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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第65話 エルフの秘薬9

「何にせよ他の魔物が集まってこなくて良かった……」


 空気が震えるほどの轟音が森を突き抜けた。


【隠蔽】が解除され、俺達を発見した魔物に襲われるかと危惧したが、今のところ襲ってくる気配はなかった。


 もしかしたら逆に警戒の対象になったのかもしれない。


 冒険者Lv14


 確認するとレベルも上がってた。


 レベル的には格上の魔物だしな。


「リザ大丈夫か?」


 驚きで思考の停止しているリザに声を掛ける。


「あっ、はい。凄いですね。新しく修得された術ですか?」


「いや、いつも使っている【雷撃】という術だ。試しにランクをAまで上げてみたのだが、俺も驚いた」


 ランクを上げることで性能が変化するという術もある様だ。

 他の術も試したほうが、良いかもしれない。


「……凄いですね。魔装具や強化術の援護なしで、こんな威力が出せるなんて」


 S級となると更に威力が上がるのか。試すのが楽しみだな。

 しかし魔力の消費もかなり上がっているようなので、ランクを上げればいいというものでも無いような気がする。


 F級やE級あたりだと、いくら撃っても魔力の消耗は僅かなもので、数時間は余裕で戦えた。

 だがA級となると、かなり消費が上がっているようだ。

 体感だが10~20倍くらいにはなっていそうだ。


「それでレッドトレントを仕留めたはいいが、これどうする?」


 中程から折れて沈黙しているレッドトレント。

 もちろん木として擬態していたので、根は完全に地中である。


 目的の部位は根っこなのだ。


「えーっと……」


 2人とも土を掘り返すのに有効な魔術は所持していない。

 リザが採取用に、小さなシャベルを携帯しているくらいだ。


 つまり算段としてはこうだった。


 トレントを発見。


 攻撃を加える。驚いたトレントが反撃するために根を地中から引き上げ、動き出す。


 完全に地中から出たところで、止めを刺す。


「うん、俺のミスだな。すまん」


 調子に乗ってぶっ放したのは俺です。ごめんなさい。


 でも、まさか一撃とは思わなかったのだよ。


 エルクはけっこうしぶとかったからな。


 トレントは雷が弱点なのかもしれない。


「だ、大丈夫ですよ。この調子なら直ぐにまた見つかりそうです」


 今度は手加減することを念頭に、俺は気合を入れなおした。




>>>>>




 レッドトレントは直ぐに見つかった。


 先程のものよりも大物だ。


 今回は手加減して攻撃したので、問題ない。


 作戦通りに、トレントを誘い出し撃破に成功。目的の素材を手に入れることができた。



 赤木霊の根 素材 D級



 ついでに魔石も手に入れた。



 魔石(成長促進)



 自身の成長を促進させる……

 よくわからないが、ゲーム的に言うと経験値取得量の上昇って所だろうか。


 どの程度の効果があるか不明だが、効果次第では有用なスキルだろう。

 検証は追々として、取り敢えずはポイントが余ったら設定しておく程度でいいか。


「さて、今夜は森に泊まらなくて済みそうだな」


 持ってきた手斧を鞄に収納する。

 冒険者の鞄、便利すぎる。


 目的の根っこの他に、素材として有用な本体も適当に切り落とし持って行くことにする。

 すべてを持っていくのも大変なので、何となく良さそうな部分を厳選した。

 俺の見立てではなくリザの意見を聞いたので、間違いはないと思う。


「すべてジン様のお陰です。ありがとうございました」


 リザが深々と頭を下げる。


「リザの仕事のサポートも俺の仕事の1つだからな」


 当然だろ?と俺は笑って返した。


 それにしても朝からの靄は、未だ晴れる様子もなく、どちらかと言うとより濃くなってきているようだ。

 それに何処からか、風に乗って異臭も漂ってくる。


「……これ、瘴気かも知れませんね」


 瘴気。


 たしか濃度の高い魔素が、視認できるまでになったものだったか。 


【探知】で探るぶんには、特別変わった感覚はない。

 いや僅かに【探知】の感覚が鈍いかもしれない……本当に僅かな感覚であるため確証はないが、瘴気には術を阻害する効果があるかもしれないな。


「瘴気に長時間晒されると体調を崩すと聞いたが」


「高濃度の瘴気だとそうかも知れませんが、これはそれほど濃度は高く無いようです」


 だとしても長居は無用か。


 視界は不明瞭だが、帰り道は大丈夫だろうか。


「こう見えて森歩きには自信がありますから、任せて下さい!」


「うん。頼りにしてるよ」


 しっかり者のリザが任せてというのなら心強い。


 得意気に胸を張るリザの豊かな胸が、ゆさりと揺れた。


 


 視界の悪い森を歩き出す。


 帰還の途について間もなく、俺は異変を感じる。




 ザシュ……ザシュザシュッ


 グシャッ


 グシャッ


 ズシュッ



 

 風に乗って香る異臭。


 近くに何かある。


「リザ気づいたか?」


「はい、これって……」


 俺の【探知】が危険を知らせる。


 無数の魔力の反応。


 だが俺たちを狙っている訳ではないようだ。


 靄の奥にソレはあった。


「巨人か……」



 サイクロプスの死骸。



 5メートルはあろうかという巨体が森の腐葉土の上に横たわる。


 うつ伏せに倒れこんでいる為に、その表情は窺い知れない。


 だがそいつは確実に死んでいる。


 何故なら今まさに無数の甲虫に全身を集られ、あらゆる場所が食われているからだ。

 

 異臭はコイツの腐敗臭だったようだ。

 鼻につく刺激で、俺は目を顰めた。


 モゾモゾ、ガサゴソ……


 死骸に群がるのは全長50センチはあろうかという、巨大なダンゴムシのような魔物だ。


 その口は凶悪なまでに進化していて、まるでエイリアンである。


 死骸の肉を鋭い歯を持つ顎で、ガツガツと食らいついている。


 グロい。


 死骸に集る虫の数は数え切れない。


【探知】で探れば見えない範囲にも大量にいることがわかるのだ。


 ウッドラウス 魔獣Lv12


 ウッドラウス 魔獣Lv8


 ウッドラウス 魔獣Lv4


 魔物のレベル幅がかなり広い。


 特に死骸に群がる奴はレベルが高いようである。

 食ってレベルが上ったのか、レベルが高いから食事にありつけるのかどっちかはわからない。


「ジン様……」


 リザが耳元で、小さな悲鳴を上げる。


 見れば足元スレスレを魔獣が行き交う。


「ッ!」


 思わず声を上げそうになるのを、必至に我慢する。


 いつの間にか足元は、魔物で埋め尽くされたように思えるほどの大群で溢れていた。


 周囲の木々を見るも、その幹には大量の魔物が張り付いている。


 もしも襲われたらと想像すると、ゾッとする。


 レベルが高かろうが低かろうが、この物量の前には関係ないだろう。


「そっと抜けよう、魔物に触れないように」

 

 俺はリザに耳打ちする。


 リザは俺の顔を見て頷き、ともかく一刻も早くこの場を脱出することにした。


 ギチギチギチギチ……


 魔物たちが俺たちを見て、まるで威嚇するかのように顎を鳴らす。


 上体を持ち上げ、今まさに飛びかからんとするような姿勢だ。


「走るぞ」


 俺はリザをお姫様抱っこで抱え上げる。


「あっ」


 軽いな。リザは160センチくらいで、そう大きな方でも無いと思うが、それにしても軽い。


 俺は【疾走】スキルを発動させる。


 リザを抱きかかえたまま、俺は靄に包まれた森を走り抜けた。




 森を歩くに慣れていない俺が視界の悪い中、ただ敵から逃げるために走り続けるとどうなるか。


「うん。迷子だな」


 とにかくがむしゃらに走った。


 ウッドラウスは目に見える範囲外にも大量に集まってきている最中で、完全に振り切るにはしばらく走るのが良いと判断したのだ。

  

 更に逃げる途中にゴブリンの群れや、ワイルドドックの群れ、ウッドマンの群れにも遭遇した。


 群れに飛び込んでの乱戦は、俺はいいとしてもリザに怪我をさせる可能性があるため、逃げの一手と決め込んだ。

 それ以外の選択肢はなかったのだ。


 長時間の【疾走】は魔力を大きく消耗した。


「ジン様、これを」


 リザがマナポーションを渡してくれる。


「ありがとう」


 俺はリザの手から、それを受け取ると勢い良く飲み干す。


 魔力が回復していくのが感じられた。


「それにしても、ここは何処なんだろうな……」


 まぁ最初から、俺は現在地を把握してなかったわけだが。


 あぁ、迷子は完全に俺のせいか……


「えっと、ごめんリザ」


 俺は頭を下げる。


「え?どうしてですか?」


 リザは困惑の声を上げた。


「いや、逃げることに集中してて、もっと気を回せば迷子に成らなかったかもなって」


 俺は肩を落とした。


「ジン様は私を守るために動いてくださったんですよね。ありがとうございます」


 リザは頭を下げ、笑顔で向き直る。


「ですから謝ることは何一つありません。それに殿方が簡単に頭を下げては行けませんよ」


 リザはにこやかに微笑む。

 慈愛に満ちた表情だ。


「でもそれがジン様の優しさなのですね」


 リザは俺を優しく抱擁する。

 いつもの優しい花の香りがした。

 


 

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