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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第233話 補給

 神殿のオーグルを制圧すると、魔石の回収を済ませたのち直ぐに移動を再開した。


 戦闘による体力と魔力の消耗を考えると休息を取りたいところだが、死屍累々となったこの場所ではゆっくりと疲れを癒すというのも難しいか。


「あいつら逃げるついでに結界を破壊していきやがったな」


 レドが床に散らばった何かの残骸を蹴り飛ばして呟いた。周囲の状況、埃の具合を見れば、最近に壊されたものだというのは難しくない判断だ。


「もう少しだけ頑張ろー。この通路を抜けた先に広場があるから、そのあたりなら休めそうだよ」


 できれば距離を稼ぎたいところだが、今の状態を考えると無理をするのは得策ではない。少し長めの休息を取った方が良いだろう。探索のリーダーはリディルなので進言しておくとするか。


「通路にも魔物がいるねー。少し距離があるから襲われないかもしれないけど、警戒は解かないようにー。もし緊急事態になっても、横の路地には逃げないでねー。ヤバめの罠があるから」


 

 比較的安全と思われる場所に腰を落ち着け休息をとることにした。


 広域探知を使ってみるが、周囲にいるのは反応の小さな存在のみ。とはいえ再びギランたちの妨害がないとは言えないので警戒はしておく。


「私の同胞が、まさかあのような蛮行をするとは……言葉にもなりません」


 フル―ルは酷く落胆した様子だ。


「まぁ、巫女様の責任ではないでしょう。確かにあれほど強引に来るとは少々驚きましたが」


 俺は兜を外しながら彼女の様子に答えた。


 単なる無頼漢なら正当防衛ってことで斬り捨てるだけで済ませるところだが、彼らも巫女の同胞ということを考えるとちょっと対応に難しいところはある。


 できれば穏便に済ませたいところなんだが。


「ジンが相手をしてやれば済む話ではないのか?」


 アルドラがなんてことはない話だと答える。


「あー、まぁ、そうなのか」


 確かに彼は勝負を望んでいたようだし、それを受けてやれば納得してくれるのかな。いや、それで俺が勝利したとして、大人しく帰ってくれるのだろうか。彼らの目的が巫女の奪取なら、俺が勝負を受けようが受けまいがフルールがいる限り諦めないんじゃ……


 やっぱり再起不能にまでボコるしかないんじゃないか。


 戦闘衣も脱いで水魔術の洗浄で汚れを洗い流しておくことにした。魔物の返り血の他諸々で酷い有様だったからな。


「ジンさんも少し休憩してください」


 地べたに座っていると背後から頭を掴まれ、そのまま後ろへと引き込まれる。


 後頭部に感じる柔らかな感触。頭の上からミラさんの声がする。


「こんなに体中に傷を作って……治療が終わるまで動くの禁止ですからね」


「そんな大げさにしなくても大丈夫だと思いますよ」


 乱戦で攻撃をかなり受けたので、防具の下には打撲などの軽度の傷が無数にあった。それでも闘気を併用していたので、傷の大部分は痛みも少なく放置していても問題ないほど回復していると思う。


「休めるときに休んで置くよう言ったのは誰でしたかしら」


 ミラさんはそういって膝枕へと誘導した。俺を掴む手にはしっかりと力が込められている。どうにも逃がしてはくれそうにないので、観念して俺はそのまま治療を受け入れることにした。


 リザは風魔術で洗った装備を乾かしてくれている。皆も食事の用意を始めた。


 アルドラも座って干し肉を齧りながら海酒を煽っているので、周囲への警戒は最低レベルで問題ないということなのだろう。普通なら任務中に酒などと怒られそうなところだが、アルドラの体では酔って正気を失うということがないので問題は無い。彼にしてみれば酔う楽しみがないということなので、少し可哀そうなことではあるのだが。


「リザも適当なところで、手を休めてくれ」


「はい。こちらも直ぐに終わりますので」

 


 冒険者用の携帯食(ビスケット)で腹を満たす。ドライフルーツを混ぜた乾パンのようなもので種類はいくつかあるそうだが、これはその中でも味としては悪くない方らしい。


 とはいえ、楽しんで食事をするというほどの物でもないので、ただ無言で口に運んだ。ブルーノは冷えた体を温めるため、携帯食と共に白湯を胃に流し込んでいる。


 動いていればそうでもないのだろうが、こうしてじっとしていると肌に寒さを感じるのだ。俺は耐性のお陰で問題ないが、更に地下へ降ればより冷気は強くなる。そろそろ耐寒装備を準備したほうがいいかもしれない。


「んふぅ~。何ですか、これは? 初めて食べました……凄い甘くて、とろける……食べたことのない食感です。こんなに甘くて凄い美味しい食べ物があったなんて、感動ですっ……」


 食後のデザートにと巫女様にプリンを出したところ大絶賛を受けた。甘味好きそうだから、大丈夫だとは思ってたけど、予想以上だった。


「ふふふ、お気に召されたようで光栄です。ジンさんに教えてもらって作ってみたんですが、上手くできたでしょうか」


「そうなんですか、こんなに甘くて美味しいもの初めてです。凄いです、凄すぎですっ」


 任務が始まった当初からフルールにはどこか緊張感があり、常に強張った表情をしていた(それも当然なのだろうが)その緊張も今や完全に崩れ去っているようだ。


 とろけるというより、フルールの顔がとろけている。


 物は試しとミラさんに頼んで作って貰ったプリンだったが余程気に入ってもらったようだ。


「ジン様の考案される料理は美味なるものばかりです」


「いや、俺が考案したわけじゃないけどね」


「甘さ控えめにして正解でしたね。いくらでも食べられそうです」


 リザも喜んでいるようだし、作成に手を貸してくれたミラさんにも好評のようだ。


 プリンはロゼリアから貰った氷冷箱で試作した。たぶん昔見たテレビか何かで、何となく記憶にあったレシピをミラさんに伝えて作って貰ったというわけだ。


 まぁ、口だけ出してミラさんに丸投げした形になってしまったので、無責任といえばそれまでなのだが、氷冷箱の性能を調べる遊びみたいなものということで実験したわけだ。ミラさんも楽しんでくれたようなので問題はないはず。

お読みいただき、ありがとうございます!

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