第70話 エルフの秘薬14
リザは採取した素材の下処理のために部屋に篭っている。
俺に手伝える仕事は今のところ無さそうなので、冒険者ギルドで依頼を受けて森へと出かけた。
ゴブリンを探しながら、片っ端から目についた魔物を葬って行く。
これが無双ってやつか。
討伐依頼をこなしつつ【雷撃】の威力を確かめる。
どうやら性能で言えばBとAの間には大きな壁があるようだ。
F~Bまではランクをあげると順当に性能が上がっていくような感じである。
だがAになった途端に、性能が大きく変化する。
【雷撃】を例にすると、F~Bでは有効射程距離は5~6メートル(杖などの補助無し)
速度はおそらく攻撃魔術最高クラス。そのためランクで変化なし。
Fではゴブリン程度の小型の魔物でも急所に当てなければ、即死させることは出来ない程度の威力。
だが気絶させたり、麻痺させたりは可能。牽制には十分な威力だろう。
Eだとゴブリンクラスなら即死する威力。
Dだと大型の魔物でも致命傷を与えられるような威力。
Cだと大型の魔物も即死する程の威力。
Bだと強力な魔物でも致命傷を与えられるような威力。
そしてAにランクを上げると有効射程が20メートルほどに延長、破壊力も格段に上昇する。
まぁAとSは魔力の消費も大きすぎるし、今後時間を掛けて検証することにしよう。
他には新たに修得したスキルか。
耐性はそのままだからいいだろう。闇耐性の有用性は理解したし、他の耐性にも期待はできる。
それに一纏めになっているのだ、その点も有用だろう。他の耐性も修得し続けて行けば最終的には、最高の防御手段の1つになりそうだ。
ゴブリン討伐も十分成果を上げた。
スキルの検証も魔力をだいぶ消耗したので、今日はここまでとしよう。
帰りがけに初めて見る魔物に遭遇する。
ツリーフロッグ 魔獣Lv12
このあたりは森の境界も近い、森の入口と言ったような場所だ。
それを考えると、レベルは高い。
見ると木に何匹も張り付いている。
このあたりは蛙の棲家なのか。
【雷撃】 E級
杖の先から紫電が迸る。
「E級でも十分だな」
【雷撃】の1撃で木から剥がれ落ち落下してくる蛙。
俺は慌てて逃げようとする魔物に【雷撃】を浴びせ続けた。
蛙の一団をサクッと葬る。
精霊使いLv4
精霊使いも戦闘職の様だ。
魔物との戦闘経験からレベルが上昇するようである。
魔石(伸縮)
ついでに狩った魔物からスキルも手に入った。
今日は調子がいい。
【伸縮】は魔力操作のカテゴリのようだ。
いまいち使用法は不明である。某漫画のように刀でも伸ばせるようになるのだろうか。
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「お疲れ様です。ジンさんギルドマスターから指名依頼が入っているのですが」
翌日冒険者ギルドにゴブリンの耳を届けに行くと、受付のリンさんに捕まった。
「指名依頼ですか?」
指名依頼は仕事の依頼を掲示板に張り出し募集するのではなく、個人に名指しで依頼する方式である。
これは名前が売れてくればよくあることらしい。
C級ともなれば護衛の仕事なども出てくるために、個人指名で依頼することもよくあるそうだ。
だがE級冒険者の俺が指名依頼なんて、何かあるに違いない。
というか、そうかギルドマスターが依頼者なのか。つまり嫌な予感しかしないってことだ。
「おいおい、そう身構えないでくれよ」
ギルドマスターゼストは革張りの高そうな椅子に腰掛けながら苦笑いした。
というか、この姿を見たのも久しぶりだ。
街を歩いているとたまに幼女姿の彼とすれ違うことがあるのだが、そういう時は無視してる。
もうこの人はどれが本当の姿なのかわからない。
「どんな要件ですか?」
俺はゼストにはいい印象は持っていない。
正直食えない人というのが、彼のイメージだ。
コンコンッ
扉をノックする音が聞こえたかと思うと、何かを抱えたエリーナさんが姿を現した。
「失礼します」
両手で抱えるほどの麻袋。
中には大量に何かがつめ込まれている。
「このベイルの地下には水路が張り巡らされている。知ってるかね?」
俺は首を横に振る。
「何時の時代の物かはわかっていない。相当古いものだが立派に機能しているので、それらの水路は今でもこの街の運用のために利用している。だが最近その水路に魔物が住み始めてね」
「ベイルの地下にですか?」
「そうだ。ベイルは森に近いこともあってか、人の街にしては魔素が濃い。地下だと尚更だ。どういう経路で侵入したかは不明だが、それの対処を依頼したい」
魔物が住み始めたとはいっても、元よりベイルにはレベル1程度の魔物であれば姿を見せていたそうだが。
日の高いうちは街を流れる水路の底や横穴などに潜み、日が落ちてから活動する奴も珍しくはないらしい。
危険性が高くなければ、それほど必死に駆除に回ることもないようだ。
精々が低級冒険者の小遣い稼ぎといったところだろう。
そのため今回の依頼は危険視するレベルの存在が相手ということだ。
それにしても魔物討伐か。魔物の強さ能力もわからないし、俺1人では危険かな……
アルドラはまだデートから帰らないし、呼び戻したほうがいいかな。
「もちろん受けるか否かは君の判断に任せる。受けない場合は他のものに依頼を振るつもりだ」
判断はエリーナさんの説明を聞いてからで良いそうだ。
ベイル地下水路の調査依頼
ベイルの地下水路には随分まえから魔物が住み着いている。
だが最近になって厄介な魔物が新たに住み着いてしまったらしい。
それが蟻系の魔物である。森ではないのでレベルは低いが、巣を作り数を増やしているようだ。
以前から住み着いている魔物を餌にしているようで、放置すれば脅威となり得る。
水路に侵入し、魔物を一定数撃破、もしくは巣を発見すること。
巣を見つけても下手に刺激せずに、毒肉玉を設置して撤収すること。
巣が見つからない場合は、魔物の出現ポイントに毒肉玉を設置して撤収すること。
報酬5000シリル
なかなかの高額依頼である。
Eランクの冒険者なら、飛びついて受けるような値段だ。
しかし何か裏がありそうで、少々怖い。
「別に裏なんて無いから、変な勘ぐりはしなくていいぞ」
ゼストがにこやかに答える。
まるでエルフのように心を読んでくるな。そんなに俺顔に出やすいのかな。
横にいるエリーナさんは無表情だ。
どうやら俺が大量に討伐の成果を上げているので、魔物を探知するスキルに長けているという話になっているようだ。
それに1人だとしても戦力的にも申し分ないという判断なのだろう。
蟻系の魔物はまだ遭遇していない。上手くすれば新たなスキルが得られるかもしれない。
まぁ【隠蔽】もあるし、危険と判断すれば撤退すれば良いのだ。目的は巣の発見と毒エサの設置である。
俺は依頼を受けることにした。
麻袋に入った毒肉玉を受け取る。
「素手で触っても大丈夫だが、間違っても食うなよ」
腹が減っても我慢しろよ!と言ってゼストが笑いながら忠告してくる。
俺は苦笑いで了承した。
俺はエリーナさんから水路の鍵を受け取り、ベイルの端にあるという地下水路の入り口を目指した。




