表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
242/274

第229話 青の神殿

 フルールの氷魔術で砂地が凍らされていく。見る間に幅1mほどの氷の橋が出来上がった。


 彼女には氷精霊の加護があるのだ。これくらいの芸当は造作もないことなのだろう。


「流石は巫女といったところかな」


 巫女モードのフルールにあまり馴れ馴れしくしても彼女を困らせるだけだろう。俺も一冒険者として対応することにしよう。


「恐れ入ります。急がせて申し訳ないですが、氷が融けてしまう前に移動を始めましょう」


「わかった」


 他人行儀なフルールに横目で視線を送りつつ、俺たちは彼女の指示に従った。


 砂地の洞窟へは彼女を先頭にして進んだ。彼女に追従し探知スキルにて周囲の状況は常に確認している。異変があればすぐに対処できるだろう。


 柔らかい砂地だが凍らせれば普通の地面と変わりはない。凍った地面が滑りやすいのは、氷結したものが溶けかかっている状態のときだ。魔術で氷結させた地面は簡単には解凍されることはない。すぐに渡ってしまえば問題はなかった。


 蛇行した洞窟は緩やかな上り下りを繰り返し、何度か道が分かれた場所もあったがレイシからの情報があるので迷うことは無かった。


「ありゃ、なんだ?」


 レドが指差した方向に、壁に埋め込まれた黄緑の光を放つ発光体を発見した。洞窟の岩壁を抉り、物を置けるような窪みがあるのだ。


 発光体は球体に近く、網目のような模様が見える。まるで光るメロンだ。


 結界球 魔導具 E級


「あれが結界の要石なんですかね」

 

 魔眼で見たところ結界の魔導具には違いないが、どのような作用なのかはわからない。結界とはいっても種類は色々あるらしいからな。


 基本的な結界と言うのは、要石と呼ばれる特別な石を正方形に並べるものらしいんだけど。


「あんまり強力な物でもないみたいだし、周囲に影響を及ぼす類の奴じゃないかなー」


 光るメロンは他にも複数発見できた。洞窟内にいくつもあるようだ。



 洞窟を抜けると今度は明らかな人工的な場所に辿り着いた。


 青い石を加工し作られた煉瓦を積み重ねた建築物。それは神殿と呼ぶに相応しい荘厳さを放っていた。洞窟の先、開かれたアーチを潜った先に広がるのは、敷き詰められた石床に無数に連なる巨大な青い柱。


 高い天井を見上げると、ぼんやりと光る球体を確認した。神殿の中にも光るメロンはあるようだ。洞窟で見かけたものよりも大きく、色合いや形状に差異がある。等級も上がっているので、より強力な物に違いないだろう。鎖に吊るされた光るメロンがいくつも連なり、まるで豪華なシャンデリアといった具合だった。暗黒に包まれた神殿の丁度良い灯火となっている。


 神殿を作りだす物質の全ては、同種の素材から生み出された物のようだ。青い輝きは宝石と呼んでも差し支えない美しさがある。人族の貴族がここに立ち寄ることができるなら、自分の城にすると宣うほどであろう。


 

「少し休憩にしませんか。先は長いですから、今から慌てることもないでしょう」


 隊員たちの体力には十分余力があるものの、フルールを見ると疲労の色が窺える。今のうちに休ませた方が良いだろう。精霊の加護があるとはいえ、洞窟で魔術を使い過ぎたのか魔力を消耗したようだ。


「スープか何か、温かい物でも用意しますね。この辺りは随分と冷えるようですし」


 俺の意図を組んでくれたのか、ミラさんはそういって準備に取り掛かった。キースとブルーノが手伝うようなので、そちらは彼らに任せることにしよう。


「確かに遺跡に入る前と比べると、肌寒くなってきた気がしますね」


 リザが自らの体を擦って答えた。


「青の回廊は地下へ降るたびに冷気が強くなります。海人族でさえ凍えるほどだと聞いておりますので、人族には厳しい環境かもしれません」


 フルールは寒さに強い海人族なので問題ないらしい。精霊の加護もあるので、耐性もあるはずだ。


「なるほど。まぁ、今回は相応に準備をしてきたので問題はないでしょう」


 俺に至っては氷耐性もあるしな。レイシから事前に情報は得ているので、そのあたりの対策も十分にしてある。


「冒険者は過酷な土地での活動には慣れておるからのう。多少寒いくらいは問題になるまい。道なき道を進み、並みの者が行けぬ場所へと到達するのが真の冒険者である」


 溶岩の川を渡り、一呼吸で死に至る底なしの毒沼を進む。それに比べれば寒いくらいはどうということは無い。


 そういって笑うアルドラだったが、他の者はあまり同調していないようだった。これがS級とそれ以外の差なのだろうか。まぁ、冒険者でS級まで行きつく様な奴はどこかおかしい奴だと聞いた覚えがある。


 単純にレベルの事を考えても、命を掛けた様な戦いを延々と繰り返すことになるのだから、S級と呼ばれるような者たちは変態だと言われてもしかたのないような連中なのかもしれないな。


「ジン様、何かありましたか?」


 俺の表情の変化をつぶさに感じ取ったのか、リザが声を掛けてきた。


 こうした休憩中でも広範囲探知は常にと言っていいほどの頻度で使っている。客はどうやら俺たちが入ってきた入口とは逆方向から来たようだ。魔力の移動速度を見ると、人が歩く様なゆっくりとした速度で迷いなくこちらへと向かってきている。


 結界は問題なく機能している。周囲に異変は感じられない。何者か。魔物ではないようだが。


「みんな休憩は一旦中止。お客さんみたいだ」


お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ、評価よろしくお願いします(=゜ω゜)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ