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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第47話 E級冒険者

 ウッドマンを倒すと、直ぐ様その場所に魔法陣が出現した。

 床から立ち上がる輝きは、ここへやって来た時に通った転移魔法陣の輝きによく似ている。

 この部屋へ侵入してきた際の入り口は閉じたままであるため、帰るためには脱出の腕輪を破壊するか、この魔方陣に飛び込むしか無さそうだ。


 俺は意を決して、魔法陣へ飛び込んだ。




>>>>>




 ザッハカーク大森林、某所。


 湿気を含んだひんやりとした風が頬を撫でる。

 日増しに高くなる気温だが、森の中は長く伸びた枝葉が影を作り、下草が大地を覆うことで一定の気温を保っていた。

 直接日を浴びるよりは、だいぶマシだろう。


 探知スキルに反応する魔力の数は12。

 今までで最多だった。


「囲まれてるぞ!?どうするんだ?」


 草葉の陰、木々の上からより感じる視線。

 まるでいつでも襲えるぞ!とでも言われているかのような感覚。


「どうするも、こうするも無いじゃろう?全員打ちのめせば終いじゃ」


 長い銀髪を靡かせ、長い剣を両手に持ち、切っ先を水平よりやや下へ構えた。

 後の先を取る、防御の構え。

 通称、地の構えである。


 隙を突いたと思ったのだろう。

 草葉の陰から1つの塊が飛び出し、俺の背後へと差し迫った。


「ギギィイーーッ!!」


 耳障りのする不快な声を上げて、迫る魔物を振り向きざまにショートソードで袈裟懸けに切り捨てる。


 肉を切り裂く感触が、刃から直接伝わってくる。

 

「探知スキルでモロバレだよ」


 ゴブリン 妖魔Lv4


 ふと横を見ると木の上から2体同時に襲いかかるゴブリンを、アルドラは軽々と1体を正中線より両断し、もう1体を上半身と下半身に分断したところだった。


 あんなデカイ剣なのに、切っ先が早すぎてほとんど見えない。

 この爺さんには勝てる気がしねえ……


 戦力差は十分理解してもらえたはずだが、魔物は諦めていない様子で戦闘は継続された。




 俺は現在、アルドラと大森林で修行中である。

 昇級は無事終わりE級となった。

 もちろんギルドカードの情報も更新された。


 E級からは森や境界での採取依頼が主となってくるため、これで堂々と森へお出かけできるわけだ。

 あー、もちろんF級だとしても自分の能力に自信があれば、森へ行くことは自由ではある。

 ただF級というのは見習い、研修期間という意味合いが強いため、あまりいい顔されないってだけだ。


 アルドラが急に「修行しようぜ」と言い出したのにも訳がある。

 1つめは地下の探索が一区切り着いたこと。アルドラは地下遺跡の先へだいぶ進んだようであるが、かなり水没した部分が多く先へ進むには対策が必要とのことだ。他にも罠の問題も有り、これ以上の探索は相応の準備が必要でありそうだ。

 2つめはアルドラのレベルは俺のレベルと関連しているらしいという話である。


 アルドラのレベルの上限が、俺の現在のレベルとなっていると言うことだ。

 ちなみに現在のステータスは―― 



 ジン・カシマ 冒険者Lv7

 人族 17歳 男性

 スキルポイント 0/20

 特性 魔眼

  雷魔術   (雷撃 雷付与 麻痺)

  火魔術   (灯火 筋力強化)

  土魔術   (耐久強化)

  闇魔術   (魔力吸収 隠蔽)

  体術  E級

  剣術  C級

  鞭術

  闘気 F級   

  探知  D級(嗅覚 魔力)

 魔力操作  (粘糸)

  解体



 アルドラ 幻魔Lv7

 特性 夜目 直感 促進 眷属

 スキルポイント 0/69

 時空魔術 S級(還元 換装 収納 帰還)

  剣術  S級

  体術  D級 

  闘気  F級

  回避  D級


 

 早い話が「わしのレベルを上げるためには、お主のレベルを上げねばならんようじゃ!レベル上げに行くぞい!ついでに戦闘訓練とスキル収集もじゃー!」

 と言ったような話になったわけだ。


「疲れた……ちょっと休憩にしないか?さすがに連戦し過ぎだろ」


 朝一番でギルドに赴き、適当な依頼書を受けて森へとやってきた。

 そして今まで休みなしの行軍である。

 既に太陽は天高く存在していた。


「ふむ、では1つ昼飯にするか」

  



 森の中、川沿いの少し開けた場所で火を起こす。

 少し探せば、枯れた倒木は幾らでも見つかる。

 それに発火棒を押し付けて火をつけた。


 発火棒は薪に火をつける際に使われる魔導具だ。

 金に余裕のある旅慣れた冒険者なら、1つは持っているであろう便利な道具である。

 僅かな魔力を元に(または魔石を燃料に)枯れ木に簡単に火をつける事ができる。

 雨の日でも、木が多少湿っていても大丈夫という優れ物だ。


 バチバチと音を立てて燃え上がり、火の粉が舞い枯れ木が爆ぜる。


「手伝いはいるか?」


「いやいい。さっき見かけたから直ぐ戻る」


 我が身に【隠蔽】を付与し、静かに藪へ分け入った。


 そして僅かな時間を置いて、今回の糧となる獲物を発見した。




>>>>>




 皮を剥かれて串刺しにされた野兎が2匹、焚き火に炙られている。


 新たに修得した雷魔術【麻痺】のお陰で肉を痛めずに獲物を手に入れることができる。

 有効射程も【雷撃】より長く、その効果も申し分ない。


 野兎もといワイルドラビットは、普通に旨いらしいので今日の昼食となって貰うことにした。 

 味付けは家から持ってきた塩を肉に摺りこんである。


 肉の焼けた匂いが香ばしい。

 美味そうだ。


「この辺りはワイルドラビットの生息地らしい。ゴブリンの餌にもなっておるんじゃろう。ついでに狩っていくか」


 朝受けた討伐依頼はワイルドラビットとゴブリンだ。

 どちらも増えすぎると人の領域まで足を伸ばして畑を荒らしたりするので、定期的な駆除が求められている。

 兎は肉も皮も売れるので、人気の獲物だったりするのだが、警戒心が強く足も早いため素人には中々難しかったりする。

 それでもそこそこの弓の腕があれば普通に狩れるわけだが。  

  

「うん、旨い。あっさりしてる割に旨味が濃い感じだ。野生の肉って感じがする」


 焼けた肉に齧り付く。

 肉汁が滴り、思いのほかジューシーで旨い。

 皮を剥いで内臓を抜いて串刺しで焼いただけなので、兎そのままの姿で残ってるわけだが、慣れると気にならないもんだ。

 こうなるとただの肉である。


「ゴブリン狩りは終了か?」


「もちろん居ったら狩るに決まっておる。剣の実践練習に丁度いいじゃろ」


 ゴブリンは身長120センチくらいの人型の魔物だ。

 深緑の皮膚を持ち、老人のような深い皺に長い鷲鼻、大きな耳、ギョロリとした濁った目を持った醜悪な顔をしてる。


 大概裸であるが、どこからか盗んできたボロ布を纏っていたり、獣の皮を剥ぎ取って腰に巻いている奴もいたりする。

 腕力はその小柄な体躯の割に、人族の成人男性なみにはあって侮ることは出来ない。

 基本的に群れで行動するため、囲まれると厄介である。

  

 森に落ちている木の棒や、どこからか拾ってきた剣や短剣で武装している奴も見かける。

 道具を扱うだけの知能はあるらしい。


 だが奴らの一番の武器は顎である。

 腐肉だろうが何だろうが、森の獣を骨ごとバリバリ食べる強力な顎と丈夫な胃が彼らの武器なのだ。


「あと繁殖力じゃな。1匹みたら近くに30匹はいると思えと言われるほど、奴らはどんどん増えるからのう」


「ゴキブリみたいな奴だな……」


 その分いろいろな森の魔獣の餌になっているようだが。




 昼休憩を終え、森を移動しながらの狩りが再開される。

 どの道をどう行くかは、アルドラの直感に任せている。

 丁度いいレベルの魔物がいそうな場所を狙って移動しているのだ。


 道とは言っても、俺には草木の生い茂る森にしか見えない。


 一応接近戦の修行という体であるため、魔術は封印し【剣術】を中心としたスキル設定となっている。

 俺の武装はラウンドシールドとショートソードだ。


「魔術の効かない魔物など幾らでもおるからな。【雷撃】に頼った戦い方ではいずれ壁にぶつかる。今のうちに接近戦にも慣れて居ったほうがよいじゃろう」


 土の属性を持つ魔物などは雷が効かないことが多いという。

 他にも雨だったり、水辺や水中など使えなかったり制限されるような場面は幾らでも考えられる。

 俺も【雷撃】以外の戦う術を見出したいとは考えていたのだ。


 そもそも【雷撃】は有効射程が短いため、どちらにせよ接近戦の訓練は必要不可欠だろうとは思っている。


「それに戦闘中に無闇にスキル設定を弄るのも、控えたほうがいいじゃろうな」


 設定を変更する際には、どうしても隙ができる。

 意識がそちらに集中するからだ。

 どう変更するか予め決めていたとしても、隙を完全に無くすことは出来ないのではないかと思う。

 たとえ短い時間であっても、一瞬が命取りになるような場面では自殺行為にも等しい。


「変更を余儀なくする場合は、戦局から一旦離れるか、隙が出来ても問題無い状態に持っていくかしか無いじゃろうな」


 だがアルドラはこうも言う。


「まぁ何にせよ、スキル構成を思いのままに変更できる者など聞いたこともないし、間違いなくそれはお主の強力な武器になるじゃろうな」


「そうだな。そのためにも」


 レベルを上げてポイントを増やし、スキルを収集して手札を増やす。


 やることは多い。


「世の中わしの知らんこともまだまだあるもんじゃのう。ゆっくり死んでおる場合ではないわ」


 

  

 森を移動中、木の上からゴブリンの襲撃を受ける。

 飛び降りながらの棍棒の一撃。

 

 俺は盾でそれをいなし、回避する。


 攻撃をいなされて、隙の出来たゴブリンの首もとへ滑るように剣を差し込む。


 致命傷となる一撃。


 ゴブリンはギョッとした顔で、数歩たたらを踏むとその場に崩れ落ちた。


 それを合図とするかのように、藪からゴブリンの群れが一斉に溢れ出てきた。


「また多いのう」


「多すぎだよ!」


 アルドラの突きが1体のゴブリンの胸に浅く食い込む。


 ギィ!?


 あまりに早く鋭い突きに、驚きの声を上げた。

 アルドラはゴブリンを突き刺したまま、片手で高々と持ち上げるとそのまま勢い良く振り下ろした。


 切っ先に食い込んでいたゴブリンは遠心力を加えられ、勢い良く弾き出される。

 まるでボーリングの様に、弾き出されたゴブリンは仲間を巻き込んでまとめて薙ぎ倒された。


「ゴブリンは本来臆病な連中じゃが、こうして数を揃えると途端に強気になるんじゃよ」


 1匹1匹はそれほどの脅威ではない。

 装備を揃えた冒険者なら、新人でも十分に討伐できる程度の強さである。

 知能も人族の幼児程度しかないと言われている。


 だが群れになるとその危険度は格段に増す。

 大きな群れともなれば、小規模の商隊を襲ったり人の村を襲ったりもする様になるそうだ。 


「あー、だからこんなに血の気が多いのか」


 状態:興奮


 仲間が殺られても戦意を失わず突っ込んでくる。

 だがそれでは数が多いだけで、それほど恐ろしくはない。


 人間の兵士とは違い戦術も何もない、単なる数に任せた突撃。

 であれば必要以上に恐れる必要は無いのだ。


 目の前に迫るゴブリンを盾で押し返す。

 彼らは小柄で体重も軽いため、容易に押し返せる。


 そしてそのまま弾き飛ばし、仰向けに転ばせて胸へと一刺し。


 策もなく突っ込んでくるゴブリンに剣を突きつけ、その突進を止める。

 ゴブリンは鎧を着てるわけでもなく、皮膚も岩のように硬いわけでもないのである意味切り放題だ。


 一瞬でも動きを止めることが出来れば、後はどうとでもなる。


 ゴブリンは次々に襲いかかってくるが、アルドラに背中を任せ、危なげなく対処していった。

 恐ろしげな形相で立て続けに向かってくるゴブリンだが、もはや彼らに危険を感じることはなかった。




「ゴブリンの耳も魔石もだいぶ貯まったのう。そろそろ終いにするか」


 ゴブリン集団相手の剣術修行も、今日のところは終了だ。

 朝から狩り続けて、もう日も落ちようとする時刻。

 さすがに疲れた……


 途中何度もポーションで回復はしているものの、疲れが完全に抜けるわけでもない。

 そろそろ疲労の限界も近い。


 今回狩ったゴブリンの耳、魔石、ついでに狩ったワイルドラビットはアルドラの時空魔術の【収納】へと放り込んだ。

 アルドラも自身の能力を完全に把握している訳ではないそうだが、どうも今わかる範囲ではS級の【収納】というのは収納力の上限がないようである。

 事実上、無限にアイテムを保存しておけるぶっ飛んだ能力らしい。


「出し入れするには僅かな魔力を消費し、容量の大きい物じゃと消費する魔力も増大するようじゃ」


 あまり大量に収納すると、取り出すのに(探しだすのに)手間取る様だ。また巨大なものであると出し入れに時間が掛るというのもわかっている。


 そもそも時空魔術というのが相当なレア魔術らしく、扱えるものが殆ど居ない幻の術らしい。

 修得したアルドラでさえも、術の効果の全てを知っているわけではないそうだ。


「修得した時点では、最低限のことしかわからんからのう」


 討伐証明部位であるゴブリンの耳はギルドへ提出して、魔石はアルドラが保管することになった。

 ワイルドラビットは皆へのお土産だ。


 魔石は時空魔術、還元によって魔力として吸収できるらしいから、魔力が尽きかけた際の補助燃料ということで考えている。


「帰還ってので家まで帰れないのか?」


 名前からしてル○ラっぽい魔術と期待してしまうのだが。


「無理じゃな」


 この【帰還】という魔術は本来転移の場所を設定すると、そこへ自分の体を魔力の粒子へと変換して一瞬で移動しその後に再構築するという転移魔術らしい。


「わしの使える【帰還】は転移場所を主に固定されてあるようで変更できんようじゃ。それに効果の範囲もわし1人のようじゃな」


 ん?つまり俺がホームポイントってこと?


 あぁ、それで前に俺の元へ帰ってきたアレは【帰還】の効果だったのか。  

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