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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第39話 討伐依頼2

 アルドラはあっという間に森の方角へと走り去っていった。

 ステータス上はレベル1だが、その強さは元S級冒険者のそれなのだ。

 心配するだけ無駄だろう。

 

 かつての戦闘スキルは失っているようだが、あの様子ではあまり関係無さそうだ。

 剣術スキルが無いからといって、剣が振れないというわけでも無いのだから。


「さてと」


 俺は魔物に向き直る。

 魔物はアルドラとのやりとりを脇で聞いていても、知らん顔で草を食み続けている。

 

 魔物には好戦的なタイプと非好戦的なタイプがいるという。

 こいつは後者だ。


 この手のタイプは、こちらから必要以上に近づくか攻撃的な接触しないかぎり襲ってくることはそうないらしい。

 

 ある程度近づくと顎をガチガチと打ち鳴らして威嚇行動をとるが、離れればまた何事もなかったかのように草を食む。


 俺は杖を芋虫の背に押し当てる。

 触れた感触は固いゴムのようだ。

 タイヤとまでは行かないが、相当固い。


「ギィ?」


 芋虫が不快に思ったのか、俺の方へ一瞥するも程なく無視してまた草を食みだす。

 敵意が無ければ棒で突かれても、襲ってくることは無いようだ。


 バンッ


 杖の先端より放たれる【雷撃】


 弾けるような高い音を立てて放たれた閃光が、魔物の体を貫いた。


 芋虫は一瞬にして2つに分断された。


 俺が冒険者となって最初の獲物に芋虫を選んだ理由。

 固く生命力が強く一部の者にとっては厄介な相手だが、好戦的でなく魔術という弱点がある。

 特に火雷氷に弱い。

 軽く流すには丁度いい相手だろう。




 俺は藪の中を薬草を探しつつ、探知で魔物も探る。

 背の低い芋虫は地面を這っていれば、普通に探したのでは見つけづらい。

 腰ほどもある下草が彼らを覆い隠すのだ。


 しかしこの薬草は芋虫にとってもいい餌であるようで、薬草が纏まって生えている様な場所には多くの芋虫がいることがわかった。

 薬草事態もそう珍しい物では無いようで、彼方此方で発見できる。

 俺のように魔眼や鑑定スキルの類がなければ似たような草はたくさんあるので、いちいち見聞しながらとなってしまい中々に手間が掛かりそうだが。


 俺は薬草を次々に発見し鞄へ突っ込んでいった。

 芋虫も発見次第【雷撃】で瞬殺だ。

 その頭の突起を剣で切り取り、これも籠に放り込んでいく。


 薬草も突起も12個まで鞄の中でまとめて収納出来るようだ。

 

 今のところ魔石は見つかっていない。

 レベルも1~3ほどの個体が多く、生まれたばかりの子供なのだろう。まだ魔石ができるほど育っていないのだ。


 次々に魔物を葬って行く。

 まるで害虫駆除だ。

 まぁその通りなのかもしれない。


 薬草もだいぶ集まってきた。

 適当なところで戻るか。

 そう思っていた矢先だ。


 クローラー 魔獣Lv6


 クローラー 魔獣Lv7


 クローラー 魔獣Lv8


 お、今までで一番レベルが高い。

 見た目もこころなしか、一回り大きいのかもしれない。


 魔物は放射状にて、俺を待ち構えるように布陣している。

 今までの奴らとは違って、明らかに俺を敵視している。

 仲間を殺され続けて怒ったのだろうか?虫にそんな知性があるのかどうかは知らないが、今までの奴らのようにただ黙って、殺られてくれるだけでは済まなさそうな雰囲気だ。


 一瞬俺が戸惑ったのを見逃さなかったのだろうか、芋虫共はそれぞれに粘糸を空に向かって吐きかけた。

 粘糸は放物線を描くように、山なりに飛んでくる。

 空中で拡散し、その範囲は広い。

 3匹ぶんも合わさると、けっこうな量である。


 俺は慌てて、転がるように無様にそれを回避した。

 僅かに腕や足に粘性の高い糸状の物質が付着する。

 感触は強力な粘着テープといったような感じであろうか。

 かなりの粘性だ。

 まともに浴びるのはヤバそうだ。


 追い打ちをかける様に第二射が発射される。


 俺は後ろへ飛び退き、草むらへ退避する。

 間髪入れずに第三射が放たれるが、生い茂る草木が屋根となって俺を粘糸から守ってくれた。


 第四射は来ない。

 この状態では無駄だと悟ったのだろうか。


 芋虫の1匹が草木を掻き分け、ガチガチと顎を鳴らして俺に迫る。


 バンッ


 俺は正面から【雷撃】を浴びせた。

 頭の突起が宙を舞い、芋虫の顔面が消し飛ぶ。

 討伐部位のことを考え威力は抑え気味にしているが、明らかにオーバーキルだった。


 すぐ後ろにいた、もう1匹の芋虫にも【雷撃】を浴びせ瞬殺。


 たしか後1匹居たはず……


 その瞬間、ガサッと直ぐ脇の草が動くのを感じた。


 回りこんでいた芋虫の1匹が、俺へ目掛けて跳躍する。

 体当たりだ。

 ドンッという強い衝撃を胸で受け止める。


「うぐうっ」


 思わず鈍い声が漏れる。

 

 衝撃で肺から無理やり空気を排出させられたような気分だ。


 だが怪我をするほどの威力はない。

 地味に痛いが。


 地面に伏した芋虫を上から杖で押さえつける。


 バンッ


 芋虫の体は2つに分断され、その動きを止めた。

 シュウシュウと肉を焼く煙が立ち上り、不快な匂いがあたりに広まった。


「ふう、ビビったわ……」


 油断していたわけでもないが、粘糸は思いのほか厄介なスキルのようだ。

 それにしっかりとした防具も必要のようだ。

 

 俺はポイントを変更し、その後も耐久強化を自らに付与して狩りを続けた。

 そして日が沈む頃に、やっと魔石を発見することができた。



 ジン・カシマ 冒険者Lv4

 人族 17歳 男性

 スキルポイント 0/17

 特性 魔眼

  雷魔術 C級(雷撃 雷付与)

  火魔術 (灯火 筋力強化)

  土魔術 (耐久強化)

  闇魔術 (魔力吸収 隠蔽)

  体術  

  剣術

  鞭術

  闘気  

  探知  D級(嗅覚 魔力)

 魔力操作 F級(粘糸)



 魔石は幸運な事に、1つ目でスキル付きを引き当てた。

 魔石を得られる魔物は、ある程度成熟した個体だが、それでも必ず魔石を持っているとは限らない。

 魔石を持っていたとしても、スキル付きである確率は更に低い。

 

 粘糸は魔力操作というカテゴリらしい。

 つまりあの糸は魔力を練って作られたということか。


 そういえば腕に引っ付いた粘糸は、しばらくすると何もなかったかのように消え失せた。

 そう長い時間持つわけでもないようだ。

 戦闘中に喰らえば十分脅威だが。


 試しに【粘糸】を、近場に居た芋虫に放ってみる。


「ギュィィ??」


 粘糸が芋虫に絡まり着く。

 強い粘着性の糸が互いにくっつき絡まり、芋虫の動きを封じていく。

 しばらくモゾモゾと動いていた芋虫は、時間が経つとピクリとも動けなくなってしまった。


「F級でこれか。けっこう凶悪だな」


 更にC級へとポイントを設定しなおし、別個体で威力を試してみる。


「うーん、威力は変わってないのかな?」


 ランクを上昇させると、射程距離や範囲が広くなるようだ。

 だが上昇率はそれほど高くないだろう、目に見えて効果が上がるという程でもない。

 もしかしたら効果時間も長くなるのかもしれない。

 まぁ実際使うならFでも十分な射程と範囲だと思う。効果も申し分ない。


 俺はひとまず検証を終え、冒険者ギルドへ戻ることにした。


 依頼を受けるのは正面受付からであるが、討伐部位を持ち込むのは裏口の鑑定所のようだ。

 俺は集めた薬草とともに、依頼書と討伐部位を提示した。


「これは今日一日の戦果ですか?」


「はい」


 鑑定所の職員は驚愕の顔を見せる。


「少々お待ちください、今担当の者を呼んでまいります」


 鑑定師Lv18


 鑑定 F級


 対応してくれたこの人も、鑑定スキル持ってるようだけど。


「いえ、私はまだまだ素人レベルですので」


 そう言い残して、奥へと引っ込んでいった。


「お待たせしました」


 少し待つと担当者が現れ、鑑定作業を進めてくれた。

 多量の戦果があったとしても、大人数のパーティーならそれほど驚く事でもないものな。

 まぁ俺はソロだが。


 討伐部位 クローラーの突起×84 4940シリル

 薬草採取 癒やし草×60     1200シリル


 おぉ結構な稼ぎになったな。

 貧民街に暮らす最底辺の労働者の1日の稼ぎは200前後らしいから、それを考えると30日分くらいだろうか。

 冒険者がうまくすれば稼げるというのも頷ける。

 しかし普通はリスクを抑えるためにもパーティーを組むのだろうから、1人あたりの頭割りはそれほど稼げるといったものでも無いのかもしれない。

 消耗品など必要経費も在るだろうしな。無理をしては怪我にも繋がるだろうしな。


 俺は報酬を受け取るとギルドを後にした。

 

 リザの家へと向かう道を進む。

 時刻はだんだんと夜へ向かう頃だ。酒場が客を出迎える準備をしている。

 早くから開いている店には、既に客が入り飲みつぶれている人の姿も見える。

 冒険者の街ベイルは、通常の都市とは違い夜でも火が灯り、人の動きがある街だ。


 冒険者も精鋭以上ともなれば夜活動することも珍しくない。

 夜は魔物が活発に動く時間帯で、危険度は昼の比ではないが、だからこそ獲物を得るには丁度いいという見解も在る。


 そんな冒険者を客として迎えるために、この街の酒場も時間に関係なく営業するというのは珍しくはないのだ。


 リザの家に到着すると、外で誰かがしゃがみ込んで、じっとしているのが見えた。

 近づくとそれはシアンのようだ。


「ただいま」


 俺は驚かせないように気をつけて声を掛ける。


「……お帰りなさい」


 無視されるかと思ったが、そこまで嫌われているようでもなかった。

 人見知りのようだから、慣れるには時間が掛るか。


「何見てるんだ?」


「ん」


 シアンは地面に目を落とし、何かをじっと見ている。

 俺も一緒になってそれを覗きこむ。


 蟻


「ん?蟻?」


「うん」


 蟻の行列だ。

 でも俺の知っている蟻より随分でかい。4センチくらいはある。

 何というかゴロッとしていて重量感もある。

 とはいっても蟻だが。


「これ魔物ではないんだな」


 俺の知っている蟻と比べると、魔物感はあるが。


「瘴気を浴びると魔物化する」


「瘴気?」


「濃い魔素」


 魔素は普通目に見えることはなく感じることも出来ないそうだが、異常に濃度があがると視覚できる状態になることもあるのだとか。

 そのような濃厚な魔素を、瘴気というらしい。

 瘴気は吸い込むと病気になったり、気分が悪くなったりするとも言われており、魔物発生の原因とも考えられているようだ。


「へぇ詳しいな。動物が好きなのか?」


 そういえば職業は獣使いだもんな。


「うん」


「まぁ街なかに魔物はいないか」


「うん?いるよ魔物」


 当然でしょ。と言った様子で答えるシアン。


「いるの?」


 見たことあったかな?あぁ、そういえば荷車を引いてる馬とかも魔獣だった気がする。


「水路とか、裏路地とかでもいる」


「え、そうなのか」


 それは見たこと無いな。


「魔物に詳しいんだ?」


「魔物図鑑で勉強した」


「魔物図鑑?何それ面白そうだな」


 声が少し大きかったのか、ビクリと身を震わせる。驚かせてしまったようだ。

 でもシアンと表情は、どことなく嬉しそうだ。

 そして小さな声で「いいよ」と言ってくれた。


 シアンはこちらを振り向かず、その後もじっと蟻を見続けていた。


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