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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第35話 加護持ち

「それにしても俺は何故、雷魔術が使えるのだろう?」


 俺は魔石からスキルや魔術を得ることが出来る。

 それはおそらく持ち主の魔物が所持していた能力が、魔石に宿っているものだと思っている。

 アルドラやリザはこの魔石の事象については知らなかったようなので、もしかしたら俺だけが知る事実なのかもしれない。

 そうなるとかなり貴重な情報となり得るため、今は二人にもこの情報は漏らさないようにと頼んでおいた。


 だがアルドラの闘気の件もある。

 このことを考えると、単純に魔石からスキルを得る。とだけではないような気もする。

 もう少し詳しい情報があれば、スキルを集めるのも楽になりそうではあるが。


 雷魔術だけは最初から使えた。

 使えるように修得されていた。


 魔石から得た訳ではない。

 

 つまりは雷魔術だけ特別なのだ。


 何故だ?


 雷と考えると、あの日の夜が思い出される。


「わしはあまり魔術には詳しい方ではないが、たしか聞いたことがある」


 魔術師たちにとって、生涯を掛けて成し遂げたいと思う偉業には、人それぞれ幾らかあるだろうが1つだけ共通するものが在るという。

 それが新魔術の開発である。

 魔術師が魔術を修得するには、師匠を見つけ教えを請うか、魔導書を得て独自に学ぶかの2つが大抵ではあるが、もう1つ新たな魔術を創造するという方法もある。


 しかし新たな魔術を創造するというのは簡単な話ではなく、熟練の魔術師が長い時を掛けて生み出すものであり、生涯を掛けて行う仕事なのだ。

 もし生み出した魔術が、魔術師業界で認められれば魔術書を作製されることにもなり、歴史に名を残すことにもなる。

 それは魔術師たちにとっても1つの誉れとなるだろう。


「魔術師という人種は知識のみを追い求める偏屈の集まりじゃ。それ以外に欲はなく、地位や名誉を気にするものはおらん。じゃが1つだけ、新たな魔術の創造についてだけは魔術師どもにとっても特別なものがあるようじゃな」


 新たな魔術を生み出すということは、並大抵のことではない。


 だがエルフの老人たちの間では、あることが語られている。




 エルフは魔術の素養があらゆる生命の中でもっとも高い種族。

 多くのものが魔術の扱いに秀でている。


 だがその中でも特別素養の高いものが極稀にいる。

 いや、高いのではない、根本的に違うのだ。


 そういった者たちのことを、老人たちは加護持ちと呼ぶ。




「加護持ちか……」


「わしも詳しいことはわからん。老人どもなら何か知っているかもしれんがな」


 アルドラの言う老人とは、かつてそれぞれエルフの村の村長だったり、族長だったりを経験し、既に現役を退いた長老たちのことのようだ。

 長い時を生きた彼らなら、詳しい情報を得られるかもしれない。


「どうすれば会える?」


「そうじゃな……」


 長老たちは、森の何処かに在るという隠れ里で隠居生活を送っているらしい。

 その場所を知るものは極わずかで、現役の族長であったはずのアルドラでも詳しい場所は知らないそうだ。


「森の中に在るのは間違いない。あとは知ってそうな者に聞いてみるしか無いが、教えてくれるとは思えんのう」


 まぁそうだろうな。

 知っているものは極わずかというのなら、秘匿にしている意味があるのだろう。

 おそらくは保護だと思うが、それならば他人に簡単に情報を与えるような事はしないはずだ。


「その辺りは、おいおい考えることにする。今すぐに、どうこうしなければいけない話ではないしな」




 その後、魔眼とスキルポイントの設定変更能力について検証した。

 魔眼は今更ではあるが、改めて確認すると。


 1、対象のステータスが見える。


 2、暗い場所でも物がよく見える。


 3、亡霊など、普通の人が見えないものが見える。


 などである。


 俺が一番注目しているのは3だ。


 普通の人が見えないものが見える。


 付与魔術では体をオーラのような靄のようなものが纏わり付くのだが、これはいわゆる可視化された魔力であるという。

 強力なものほど見えやすく、弱いものなどであると気づかない人も多いようだ。


 魔物の死体などから俺は微かに立ち上る靄を見えることが在る。感じると言ってもいいのだが、それらもまた魔力であるらしい。

 しかし死体から漏れ出るように現れる魔力は極微量であるため、ほとんどのものは気づくことはない。

 俺はそこから魔石の在処を判断するわけだが、この見えない、または見えづらいものを見る力は、まだまだ発展する余地があるように思える。

 時間があれば訓練しておいたほうがいい能力の1つだろう。




 スキルポイントの変更。


 これにはある程度の集中する時間が必要だ。

 戦闘中でも出来なくはないが、剣で斬り合っている最中、コンマ一秒が生死を分けると言ったような局面では難しいだろう。

 

 剣術スキルを駆使して剣で斬り合っている最中に、一旦距離を置いてポイント変更、魔術で攻撃。と上手く行けば良いが、隙を突かれ急接近した敵にそのまま切り伏せられるといった状況を生み出す可能性もある。

 そう考えると、1人でやれることにはいずれ限界がくる。


 少なくとも敵を引きつけてくれる盾役が必要だ。

 俺のポジションは豊富なスキルと設定変更能力で臨機応変に対応する、遊撃手のようなものがベストのような気がする。


 そう思うと信頼できる仲間が必要なのだが、あのときの冒険者を思い出すと信頼できる仲間を見つけるというのが、どれだけ難しいのかと考えさせられる。

 共に命を預けられる仲間というのは、そう簡単に見つかるようなものではないだろう。


 そう思っていると、アルドラがすごいイイ顔で俺の顔を覗きこんでくる。

 まるで俺の心を読んでいるかのようだ。

 空の酒瓶を片手に、赤ら顔の少年が俺の背中を叩く。

 信頼できる仲間はすぐ側にいたようだ。

 少々酒臭いが。


「よろしく頼む」


「うむ任されよ!」


 アルドラはいい顔で答えた。


 次に俺は、絶え間なくポイントを変更し続けるとどうなるか検証してみた。


 結果、すごく気分が悪くなった。


 まるで頭のなかをシェイクされた様な感覚だ。

 二日酔いにも似た感覚である。

 無理すれば、たて続けにスキルを連続で変更することも可能ではあるが、必要以上にしないほうがいいことがわかった。 




>>>>>




 リザが夕食の用意ができたと、呼びに来てくれた。


「わかった。すぐ戻るよ」


 俺はスキルの検証作業を切り上げ、リザの家へと戻った。


 テーブルには所狭しと料理が並べられ、その中央には幾つもの酒瓶が置かれている。

 今日は一体何人の客がくるんだ?って量である。


「これはすごいご馳走じゃな!」


 アルドラの知る店で、高い肉を見繕って買ってきたのだ。

 湿度や温度を一定に保たれた貯蔵庫で保存され、長期間熟成されることでより旨味が増すという、いわゆる熟成肉である。


 詳しくは俺も知らないが、何時だったかテレビで見たような記憶がある。

 冷凍庫の無い時代に、肉を長期間保存しておくために編み出された保存方法らしい。


「まずは乾杯しようか」


「乾杯ですか?」


「アルドラの復活、家族の再会を祝してかな」


「うむ!」


 高級肉に合わせるために、高いワインも用意した。

 平民の多くが普段買うワインは、壺のような入れ物に入った1本20シリルくらいのものらしいが、俺が買ってきたのは1本400シリルほどの硝子瓶に入った高級品である。

 高いものが旨いかどうかは分からないが、飲み比べてみようかと思う。

 他にも蜂蜜酒や林檎酒なども用意した。


 各々が銅製のマグに酒を注ぎ、今日の集いを祝うのだった。


「あればビールが欲しかったが、この辺りではビールはあまり飲まれないのか?」


 酒屋に置いてある酒の多くはワインである。

 他には蜂蜜酒と林檎酒が幾らかある程度。

 ビール党の俺としては、飲めないと思うと余計に飲みたくなってしまう。

 前に飲んだエールも良かったが、やはりビールが飲みたい。

 これから季節は夏となり、より気温も上がってくるらしい。

 ビールが旨い季節なのだ。どうにかして手に入れたいものだ。


「王国では葡萄と小麦の生産が盛んなので、酒というとワインが主流ですね。蜂蜜酒はエルフが好むので幾らか扱ってるでしょうし、林檎酒は北の方で栽培が盛んなので、そちらから行商人と共に流れてくるのでしょうが」


 酒をあまり飲まないリザも蜂蜜酒は好きらしく、珍しく進んでいるようだ。

 蜂蜜酒は蜂蜜から作られる酒で、白ワインに似た酒である。

 後味が蜂蜜風味といった感じで、なかなか旨い。

 ただ少し冷やして飲んでみたいところだ。

 色々な魔術や魔導具があるのだから、酒を冷やす魔導具があっても良さそうなものだが。


「あるかも知れませんが、大手の工房はギルドなど提携している組織に商品を卸してますから、市場にはあまり出回らないのではないかと思います」


 質の高い魔導具を作れる職人は数が少なく、1つ1つ手作りであるため大量生産ができないそうだ。

 そのため市場では常に品薄なのだとか。


「それにしても、リザはよく勉強しているな。いろんなことに詳しいし」


 リザはそんなことはないと、謙遜して語った。


「いえ、ほとんどが受け売りなんです。私はいろんな人と話す機会がありますから」

 

 この辺りの平民が住む区画、通称『貧民街』には怪我をしても治療院に行けない、病気になっても薬を買えないという人は大勢いるらしい。

 単純に金の問題もあるが、治療院や薬屋には金持ちしか相手しない所も多く在るのだ。

 安い値段で身分に関係なく対応する、という店は少数派のようだ。


 リザはそのような貧しい人相手に薬を格安で提供しているらしい。

 薬師ギルドも貧乏人相手に小銭を稼いでいると思ってか、今のところ表立って文句は言ってこないそうだ。


「なるほど、それでいろんな人との繋がりが出来たわけか」


 それにしても立派な娘だよな。

 金の為ではなく人の為になんて、思ってても実際中々出来るもんじゃない。


「すいません、そんな崇高な思いからじゃないんです。たしかに貧民街の人達はお金はないけど、みんないい人達ばかりなので……」


 リザはそのまま押し黙ってしまった。


 静まり返る場を打ち壊したのはアルドラだった。


「旨い!ジンよ、これ食ってみい。脂身の部分がなんとも甘くて絶妙じゃぞ!」


 ワイルドボアの厚切りステーキを、顎が外れんばかりに大口を開けて齧り付く。

 この人は随分と美味そうに食うものだ。


「せっかくの料理が冷めてしまいますし、いただきましょう」


 今日は家族の再会を祝う宴だ。今は俺も一緒に宴を楽しむことにしよう。  

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