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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第51話 死人沼3

「ふあぁぁぁ……あっ、すいません……」


 リザが疲れが出てきたのか、大きなあくびをする。

 グールの出没する間隔が伸びてきて、少し暇になり緊張感が低下してきたのだ。

 忙しすぎるのも困るが、暇になってくるのも辛い。

 仮眠でも取れるなら良いのだが、さすがに難しいだろう。

 いつ来るかわからない魔物を、ただじっと警戒するというのはキツイものが在る。


「いや仕方ない、そろそろ疲れも出てくる頃だろう。リザは特に採取もあるのだし」


 その採取は、もう十分な量を確保している。

 だが多ければそれに越したことはないので、出来るだけ確保していきたいと言う。

 もちろん疲労の限界が来れば街へ帰還するだろうが、リザはまだ頑張るそうだ。


 それなら俺も弱音を吐いている場合ではない。


「だいぶグールを倒したからのう。この辺りの奴はだいぶ減ったのかもしれん」


 グールは冒険者ギルドでも討伐の対象になっている魔物だ。

 魔素の濃い森の奥で人が死ぬと、一定の確率でグールとなって蘇るのだそうだ。

 日中は土に潜り身を潜め、夜になると生者を求めて徘徊する死霊、それがグールだ。


 人を襲いグールに殺されたものは高い確率でグールになると言われているため、非常に危険視され忌み嫌われている。

 

「しかし討伐とは言っても、討伐部位はどうする?何も取っていないが」


 グールは死んでしばらく経つと、グズグズの腐肉の塊になり、やがて土に還る。

 耳を切り落としても、おそらく無意味。

 それに耳の欠損した個体もいるのだ。


「これじゃ」


 アルドラは手のひらから、砂時計を出現させた。

【収納】に入れてあったものだろう。


「昨夜にゼストから預かったものじゃ。死霊を倒すことで砂が貯まる特殊な魔道具じゃよ」


 破魔の砂時計 魔道具 D級


 死霊系の魔物は出来れば一掃したい厄介な魔物である。

 しかしその身から金になる素材を手に入れることは出来ず、冒険者は積極的に獲物として狙うことはない。

 そこで作られたのがこの魔道具らしい。

 

 これを持って死霊を倒せば砂が貯まり、その量で報酬が算出される仕組みのようだ。


「なるほど、それは便利だな」


 どうもまだ試験的に作ったばかりの品のようで、これが試作第一号らしい。

 昨日の宴の席での話から、マスターが持たせてくれたようだ。


 


 その後もグールの出現は続いたが、やはり数は少なくなってきている。

 出ないなら出ないで休めるのだが、まったく出現しなくなるということもなく、どうも休ませる気はないようだ。


 グール 死霊Lv9

 弱点:光 耐性:闇

 スキル 闇耐性


 また現れた。今回は1体だ。

 グールのレベルの幅は7~9あたりで収まっている。

 集団で来られると危険だが、1対1ならそう問題はない。

 

 注意すべきは動きが素早いのと、見かけによらず腕力があること、頚椎や心臓部を破壊するまで動きが止まらないことあたりだろうか。


「えいっ」


 リザの【風球】がグールの右肩に直撃。

 その威力に押され体勢が崩れる。

【闘気】で強化され、疾風の革靴が俺の足を補助してくれる。

 俺は素早く間合いを詰めた。


 グールは体勢を立て直そうとするが、俺は走りこんだ勢いのまま盾で体当りをして押し倒す。

 地面に転がるグールを上から抑えこみ、その首を刎ね動きを止めた。


「ふう。リザさすがの命中力だな」


「いえ、ジン様もお見事です」


「ははは、もう少しスマートに倒せればいいんだけどな……」


 取り回しやすさからショートソードを選んだのだが、攻撃力という点では少々物足りない。

 軽くて使いやすいのはいいのだが、切れ味が特別いいわけでもなく、重さによる破壊力はいまひとつだ。

 グールという人型クラスの魔物でも物足りないのに、これ以上の大型の魔物となると攻撃力不足は免れないだろう。


「いや、前から比べればだいぶ体を動かせるようになってきた。スキルの補助が在るとはいえ、今のは中々いい詰めじゃったぞ」


「……そうか?」


 こう普通に褒められると悪い気はしない。


 うん、たぶん俺は褒められて伸びるタイプだと思う。


 


 焚き火を囲んで暫しの休息。

 革製の水筒で喉を潤し、干し肉を齧る。


 グールの襲撃も止まったようで、やっと体を休めることが出来そうだ。

 リザは俺の肩にもたれ掛かり、うつらうつらと船を漕いでいる。

 疲れも限界に来ているのだろう。


 アルドラは剣を抱え込み、瞑想しているように焚き火の前に座っている。


 そういや最後に倒したグールは弱点やスキルが見えた。

 前にもこんなことが、あったような。


 ……うーん。


 今まで見えなかったのに、急に見えるようになった。

 グールもそうだが、最初に戦った時と最後に戦った時では何が違うんだろうか。


 ……もしかして、数だろうか?

 一定の撃破数で、詳細な情報が見えるようになるとか。


 だとすると初見では、弱点等の情報は見えないということか。

 まぁ今までも見えてなかったわけだから、関係ないと言えば関係無い。

 まだ確信は無いが、合ってそうな気がする。 




 森の中を冷やりとした風が吹き抜ける。


 沼の周辺の月光草は、大部分を採取したために幻想的な光の乱舞は鳴りを潜めている。

 僅かに離れた位置に舞い散る輝きが、その余韻を残すのみである。


 沼の水面が静かに揺れる。


 月明かりに照らされて、水面の視界は晴れている。


 そんな中で動く何かを発見した。

 

 まるでボロ布か何かが、水面の僅かに上空を強風に煽られるように漂っている。

 だが吹き飛ばされることもなく、不思議な一定の動きでその空間に居座り続けていた。

 そもそも強風など何処にもないので、どちらにせよ得体のしれない物なのは間違いない。


 俺がアレは何かと聞く前に、アルドラは立ち上がって呟いた。


「マズイのう」


 まだ距離があるために魔眼での確認が出来ない。

 だが得体のしれないソレは、確実にこちらへ近づいていた。


 そして探知が更なる来客の到来を告げる。


 ザッザッザッ……


 何者かの足音が、静かな森の奥から近づいてくる。

 この辺りは獣の数も少ないようで、その声もあまり聞こえない。

 そのせいもあってか、その進軍の足音はよく響いていた。

 

 森から姿を現したのは、十数体の骸骨だった。


 木製の円盾に、錆びた長剣を手に革鎧を着込んだ骸骨の戦士だ。


 スケルトン 死霊Lv10


 ガシャガシャと不吉な音を立てて、こちらへ近づいてくる。


 それに反応したのはアルドラだった。


「ジンお主はアレを何とかせい」


 アルドラが沼の方を見て呟く。


「アルドラッ!」


 彼は振り向いて迷いなく走りだした。

 スケルトンへ一直線に向かって行ったアルドラは、一番手前の一体に突進力を乗せた上段斬りを放つ。


 ガギンッッ


 両手持ちから放たれる攻撃力のある一撃を、難なく盾でいなすスケルトン。

 斬撃は逸らされ剣が地面にめり込む。


「おぉッ!?」


 その隙を突いてスケルトンの錆びた長剣がアルドラへと殺到する。


 素早く地面に刺さった剣を引き抜くと、バックステップで後方へ下がりつつ大きく振りかぶり高めの水平切りを放った。

 その攻撃に反応した前線のスケルトンらは、一様に盾を構えてアルドラの攻撃を防いだ。


「ちゃんと反応するんじゃのう。その装備は飾りな訳ではないようじゃなぁ」


 魔物動きに満足したのか、ニヤリと不敵な笑みを見せる。

 そしてこちらへ一瞬目配せした後、スケルトンの群れへと突進していった。


「注意を自分へ向けるためにか」


 派手な動きで、魔物の攻撃対象を自分へと向けたのだろう。

 アルドラの動きはそういったものだ。

 

「ジン様……」


 俺の傍らで覚醒したリザが目を見開く。

 直ぐ傍まで、水面の上を舞っていた何かが接近していたのだ。


 ゴースト 死霊Lv10


 何かの力で釣り上げられたボロ布。

 そういったものが3体、目の前の空中に存在している。

 見ているだけで薄ら寒いものを感じる。

 不気味な存在だ。


 オオオオオォォォォォ……


 何処からとも無く聞こえる気味の悪い音。

 腹の底が冷えるような薄気味悪さ。

 風の音にも聞こえるが、コレを目の前にすると怨嗟の声だと言っても納得できる。


 ゴーストは俺とリザを囲むように、地上1メートルあたりを浮遊し旋回している。

 主だった攻撃をする気配はない。


 聖油を塗った剣は闇を払う力が在るらしい。

 こういったフワフワした実体の無さそうな奴にも効くのだろうか?

 

 俺は鋭く踏み込み上段斬りを放つ。

 

 スルッ


 まるで空中に浮いた羽毛に斬りつけたかのように手応えはまったく無く、斬撃から生まれた風圧に巻かれるようにすり抜ける。

 

 ゴーストも剣のギリギリ届かない間合いを知っているかのように、一定の距離を保って近づいてこないようだ。


 ならば雷魔術で撃ち落とす。




 剣術のポイントを雷魔術へ移行。

 ゴーストは仕掛ける様子もないようだし、丁度いい。

 今日は杖を持ってきていないが、この鉄製の剣では触媒には向かないため剣を鞘に収める。


 右手に魔力を練り上げ、いつでも発射できる準備が整った。

 そんな時。


「うぅぅ……」


 ふと見るとリザが地面に腰を落とし、目から大粒の涙を流している。

 

「……リザ?」


「嫌ぁ……もう嫌ぁ……なんで皆いなくなるのぉ……」


 リザはボロボロと涙をこぼし、焦点が定まっていない。

 何もない場所を見つめ、自身の体を抱きしめ震えている。


「リザどうした?大丈夫か?」


 リザの肩を掴み、揺すって呼びかけるも反応は鈍い。

 どうも声が届いていないようだ。


 フワリとゴーストが空中を泳ぐようにリザに近づいた。

 そしてボロ布の様なその体の先端部分が、ぐにゃりと頭蓋骨のような形に変化した。


 カカカカカッ


 振動して動くそれを見ると、まるで笑っているかのように見えた。


【雷撃】


 ズダァンッ!!


 右手で練り上げられた魔力は紫の残光を引いて、リザに纏わり付くゴーストへ吸い込まれる。

 

 ボロ布は渦を巻く様に、錐揉み回転をして地面へ落下した。


 地面に蠢くゴミ。

 俺はそれに追撃を浴びせる。


 何度も紫の閃光が放たれた。

 最初はモゾモゾと蠢いていたゴミの動きも、次第に鈍くなる。


 止めに剣を抜き、上から突き刺しゴミを地面に縫い付けた。


 やがてゴーストは溶けるように消滅した。




 精神攻撃。


 おそらくゴーストは攻撃してこなかったのではない。

 ずっと攻撃していたのだ。

 ただ俺には闇耐性があったので効かなかったのだろう。


 こういった悪霊のような魔物ならあり得る攻撃だ。

 ゲームや小説でもよくあったはず。 

 ……もう少し早く気付けば。


 アルドラもこれを咄嗟に直感で感じ取ったのだろう。


 俺は残り2体のゴーストに【雷撃】を放つ。


 距離もあるせいか、剣を振るった時のようにフワリフワリと、捉えどころのない動きで【雷撃】が避けられる。

 

 当たらない。


 どうすればいい?


 リザを見ると今もボロボロと涙を流し、すっかり憔悴しているように見える。

 早く倒さないと、マズイかもしれない。


 しかしどうすれば……空でも飛べないと、空中を舞うゴーストに接近できないし、点での攻撃は避けられてしまう。

 せめて範囲攻撃なら……


 範囲攻撃……

 俺は今まで威力を高め、無駄な魔力の消費を抑えるために【雷撃】をできるだけ集束させるように考えていた。

 威力を散らさないように、攻撃力を1点に集中させる算段であったのだ。


 それを逆に散らしてみる。

 扇状に広がるように、威力よりも広範囲にダメージが届くように。


 わずかでも当たれば、隙が出来るかもしれない。

 一瞬でも動きを止められれば、追撃を当てられるかもしれない。


 以前試しにと編み出した技は、無差別に周囲に打ち出すもので効率がいいとは言えないものだった。


 今回はある程度範囲をまとめて打ち出す。


 やったことはないが、やるしか無い。


 俺は盾を外し、より広範囲に届くように両手で魔力を練り上げる。

 普段よりも長めに、範囲攻撃なら威力も落ちるだろうからそれをカバーする意味でも、より多くの魔力を込める。

 

 うまく調整具合がわからないが、練習している場合じゃないし、為せば成る!だ!


 目の前で手を合せ、魔力を貯める。

 バチバチと手から紫電が放出される。

 両手で包み込む空間に魔力が貯まって何かが形成されているのが見える。

 

 通常魔力は視認できない。

 俺でもたまに僅かに見えるくらいなのだが、こんなに濃い魔力は初めて見る。

 

 自分で作っといて何だが、大丈夫なのだろうか……


 両手で包み込む空間に作られた、魔力の塊っぽいもの。

 このまま天に掲げれば、元○玉とかになりそう。


 ちょっと怖くなってきたので、このまま発射することにしよう。

 狙うタイミングはできるだけ2体のゴーストが近づいた時に、縦に並んだ時に撃つ!それだ。


 と思ったら、そのタイミングは直ぐに来た。

 俺は慌てて【雷撃】を放った。


 両手のひらから扇状に広範囲に威力を分散させた、範囲攻撃。

 とりあえず【雷扇】とでも名付けよう。




 空気を引き裂く音。

 そんなような激しく強烈な音が、周囲を圧倒した。

 無数の雷光が両手から放たれる。


 雷をいくつも束ねた閃光。

 

 先にあるもの全てを飲み込む稲妻の波だ。


 光と爆音で何が起きたのか、どうなったのか結果がわかるまで多少の時間を要したくらいである。

 

 


 地面に落ちたそれを探すのは大変だった。

 既に力なく消えかかっていたが、念の為に剣を突き刺し、完全に消滅させる。


 魔石(恐怖)


 どうやらゴーストからも魔石は得られるようである。

 精神攻撃の正体がこれか。


「リザ大丈夫か?魔物は倒したぞ」


 ゴーストを倒したので直に正気を取り戻すとは思うが、回復には少し時間がかかりそうだ。


「ジン様……?」


 俺の呼びかけに気がついたのか、リザの目に光が戻る。


「怖かった……」


「うん」


 リザが胸に飛び込んでくる。

 俺はそれを受け止め、力強く抱きしめた。


「すごく怖い夢を見ました」


「そっか」


 俺が強く抱きしめると、リザもそれに返してギュッと手に力を込める。

 それ以上の言葉なく、俺はまだ震えるリザの体を落ち着くまで強く抱きしめた。


 


 それにしても慣れない術に魔力を消費し過ぎた。

 実はもう大部分の魔力を失っている。

 今にも倒れそうなのだ。


 おそらく不安であろうリザの為にも、今は弱っている所を見せないほうが良さそうな気がする。

 とりあえずこの場は気合で耐えよう。


 リザが落ち着いてからポーションを飲めばいい。

 それでも今日の戦闘は、そろそろ終了にしたいところだ。


 アルドラの方も、そろそろ決着がつきそうだ。


 リザが少し落ち着いたので、腰を下ろして鞄からポーションを取り出し、一気に煽った。


「ふう、少し落ち着いた」


 リザはいつの間にか目を瞑り、眠ってしまったようだ。

 疲労も限界へ来ていたのだろう無理もない。

 

 リザを横に寝かせ、立ち上がる。


 周囲には探知の反応はない。


 アルドラが片付ければ、少しは静になるだろう。


 スケルトンも後は僅か2体。

 俺は魔力も尽きかけれてるし、悪いが休ませてもらい処理は彼に任せよう。

 

 それにしても、この魔物たかが骸骨と侮れない。スケルトン、なかなか強い。

 正面からの攻撃は盾でいなされ、隙を見せれば長剣での鋭い攻撃が襲ってくる。

 まるで訓練された兵士のようだ。


 もしかしたら兵士の成れの果て、と言うやつかも知れないな。


 アルドラは攻撃を掻い潜り、背後へ回って一閃。

 また1体倒れた。


 やはり強い。

 だがアルドラはちょっと楽しそうだ。




 探知に反応は無い。

 それは間違いないはずなのに、なんだこれは?


 地面に黒いモヤののようなものがいる。


 ズルズルとゆっくり這いよる様にリザに近づいてる。


 シャドウ 死霊Lv12


 探知を掻い潜るタイプの魔物か!


「リザ起きろ、魔物だ!近い!!」


 俺の叫び声でリザが飛び起きる。

 周囲を見回すも気づいていない。見えてないのか?


 黒いモヤはリザを飲み込もうと近づいた。

 俺はそれに割って入る。


「ああああああッッ!?」


 魔物が体に纏わり付く。


 ヤバイこれ、体を乗っ取るタイプのやつだ。

 意識が……マジでヤバイ……


「ジン様!」


 リザが異変に気がついたのか、俺の体を掴み悲痛な声を上げる。


「離れろリザ、危ない……」


「ジン様しっかり!」


 気が動転しているのか俺の声を聞いていない。


『コ……ロセ……コロ……セ……』


 俺の内側から、ドロドロとした黒い憎悪が沸き上がってくる。

 俺は両手をリザの首もとへ伸ばした。


「逃げろリザッ!!」


 薄れる意識の中から、必至に声を上げた。


「嫌です!」


 なんでだよ!?


「リザ風球をジンに向かって撃て!衝撃で魔物を引き剥がすんじゃ!」


「嫌です!!」


「なんじゃと!?」


 アルドラが困惑の声を上げた。おそらく彼女がアルドラの言うことに抵抗したのは、これが初めてなのかもしれない。


 俺の手がリザの細い首に触れる。

 それなりに鍛えてはいるし、力の指輪で強化もされている。

 

 こんな細い首など本気で絞めれば、大変なことになるのは目に見えてる。


「ぐうううッ」


 俺は全力で抵抗した。

 魔物の言いなりにはならない強い意思を持って。

 この女は俺のだ!誰が魔物にくれてやるものか!

 俺は心のなかで叫んだ。


 腕の動きが止まる。


 体の中で魔物の支配と俺の抵抗がぶつかり合う。


「ジン様!」


 俺の両腕が、俺の意志とは無関係にリザを襲った。




 むにっ。


 リザが首を掴まれるのを避けようと動いたために、両手は彼女の胸に。


 むにむに。


「おおっ……」


 その瞬間、魔物の呪縛が薄れる。

 俺の体は、俺の支配下に戻った。


 むにむにむに。


「ジン様正気に戻って!!」


 パァンッッ




 腰の入った強烈な平手打ちが、俺の頬を打ち抜いた。        

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― 新着の感想 ―
[気になる点] グール線こんな長々いらんやろ。この話自体1話で収められる内容やのにグダグダと数話にまたがる。 せっかく面白いのに死ぬほどテンポ悪い。書籍では死ぬほどカットされるやろうし、カットせずやと…
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