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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第60話 エルフの秘薬4

「あれほど俺から離れるなと、散々言ってあるだろうがッ」


 若そうに見えるが、たぶん結構年行ってるな。

 皺もなく20代の青年のような若々しさが見えるも、背筋の伸びた立ち振舞、隙のない物腰、鋭い眼光。

 熟練の兵士みたいな迫力がある。

 

 2メートル近くもある大男が、腰を曲げて身を小さくしている。

 まるで親に叱られている子供のようだ。


 状態:認識阻害


 ステータスが見えない。

 ほう自分の情報を守る手段というのも、ちゃんとあるのだな。

 初めて見た。

 

 それにしても只者では無いようだ。


「すまない。うちの者が何か迷惑掛けただろうか?コイツは体は立派だがオツムが今ひとつでね。ちょっと目を離したばかりに……」


 長い金髪に碧眼、肌の白い人族の男である。

 身長は170センチほどと小柄だが、その容姿の特徴から北方系なのは間違いないだろう。

 軍服のような独特の服に身を包み、腰に曲刀を差している。


 本当に申し訳無さそうにしている。その姿に偽りは感じられない。


「俺の妹が侮辱された。謝罪して欲しい」


 俺は事の経緯を話して聞かせる。


「そうだったのか。それは申し訳無いことをした。すまなかった」


 男は深々と頭を下げて謝罪してくれた。誠意ある対応だった。


 この世界の、少なくとも俺の知っている範囲の男たちは皆総じてプライドが高いように感じる。

 獣人族の男も人族の男も、謙虚という言葉を知らないのではないかと思うほどだ。


 そのため自分の非を認めて、謝罪するというのは、1つ誠意ある対応だと思っている。

 アルドラにも聞いた話ではあるが、荒事に身を置くような輩は自分に非があっても簡単には認めないとも言っていた。

 その中でも特にプライドが高いと言われる連中が北方の民であるという。


「兄ちゃんが何で頭を下げなきゃいけないんだ!」


 大男が憤慨する。


「馬鹿かッ!お前のために下げてやってるんだろうが!」


 男の怒号が響く。


「見苦しい所を見せた。俺の名はカミル。うちの者が貴方の家族を侮辱したことを精霊に誓って謝罪する」


「俺はジン・カシマ。あんたの謝罪を受け入れる」


 俺たちは握手を交わして、その場は手打ちとした。




 ギュッとしがみつくシアンの肩を軽く叩く。

 

「怖かったか?」


 少し震えているように思える。

 彼女もハーフエルフ。直感を持っている。悪意のような物に触れて、気が滅入ってしまったかも知れない。


「……大丈夫です」


 そう言うものの、あまり大丈夫には聞こえない。


 俺は身長の低い彼女に合わせて身をかがめ、彼女の目を見て話しかける。


「俺が守るから」


 シアンが深く被ったローブの中から俺を見つめる。


「俺がリザもシアンもミラさんも守るから。だから心配するな」

 

 もしアルドラと出会ってなくて、リザとも出会っていなかったら、俺はどうなっていただろうか?

 この世界でどう生きていただろうか?

 

 俺はみんなに温かいものを感じている。


 あの家にいて癒やされる。


 少なくとも俺は家族の様に感じている。


 俺はもう家族を失いたくない。


「悪い奴が来たら俺がぶっ飛ばすから」


 俺はニカッとシアンに笑いかけた後、ギュッとシアンを抱きしめた。


 シアンはビクリと驚いたように身を震わせたが、その後ゆっくりと俺の肩に手を回して抱き返してくれた。


「わかりました。信じます」


 シアンは俺の耳元でそう囁いた。




「…………」


 いつの間にか戻っていたリザが、無表情のままこちらに視線を送っていた。


「……うおっ?あれ、リザ買い物終わった?」


「……はい。終わりました」


 俺達はその後、幾つかの店を回ってから家路に着いた。


 途中で「いつの間にかシアンとすごく仲良くなりましたね?」と少しトゲのある言い方をしてきたのは、どういう意図だったのだろうか。


 


>>>>> 




 皆で夕食を囲み、早めに寝床に入った。

 明日はリザと共に森へ採取に行く予定だ。場合によっては泊まり込みになるというので、食料も余分に準備していく。

 朝ギルドに寄って、情報を見てから出発だな。


 コンコンコンッ


 ドアをノックする音が聞こえる。


「どうぞ」


 たぶんリザだろう。寝る支度を整えると言っていたので、そろそろ来る頃かと思っていた。

 俺も最近ではリザと寝るのが当然の様になってきたな。 


 ガチャリ


 しかし、そこに立っていたのはリザではなかった。


「シアン?」


 薄手のワンピースに身を包み、枕を抱きしめたシアンが立っていた。


「あ、あの、私も一緒に寝てもいいですか?」


 おずおずとシアンが祈るように、上目遣いでお願いしてくる。


 ん?


 シアンがそんな事言い出すとは思わなかったな。


 ああ、昼間のことを思い出して眠れなくなったのだろうか。


「いいよ」


 そう言うと、シアンはパッと花が咲いたような明るい笑顔を見せて、とてとてと俺のもとに寄ってくる。

 子犬に懐かれた様な感じだ。


「あ、あの兄様とお呼びしてもよろしいですか?」 


 俺の元へ寄ってきたシアンが、上目遣いでお願いしてくる。


 まぁ、断る理由もないし――


「いいよ」


 そう言うと、シアンはパッと花が咲いたような明るい笑顔を見せて、俺の胸へ飛び込んでくる。


「兄様」


 ギュウと胸に抱きついてくるシアン。

 俺はきらきらと綺麗な水色の髪を撫でる。


 地球にいたら、コスプレでしかありえない色でも、こっちでは何故か自然に見えるという不思議である。

 何故か作り物感が無いのである。まぁ自然のものだから当然の事なのかも知れないが。


 コンコンコンッ


 扉をノックする音が聞こえる。


 ガチャリ


 小さく扉が開く音が聞こえると――


「お待たせしましたジン様」

 

 そう言って部屋にやってきたリザは、部屋の光景を見て驚愕した。


「あ、あれ?シアン?」




 左隣にリザ。右隣にシアン。二人の美少女に挟まれて川の字で寝ることになった。

 まさに両手に花である。


 ギュム


 そんなことを思っていると、リザにほっぺたを摘まれる。


「いつのまにシアンとそんなに仲良くなったんですか?」


 ぷうと頬を膨らませるリザ。


「いや、何が有ったかは話しただろ?」


 リザが居ない間のことはもちろん話してある。

 家に戻ってからはミラさんにも報告済みだ。


 シアンの方に目を向けると彼女は既に寝息を立てている。今日は疲れたのかもしれない。

 俺の腕を抱きまくらの様に抱き寄せ、太腿で挟み込んでいるので逃げられない。

 シアンのすべすべの肌の感触が心地いい。

 

「……ジン様って女好きですよね」


 リザがむにむにと頬を抓りながら鋭い視線を送ってくる。


「……男が女好きなのは当たり前だろう?」


 俺は目を逸らしながら答えた。


「そうですね」


 リザは素っ気なく答えた。


 俺は腕をリザの肩へ回し、ぐいっと抱き寄せる。


「あっ……」


 リザの頬が赤く染まる。


 顔と顔の距離が近づく。


 吐息が掛かる程に。

 

 リザの唇に指先が触れる。

 

 柔らかい、花のようないい香りがする。


 リザは静かに目を瞑った。


 


「んんんっん~~~~……」


 うめき声のような音を隣で発したかと思うと、シアンがもぞもぞと動き出して、ガバっと唐突に立ち上がる。

 そして寝ぼけた眼で「おしっこ」そう言い残して、部屋から出て行った。


 ふと見ると、目を瞑ったままプルプル震えているリザの姿があった。


 薄めを開けて、こちらの様子を伺っている。


 えーっと……


「あー、今日は、もう寝るか……」


 俺は苦笑して、そう呟いた。

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[気になる点] 話数稼ぎの最強しょーもな展開やりやがったwハーレム構築に手を出さない状態で話引き伸ばしたいんやろうけど、底辺ラブコメですか?w
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