先の様子を確認する。



 

 スカウトアント 魔獣Lv5


 スカウトアント 魔獣Lv6


 スカウトアント 魔獣Lv5




 蟻だ。


 通路で3匹の蟻の魔物が、1体の蜥蜴の魔物を捕食している。


 ズリズリズリ……


 いや、獲物を仕留めて巣へ持ち帰る途中か。


 3匹の魔物が協力して獲物を運んでいる。


 こいつらを追えば巣の場所がわかるかもしれない。


【探知】のポイントはC級に設定してある。


 少々離れていても、その動向を見失うことはないだろう。


 近づきすぎて警戒されても面倒なので、離れて追跡することにする。




 追跡中も魔物は襲ってくる。


【隠蔽】を付与しても見つかってしまうので、おそらく音か何かを察知しているのだろう。


 先程から1撃で倒しているにも関わらず、性懲りも無くウォーターリザードは今だに俺に向かってくるのだ。


 魔石(潜水)


 そのおかげもあって、魔石を入手出来たわけだが。


 水魔術【潜水】


 初の水魔術を修得した。


 ダメかとも思っていたが、修得できたようだ。


 となると俺の予想通り、全属性の魔術および全スキルの修得が可能というのが現実味を帯びてきたと思える。


 と言うのも、ギルドの講習にあった魔術講習の際に、自身の適正と言うのを調べてもらったのだ。


 どんな人にも、適正というのがあるらしい。 


 魔術師であれば魔術を、戦士であれば武術のスキルを得やすいと言われる、ある程度その得意な傾向というものがあるらしい。


 魔術師であれば水魔術が得意な者がいたり、火魔術が得意な者がいたりと言った具合だ。


 そんな中で適正を調べて貰った結果、俺の得意な属性はもっとも高い適正に雷、次いで火土闇であった。


 適性のある属性が4つもあるのは異例らしい。


 精々が1つ2つという話だ。


 属性というのは人が魔術を扱う際に理解しやすいように、その異なる性質ごとに分けた魔術の種類の事だ。


 それぞれ【火魔術】【水魔術】【風魔術】【土魔術】【光魔術】【闇魔術】【雷魔術】【氷魔術】【木魔術】【時空魔術】の十種類とされている。


 雷が得意なのは納得できる。


 雷精霊の加護があるしな。


 それに加えて、火土闇である。


 適正があるなしは、かなり重要な意味があるらしい。


 適正があれば、その系統の魔術の覚えが早いと言われているようだし、適性のない者よりもより効率よく効果的に力を操れるそうだ。


 おそらく魔石から修得できるために、適正に関係なく覚えることができるのだろう。


 だがそれを上手く扱えるかは、また別問題という事になるかもしれない。


 無論、検証の必要はあるだろうが、適正のことは頭に入れておいたほうがいい情報なのは間違いないだろう。



 

>>>>>


 

 

 ザシュッ


 行く手を遮るウォーターリザードの1体を剣で切り捨てる。


 噛み付こうと迫ってきた所に、剣先を滑らせ上顎と頭部をその体から切り飛ばしたのだ。 

 

「凄え切れ味じゃん……」


 俺は期待以上の結果に思わず声が漏れた。


 雷精霊の祠で手に入れたムーンソード。ゲームなどではシミターといったような名称でこういった姿の剣を見たことがある。


 たしか元は中世のアラブかどっかの、斬ることに特化した曲剣だったはずだ。


 剣は何の抵抗も感じずに蜥蜴の骨と肉を切り裂いた。


 剣としてはかなり軽いタイプだが、使いにくさは無い。よく手に馴染み、振りやすい。柄も握りやすいよう工夫された形状の様だ。


 ギルドに行った際に、ついでにとヴィムに剣を見てもらった。


 やはりミスリルを使った合金らしい。


 実用に耐えうる品とお墨付きを貰ったので、これからこれを主武器として使っていこうかと思っている。


 飾っておくのは勿体無いから、使ったほうがいいとヴィムにも言われたのだ。




 ジュルッ……


 ジュルジュルッ……




 何の音だ……?

 

 徐々に近づいてくる弱い魔力反応。魔物だろうが、何処だ?


 俺はふと天井を見上げると、天井の石材の亀裂から何かが染みだしているのが見えた。


 その染みは徐々に範囲を広げ、大きくなっていく。


 高い粘質を持つ液状の様だ。


 多少濁ってはいるが、透明に近い。


 

 アシッドスライム 魔獣Lv7


 

 天井に広がる蠢く粘液。


 でけえ。


 天井いっぱいに広がるそれは、集めれば風呂桶1杯分は余裕でありそうな量がある。


 その一部が重力に従って垂れ下がる。


 ボチャッ


 鼻水のように垂れ下がったスライムの一部は、俺が今しがた死肉に変えた蜥蜴の体を包み込んだ。


 

 ジュウゥゥゥゥゥ……



 鼻をつく異臭が、周囲に立ち込める。


 なるほどアシッドスライムか。餌に釣られたか。


 蜥蜴を包む粘液の量が徐々に増大していく。


 死肉しか食わないなら、それでもいい。今は余計な手間を取りたくないしな。


 天井に張り付いた粘液は、蜥蜴の死肉へと本格的に移動を開始したようだ。


 ズルズルと音を立てて天井から下りてくる。


 その間にも、死肉はどんどん消化されている。


 見る間にほとんどが骨と化していた。



 

 地上に降り立った粘液の塊は、重力に逆らいそのドロドロの体を大きく持ち上げまるで威嚇しているようだ。


 根本を見れば蜥蜴は、もはや骨も殆ど残さず消化されてしまった。


 なんという消化速度だろうか。


 うん。


 こいつ俺も食う気だな。


 まだ腹の満たされないスライムは体をブルリと震わせ、その体の一部を触手のように伸ばしてくる。


 遅え。攻撃速度、超遅え。


 ニュルりと伸びる触手を、後ろに飛び退いて距離を取る。



 雷魔術【雷撃】



 指先から雷光が放たれた。



 

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