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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第32話 宴会

 俺は金の腕輪に、付与魔術というものをやってもらうことにした。

 とにかく物は試しだ。


「付与する効果は、魔術抵抗上昇でいいんだな?」


「あぁ、頼む」


 俺は装備を預け、外套の修理代3000シリルと腕輪の付与代3000シリルを支払う。

 

「外套は4~5日、付与は2~3日ほど掛かると思う」


「そうか。まぁ一緒に受け取るから、5日後また顔を出す」


「了解した。その時に残りの金を頼む」


「わかった」


 付与術は前金に半額支払い、成功後に残りの金を払うシステムになっているようだ。

 俺はふと疑問が湧いた。

 半額を受け取り、付与術を行ったが失敗したといえば半額ただで丸儲けなのでは?と。

 しかしそれは、あまりうまく行かないらしい。

 エルフのような嘘を見抜ける種族がいるためだ。

 万が一そのようなことをして、悪いうわさが立てばすぐに調査が入るだろう。

 その際に証拠が見つかれば、いや見つからずとも疑いありとみなされれば、罪を問われ奴隷落ちは免れないという。


「そんなリスクを背負うくらいなら、まっとうに商売したほうが気が楽だよ」


 ラドミナは、はははと乾いた笑いを放った。




 ラドミナの店を後にした俺達は、リザの家に向かって歩いていた。


「とりあえず買うもの買ったし、戻るか」


 差し当たって必要な物は、だいたい揃えた気がする。

 後買わなきゃいけないものあったっけ?


「うむ。まだあるぞ重要なものが」




>>>>>




「ただいま戻りましたー」


「ジンさん、リザお帰りなさい」


 リザの家に戻ると、ミラが温かく出迎えてくれた。

 うん。お帰りなさいって出迎えてくれるのって、なんかいいな。

 俺は両親を子供の頃に無くし、成人するまでは祖父母に育てられた。

 その祖父母も満足に恩返しする間もなく、亡くしてしまった。

 それ以来、俺は1人暮らしをしていたので「お帰りなさい」なんて言われたのは、随分と久しぶりなのだ。


「どうでしたか?」


「ええ、冒険者の登録も無事終わりましたし、差し当たって必要な物も買い揃えてきました。明日からはしばらくギルドに通って講習の毎日になりそうです」


 ミラさんはそうですかと、俺がベイルでの生活を順調に始められたことを喜んでくれた。

 穏やかで優しく、母親ってこんな感じだったっけ?と遠い記憶が懐かしく感じる。

 まぁミラさんは見た目で言えば、20代後半と言った雰囲気で、お母さんと言うより、お姉さんと言ったほうが正しいかもしれないが。


 ふと、ミラさんの視線が俺の背後に居る人物へと移る。

 その小柄な少年は、俺の影に隠れるように立っていたので、見えなかったのだろう。


「あら?お客様ですか?」




 俺達はリビングへ通され、それぞれの席についた。


「まさか?本当に?一体どうゆうことですか?」


 ミラの困惑はもっともな話である。

 それを聞きたいのは、こちらの方なのだ。


「本当かどうかは、お前が一番わかっているのではないか?」


 アルドラは、ふふんと踏ん反り返る。

 なぜ横柄な態度なのかはわからない。


 ミラの値踏みするような視線が、アルドラを射抜く。


 はぁ、と何か悟ったような、呆れたような様子で彼女は口を開いた。


「叔父様は本当に常識なんて通用しない人なんですね……」


「ははははっ、いまさらじゃのう」


 ミラは驚いてはいるが、その顔はアルドラの訪問を喜んでいるように見えた。 


 


 アルドラのこんな状態になった経緯を離すとミラは再度驚いた。

 驚いたものの、叔父様だし……と結局納得してくれた。

 

「ミラさん、これを預かってください」


 俺は懐から金貨10枚を差し出した。

 もっと渡してもいいのだが、当分は大丈夫だろう。

 あまり大金を家に置いておいても物騒だろうしな。

 使わない分はギルドの金庫に預けておいたほうが安全だ。


「ジン様なにを?」


 驚いて声を上げたのはリザだった。


「うん。しばらく厄介になるんだし、家賃代わりにな。いろいろ迷惑掛けることもあるだろうし」


 1人暮らしをしていたものの、俺は大した料理は出来ない。

 カレーだとか野菜炒めくらいなら可能だが、この街にカレールーが売ってるとは思えない。

 となると食事に関しても、甘えることになるかと思う。

 1人だけ外に食事にというのも、逆に気を使わせてしまうだろう。

 多めに金を預けて、頼むのが一番いい気がする。


「多すぎます!平民の給与2年分はありますよ!?」


 え?そうなのか。

 金貨5枚で約1年分かぁ。


 話によると、この国の暦は1年12ヶ月約365日と、まるで謀ったかのように地球とそっくりだ。

 覚えやすくていいので、不満はない。


「俺のことを家族だと思ってくれるなら預かって欲しい。みんなのことを信用しているから預けるんだ」


 ここにいるみんなは既に、俺が異世界からの漂流者だということは話してある。

 そんな怪しげな俺を信用して、側に置いてくれようとするなら何かしら恩を返していきたい。

 金で解決しようという気はないが、あって困るものでもないし余裕があることはいいことだろう。


「そこまで言われては、受け取るしかありませんね」


 ミラさんはやれやれといった様子で、俺の気持ちを受け取ってくれた。


「何か必要な物があったら、どんどん使っちゃってください。俺はほとんど料理ができないので、できればお任せしたいのですが、この国の料理や文化には興味があります。もし何かお勧めの物がありましたら値が張る物でもかまいませんので、手に入れてください」


 ミラとリザはお互いに驚いた顔を見せたが、すぐ納得してくれて俺の願いを聞き入ってくれた。


「わかりました。そうですねジン様は異国人なのですものね、色々なものに興味を持つのは当然のことだと思います。とりあえず今日はあるものを使って、エルフの家庭料理を堪能していただきましょう」


 エルフにも住む地域や氏族によって、食文化は異なるらしい。

 俺には菜食主義のイメージが強いが、大森林に住む彼らハントフィールドは狩猟民族らしく、野菜も食べるが猟をして肉も食べるそうだ。

 人間のように商売で狩ることは少ないので、その日食べる分だけを得るのが通常だという。


「あ、そうだ。コレ使えますかね?」




 リビングのテーブルの上には肉、肉、肉、肉、肉。

 多種多様な生肉がドドンと並べられた。

 更にはワインやら蜂蜜酒やらチーズやら生ハム、塩漬け肉、ソーセージ。

 いったい今日の宴会は何人の客が来るのか?とツッコミを入れたくなるほどの大量の食料が出現した。


「……これは?」


「……えーっと」


「わははははは」


 アルドラの笑い声が静かなリビングに響く。


 冒険者の革鞄は優秀であった。

 大量の衣類や武器等を収納しても、重さはほとんど感じられず、大きさに寄ってはまとめて収納できるので、かなりの物量を持ち運べる。

 実際性能を聞いたものの、実証実験という名目のもとに色々気になる食材を買い込んできたのだ。


 腹が減っていたこともあってか、少々買い過ぎのような気もしないでもない。


「必要以上に買いすぎても、無駄にするだけですよ?」


 ミラの窘めるような視線が痛い。


「すいません」


 アルドラが肉肉騒ぐから……

 彼の性格もだんだんわかってきた。

 彼は子供なのだ。

 興味あるものに突き進み、あまりこらえ性がないようだ。

 我慢という言葉を知らないのかもしれない。


 まぁ乗っかった俺も悪いのだが。


 肉屋に行くときは、腹一杯の時に行くのがいいかもしれんな。


「でも日持ちするものが多いようなので、傷みの早いものは今日の夕飯にして、他は地下室に入れてしまいましょう」


 地下室?

 見たところ、それらしき入り口は見当たらなかったが。


 リビングのテーブルを動かして、敷いてある絨毯をめくると木板の床に切れ目が入っているのがわかった。

 ミラは食器棚の引き出しから、金属の取っ手を取り出し、床に空いた穴へ突き刺した。

 

 ガゴッ


 鈍い音ともに重い扉が開くように、地下室へ入り口が開かれる。

 金属の取っ手を上へと持ち上げると、下へと続く急階段が現れた。


「すごいですね。こんなに広い地下室があるなんて」


 広さ8帖はあるだろうか。

 青緑色の石材で作られた地下室である。

 中はひんやりと涼しい。

 これなら食材の保存にも使えそうだ。


「このような部屋のある家はベイルでは珍しくないですよ。もしものときは避難所にもなるんです」


 もしも、というのはもちろん魔物の異常発生のことだろう。

 数年に1回ほどのペースで起きるとされているが、詳しい発生原因はわかっておらず、事前の対処が難しいらしい。

 それでも森には獣人やエルフが住み、冒険者たちも頻繁に森へ入るため、近年では前兆のようなものを発見できるようになってきた。

 かつてはベイルの城壁まで魔物が雪崩れ込んでくることもあったらしいが、それもここしばらくは起きていないらしい。


「ベイルの街なかまで魔物が侵入したという事は今までないそうですから、ここも避難所として使われたことは無いんでしょうけどね」  




 地下室の周囲に木枠が施され、そこに木板を設置した簡素な棚。

 俺はそこへ買ってきた食材を収納する。

 収納するスペースにはだいぶ余裕がある。

 主に日持ちするような保存食が幾らか置いてある程度だ。


 俺達は地下室から外へ出て、扉を戻した。


「なにか必要な物があったら、自由に使ってください。扉の鍵となる取っ手はいつもここにありますので」


 自分の家と思って自由にしてくれて良いと言われた。

 俺はその言葉を有り難く受け入れる。


「夕食には少し時間がありますから、部屋へ荷物を運んでいらっしゃったらどうですか?その間に、湯を沸かしておきますので汗を流されたらいいでしょう」


 アルドラに先に湯を勧めたが、わし魔力体なので大丈夫だ。と言われた。

 単に面倒くさいだけなんじゃないか?という疑問が湧いたが、無理にやらせるつもりもないので、まぁいいだろう。


「ありがとうございます。お願いします」


 


「もしよろしければ、下へ降りる前にシアンへ声を掛けて貰えませんか?部屋にいると思いますので」


「わかりました」 

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