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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第1章 漂流者
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第3話 闇の中の咆哮

「は~、これでビールがあれば最高なんだけどな~」


 昨日はいろいろあって疲れてしまい、日が落ちる前に寝袋に入ってしまった。

 そのためか夜明け前に目が覚めてしまったのだが、さすがに探索するにも早いだろうと思い朝から温泉に浸かっている。

 この温泉は本当に傷に効くようで、昨日の体の痛みは、朝起きればまったく無くなっていた。

 目覚めもよく、すこぶる調子がよい。


 温泉から上がった俺はガスバーナーで湯を沸かし、カップ麺を朝食に食べた後、コーヒーで一息ついた。


 今ある自分の荷物を確認するべく、リュックの中身をぶちまけた。

 テント 寝袋 ロープ クッカー ナイフ ガスバーナー 小型ガストーチ

 着替えの服 下着 水筒 お茶の入っていたペットボトル インスタントコーヒー

 小型ペンライト 携帯ラジオ 壊れたスマホ 石鹸 菓子 LEDランタン

 眼鏡 雨具 タオル 箸 スプーン フォーク 歯ブラシ リュック


 あと当座の食料を調達できれば、しらばくは何とかなりそうだ。

 ここから他の村まで、どのように行けばいいのかまだわからない。何か手がかりになるようなものがあればいいのだが。


 


>>>>>




 村内に残された家屋内を調査する。

 幾つかは火事で焼けたような場所もあった。

 魔獣か何かの襲撃でも受けたのだろうか。


 俺は何か使えるものは無いかと物色する。

 まるで泥棒のようだが、廃村になって久しいようだし、悪いが俺が生き残るために利用させてもらおう。


 ある家屋からは、干し肉などの保存食がいくつか発見できた。

 全ての家屋を調査するには時間が掛かるので、有用なものを求めて手短に調べていく。

 

 畑は荒れていたが、土を掘ってみると芋を見つけることができた。

 昔じいさんの家で見た、サツマイモの葉に似ていると思い掘ってみれば、似たような芋が出てきたのだ。

 小振りだが当座の食料にするには十分だろう。


 そんな中、俺は畑であるものを見つけた。

 まるで巨人かというほどの巨大な足あとだ。

 この村は巨人の村だったのだろうか?

 2頭持つ鳥がいるくらいの世界なので、何がいても不思議ではない。


 しかし家屋の大きさや、室内の食卓や椅子を見ても、巨人が住んでいたとは思えない。

 どう考えても俺と同じくらいの、俺のよく知る人間サイズの住人だと思われる。


 これは襲撃者の足あとだろうか?


 まだ情報が少ないためなんとも言えないが、もし巨人が攻めてきたのだとすれば、村を捨てることもありそうだ。


 


>>>>>




 ヒワンの実 食材 E級


 ある家屋の軒先に立っていた大木から実がなっているのを発見した。

 魔眼を通して得られる情報も見た目も変わらないため同一種なのだろう。

 

 俺は家屋の調査に一旦区切りをつけ、昼食とするためテントに戻ってきた。

 周辺に落ちていた枯れ枝を集め、ガストーチで火を付ける。

 クッカーに水を張り、手に入れた芋を茹でてみた。


 うん。

 俺の記憶にあるサツマイモより、甘みは少ない気がするが十分食える。

 腹持ちもいいし、これでしばらくは食いつなげそうだ。


 俺は村内で手に入れた品を広げて見た。

 けっこう使えるものが残されていたので助かった。


 ヒワンの実 食材 E級

 赤芋 食材 E級

 岩塩 食材 E級

 干し肉 食品 E級

 乾燥長豆 食材 E級

 オーガ麦 食材 E級

 

 骨の槍 両手槍 F級

 骨の剣 片手剣 F級


 他にも弓やら麦を刈り取る際に使うであろう、大きな鎌などもあったが、使えなさそうなので放置した。

 剣やら槍やらは、ちょっとかっこよさげなので拝借した次第だ。


 なにか巨大な動物の骨から作られているであろう骨の武器は、金属のそれと違いかなり軽い。

 武器として軽いのは駄目そうだが、もしかしたら弱い魔獣ならこれで十分ということもあり得る。

 まぁ実際の運用法は使っている人に聞いてみないとわからないが。


 金属の剣のように刃もないため、武器というよりペーパーナイフのようだ。


 


>>>>>




 俺は食後の運動に魔術の自主練を開始した。


 鹿島仁 漂流者Lv1

 人族 17歳 男性

 スキルポイント 1/1

 特性 魔眼

 スキル 雷魔術


 魔眼の力は、普通に使える。

 となると気になるのは、雷魔術である。

 

 大概こういったものはイメージが重要だったりするのだ。

 漫画、小説、ゲームといった媒体から魔法や魔術の基礎知識は既に会得している。

 イメージ的には、某ハンター的な漫画キャラの技を参考にすることにした。


 2時間経過……


 うーん。

 まったくできる気配がない。


 人差し指と親指の間に紫電が疾走るイメージを持って集中するも、力を入れすぎて手がつってきた。


 想像力が足りないのだろうか。 


 それとも何か根本的に間違っているのだろうか……


 いずれうまく人里に行ければ、魔術師などに教えを請いたいものだ。

 魔術というスキルがある以上、魔術師もきっといるだろう。


 2時間経過……


 やばい挫けそうだ。


 なにも情報がない中で修得するのは無理だったか。

 せめて何かヒントがあれば……


 そういや、スキルポイントってのがあったな。

 これの使い道もまだわかっていない。


 そこでふと思った。

 ポイントはスキルを得るのに使用するのではなく、成長させるために使うのではないか?


 俺は雷魔術にポイントを移行するようにイメージする。 


 スキルポイント 0/1

 スキル 雷魔術(F級)


 おぉう。


 できた。


 そうかスキルポイントは、こうやって使うのか。


 2時間経過……


「ふふふ……できた」


 バチバチと高い音を起て、俺の右手には紫電の閃光が纏われている。 


 俺は目の前の木に指先の狙いを定め、電撃を放った。


 バジンッ


 指先から閃光が迸り木の幹に当たると、男性の腕ほどはあろうかと思われるその幹は、バキバキと音を起てて中程からへし折れた。


 何度も繰り返し練習すると、おおよそ有効射程は4~5メートルということがわかった。

 それ以上となると大きく精度が低下し、威力が不安定になるようだ。

 紫電は蛇のようにその光の線を屈曲させ、蛇行し幹に命中した。

 どうも雷のように見えるも、性質は異なるのかもしれない。

 俺自身が電気などにそう詳しくないため、さらなる検証が必要だが、いまは魔術が使えるということだけで満足している。


 この魔術というやつは、漫画であるような詠唱呪文といったようなものは必要ないようだ。

 どうも念じるというか、集中しイメージすることで使えるようだ。

 よく漫画なんかでありがちな、オーラだとか、チャクラだとか、魔力といったような力を集めて打ち出すイメージである。

 その手の漫画はよく読んでいたので、知識としては十分にあると自負している。

 

 当たりは既に暗くなり始めていた。

 魔術の特訓がおもしろくて、いつのまにか時間が立っていたようだ。

 俺は村で見つけた芋や干し肉で簡単に食事を済ませ、眠りに着いた。




>>>>>




 スマホが使えなくなってしまい、正確な時間がわからなくなってしまったが、おそらくは日の出までまだかなり時間があるだろう。

 俺は寝付きがよく、いつも一度寝ると朝まで起きることは無いのだが唐突に目が覚めた。

 用をたすため、テントから這い出て外にでる。

 周囲に街灯などは無いが、空に浮かぶ月が夜の世界を照らしていた。


 月の灯は思いのほか明るく、街灯がなくとも夜道を歩けるほどだ。


 俺は地球となんら変わらない月をぼんやりと眺め、使えるようになった魔術の事を考えると、異世界に来たんだなぁと改めて感じるのだった。


 草むらで用をたしていると城壁の外、森の方から甲高い音が聞こえた。


 ギャァー

  

 ギィイィーー


 グアァッグアァッグアァッー


 夜の空を鳥達が、飛び立っていく。

 夜行性の鳥だろうか。


 喧しい声が響き、そして暫くして静かになった頃。


 グオォォーーーーーーーーー


 はるか遠くから、夜の闇の中、野獣の咆哮のような声が聞こえた。

 


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