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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第64話 エルフの秘薬8

 朝になった。


 結局のところ昨晩は何もなかった。

 何もしなかったというか、出来なかったというか……


「……私のも見たいですか?」と口走るリザに「お、おお。……あまりそういうのは良くないぞ……俺だって我慢できなくなる時はあるんだからな。明日も大変だろうから早く寝なさい」


 なんて口どもりながら対処するのが精一杯だった。


 リザの気持ちに気づいていない訳ではないが、今はその気持ちに答えられる余裕が無いのだ。

 

 俺の拒絶を感じたのか、リザはそっぽを向いて寝てしまった。


 そのリザの姿に少しの罪悪感と寂しさを感じてしまうが、俺の中の感情がはっきりするまで答えは出せそうにない。




 毛布で眠るリザを置いて、俺は【隠蔽】を付与して扉から外へ出た。


 まだ日は上っておらず、白く朝靄が立ち込め視界は数メートル程度しかない。


 暗い森の中、探知を巡らせると周囲に魔物は潜んでいるようだが、やはり襲い掛かってくる気配はないので、そのままにして置く。


 今は森に住む者たちも、静かに朝が来るのを待っている時間のようだ。

 

 魔物の巣食う危険な森だというのに、しんと静まり返るこの時間ばかりは清浄な空気で支配されているようだ。


 さらさらと流れる沢に近づき、水に手をやると身を切るような冷たさを感じる。

 

 魔眼で確認しても問題無さそうなので、思い切って顔を洗う。


「くうう~」


 あまりの冷たさに、目の覚める思いだ。


 


 バシャッ




 近くで何かの物音を感じる。

 

 音の方角へ目を凝らすと、靄の中にエルクの姿を見つけた。


 どうやら沢で水を飲んでいるようだ。


【隠蔽】を付与していて良かった。気づかれていない。


 しかし、どうするか?


【隠蔽】接近し【麻痺】を撃ちこむ作戦は失敗したばかりだ。

 

 もう1度同じ作戦をやってうまくいくとは思えない。


 ならどうやって仕留める?


 エルクは水を飲みつつも、周囲を注意深く警戒している。

 あまり長いこと考えている時間は無さそうだ。


 雷魔術 C級


 闇魔術 E級


 土魔術 F級


 火魔術 E級 


 体術  D級


 疾走  E級


 肉体に【耐久強化】【筋力強化】【隠蔽】を付与する。


【雷付与】も付けようかと思ったが、余計な刺激で察知されても上手くないので、今回はやめておこう。


 俺は【疾走】スキルを発動させた。




 魔力がグンと消耗される感覚。


【脚力強化】とは全く違う感覚だ。理屈は全くわからんが、使用者をとにかく無理やり高速で走れる状態にするスキルである。


 俺はエルクに向かって走りだす。


 奴の一歩手前で跳躍し、その背中へ飛び乗った。


「フィーーーーーンッ!?」


 驚いたエルクが声を荒げる。


 突然背に現れた無礼者を振い落そうと、激しく抵抗し暴れ回る。

 前足を持ち上げ、首を激しく振るう。


 俺は必至に首にしがみついた。


 ゼロ距離から放たれる闇魔術【恐怖】はエルクの動きを一瞬止めた。


 エルクの体がブルリと震える。


「フィーーーーーーンッ!?」


 俺は更に【麻痺】を撃ち込む。


 バジッという短く高い音が聞こえ、エルクの筋肉が収縮する。


 その場に立つこともままならずに、グラリとよろけ地面に倒れ込んだ。


「フィイイイイーーーンッ!!」


 最後の抵抗とばかりに首をもたげる。

 しかし体は完全に【麻痺】が効いている。ビクビクと僅かに痙攣するばかりで、立ち上がる気配はない。


 鹿の表情はわからないが、その瞳はまるで恨みを込めた呪詛を孕んでいるかのように感じた。


「悪いな。恨みはないけど死んでくれ」


 今更かわいそうと宣うつもりはない。

 

 俺は手のひらに魔力を集め【雷撃】を放った。



 C級の【雷撃】数発を浴びせて、エルクはやっとその動きを止めた。


 俺は動かなくなったエルクを背負い、狩小屋まで移動した。


 おそらく100キロ以上あるだろうが【筋力強化】が効いているからか、何とか背負って動ける。

 このままここに放置しても魔物を呼び寄せそうだしな。


 狩小屋の前まで運んだところで【隠蔽】施しておく。


 これで見つかる可能性もだいぶ減っただろう。 




>>>>>




「凄いです!凄いです!ジン様!」


 リザを起こして仕留めたエルクを見せると、彼女は驚き喜んでくれた。


「こんなに立派な太い角。ありがとうございますジン様」


 どうやら目的の1つはクリア出来たようだ。彼女の喜ぶ姿を見れたのだ。頑張ったかいがあったというものだ。


 エルクから角を切り落とし、ついでに皮を剥いで素材として持ち帰ることにした。

 解体スキルの出番である。 

 ちなみに肉は時期はずれで、旨くないそうなので放置することになった。

 森の魔物たちが処理してくれるだろうという話だ。


 魔石(毒耐性)


 スキル付きだ。

 森には毒を持つ魔物も多いそうなので、このスキルは役立ちそうだ。


「あとはレッドトレントだな。食事を取ったら探索を始めよう」


「はい。お願いします」




 軽い食事を済ませて、出立の準備を整えた俺達は狩小屋を後にする。

 今日で見つからなかった場合は、またここに戻る予定だが、できれば見つけて街に帰りたいものだ。

 まぁリザと二人きりというのも悪くないが、安心して眠れる家とミラさんの手料理には敵わない。

 リザとて何日も泊まりこむのは厳しいだろう。


「私はジン様と一緒なら何処だって構いません」


 リザは上機嫌で答えた。

 目的の物も得られたし、機嫌がいいようだ。


 俺は魔眼で周囲を確認しながら、慎重に探索を進める。


【探知】でも探れるが、擬態しているなら【探知】では発見できない可能性があるからだ。


 この世界はあらゆるものに、魔素が含まれている。


 人が栄養を得て血液を作り出すように、この世界のあらゆる生物は魔素を得て魔力を生み出している。


 それは人も魔物も同じだ。


 水にも空気にも土中にも魔素は含まれる。


 魔力探知は、魔素と魔力の両方を【探知】できる。


 ただ魔素は感じる力が小さいために、通常素通りしている感じだ。そこら中に存在しているために、あるのが当たり前なのだ。


 だが魔力は生物が作り出すものなので、それを【探知】することで、その存在を感じ取る事ができる。


 魔力は大抵体から微量ながら溢れでているものなので、それを感知している感じだ。


 魔物に限れば体の大きなものは、多くの魔力を溢れさせていることが多い。もちろん例外もあるが。


 


 だが賢い奴は漏れ出る魔力を抑え、隠すことの出来るやつも居るのだ。


 そういうものを【探知】で探しだすのは難しい。


 別のアプローチが必要だ。


 


 森の中は静かだ。


 魔物はいるが襲い掛かってくる様子はない。


 朝方よりかは晴れたが、今もまだ靄が残っていた。


 場所によっては、未だ濃く視界を遮っている。


 リザが巨木の1つに手を触れる。


 レッドツリーだ。トレントじゃない。


「どうしても見つからない場合は、市場でツリーの根を購入することにします」


 リザは申し訳無さそうに言った。


「いやまだ諦めるのは早いだろう。もともと見つけるのは難しいとわかっていたのだし、俺も覚悟はしてきた。出来るだけ頑張ろう」


 いつもリザには世話になっている。

 こういう頼られたときこそ、頑張らないでいつ頑張るというのだ。


 それに美少女の前でカッコつけるのは、男の本懐であるしな。




「リザ見つけたぞ」


 状態:擬態


 何本かのレッドツリーのなかに、レッドトレントが紛れている。


 なるほど見ただけでは区別がつかない。


 レッドトレント 魔獣Lv15


 高さ10メートルほどの木である。


 赤茶色の樹皮、赤みがかった葉。


 皮を這いだ中も、赤みが差していて工芸品に使えるらしい。

 一般的には杖が有名のようだ。


 ほぼ垂直に伸びる広葉樹である。


 周囲に魔物が居ないことを確認し、【雷魔術】にポイントを設定する。


 雷魔術 A級


 杖先から放たれる極太の光帯。


 激しい雷鳴。


 空気を震わせる振動。


 獲物を狙う蛇のように、だが鋭角に大気を切り裂くようにまるで意志を持った光の槍は目標に向かっていく。


 おそらく出来事は一瞬だった。


 だがその残光ははっきりと脳内に焼き付けれる。


 気づいた時にはレッドトレントは、中程から無残に破壊され分断されていた。




 威力も凄いが音も振動も半端ない。


 まず暗殺には向かない魔術だとわかった。


 派手すぎる。


 C級からの進化が段違いだ。


 俺はポイントを設定しなおし【隠蔽】を付与する。


「ふわああぁ……」


 リザは驚愕の表情のまま停止している。


【雷撃】は射程もだいぶ伸びているようだった。


 検証しないと正確には不明だが、たぶん20メートル以上は余裕だと思う。


 もっと使用感を試したいところだ。 

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― 新着の感想 ―
[一言] Fから上がってくってことはAやSクラスにならないと万能レベルにはのらないだろ
2019/11/23 10:50 退会済み
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