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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第1章 漂流者
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第23話 冒険者の街を目指して4

 俺は探知にポイントを振り直し周囲を警戒した。


「……なに?」


 俺の探知の範囲に反応する存在を確認する。

 俺は素早くポイントを振り直し、隠蔽を付与する。


「うぐぐぐ……やりやがったな……畜生め……ぶっ殺す、絶対にお前はぶっ殺すッ!!」


 悶絶していた剣士は回復したのか、幽鬼のようにゆらりと立ち上がり絶叫した。


「おい、お前!死にたくなかったら静かにしてろ!ごちゃごちゃうるさい!」


 一瞬何を言われたのか理解出来なかった剣士の男は、呆気に取られたような表情を見せるも、すぐに感情を取り戻し激昂した。


「ごるあぁあああ!?な……ッ」


 剣士の男が怒りの叫び声を最後まで上げることは出来なかった。

 男の背後に突如現れた魔物が、男の上半身を食いちぎったのだ。

 後に残されたのは、嘗て剣士だった男の下半身である。


 一瞬の出来事だった。

 その一瞬で上半身は消失し、ゴポリと鮮血が地面に溢れる。

 辺りに血の匂いが充満した。


「!!」


「いやあああぁぁぁぁぁーーーッ!?」


 俺は思わず声を上げそうになるのを必至に押し殺す。

 俺は身を低く屈めて、気配を消すよう務めた。


 グラットン 魔獣Lv18


 それは牛よりもデカイ狼のような魔獣であった。

 ただ頭と体の比率がおかしく、普通の狼に比べると頭が異様にでかい。

 まるでデフォルメされたように頭が巨大化している。

 焦茶色のゴワゴワした毛皮に包まれた、巨大な獣だ。


「グルルアアァ……」


 魔獣は再び大きな口を開くと、剣士だった物の残りを平らげた。


 バリバリバリッ……ゴクンッ


 ゆらゆらと頭を振り、威圧的に周囲を警戒する魔獣。

 

 あまりの唐突さに理解が追いつかない。

 だが俺にしてみれば、この世界はいつだってありえないことばかりだった。


 そうだ。


 落ち着いて行動すれば大丈夫だ。

 

 ともかくリザだけは、守らないと。


 リザが教えてくれなかったら危なかった。

 万全を期していれば分からないが、動けないリザと魔力を大きく失っている俺ではリスクが高過ぎる。


「あああああああああッッ!?」


 目の前に迫る巨大な魔獣に思わず悲鳴を上げる魔術師。


 パニック状態なのは一目瞭然だった。


 バクンッ


 魔獣はエサを見つけたと言わんばかりに飛びつき、一飲にしてしまった。

 それは魔術師が断末魔の叫びを、上げる間もないほどに。

 

 魔獣はスンスンと鼻を鳴らし、あたりを彷徨く。

 時折立ち止まり、耳だけをヒクヒク動かし、まるで何かを探っているようだ。

 どうやら警戒しているのではなく、エサを探しているようにも見える。

 もしかしてコイツ目が悪いのかもしれない。

  

 弓の女の近くに行ってフゴフゴ匂いを嗅ぐが、まだ気絶しているようで、起き上がる気配はない。

 魔獣も興味を無くし、立ち去ろうと歩みだした。


「あああぁぁぁ!!ま、魔物ォーー!?」


 薬師が最悪のタイミングで目を覚ました。




>>>>>




 ガタゴトガタゴト


「……ん」


「お、気がついたか?」


「……あれ?ここは?」


 ロバの様な、小さな馬が荷車を引いている。

 御者には小さな老人が座っていた。


 ダバ 魔獣Lv4


 ロバじゃなくで駄馬だった。


 荷台には藁束が山のように積まれている。


「ああ、街道を通りがかった所を乗せてもらったんだ」


 俺は荷車の脇を歩く。

 荷車には体調の悪いリザと手荷物を乗せてもらっている。


 状態:虚脱


 どうやらまだ回復には時間が掛るようだ。

 

 リザは俺が歩いているのを見て、自分も歩こうと立ち上がろうとする。

 俺はそれに気づいて、静止させた。


「まだ回復してないだろ。ゆっくり休んどけ」


 すでに一度キュアポーションを飲ませている。

 それでも回復していないことを見ると、この虚脱状態はキュアポーションでは回復しないのだろう。


「あ、でも……」


「奥さんや、いまは旦那さんの言うことを素直に聞くべきじゃないかの?あなたの体を気遣って言っておるのじゃからな」


「お、奥さん……」


 リザの頬が朱色に染まる。


「すいません。お言葉に甘えさせて頂きます」


「うむ、困ったときはお互い様じゃ」


 老人はそういうと、にかッと笑った。




 俺はリザに事の顛末を話した。

 

 魔獣はひとしきりその場を蹂躙した後、姿を消した。 


「またジン様に助けられました……」


「いや、俺が軽率だった。まさか一服もられるとは」


 俺の迂闊さがリザを危険に晒してしまった。

 何も無かったからよかったものの、これで考えうる最悪の事があったならと想像すると……


「いいえ、油断していたのは私も同じなので、ジン様自分を責めないでください」


「……すまん」


 


「今回のこと冒険者ギルドに報告したほうが良さそうですね」


「犯罪を取り締まるのも、冒険者ギルドの仕事なのか?」


「いえ、ギルド員のトラブルを解決するのもギルドの仕事の1つなのです。今回は魔獣の介入もありますし、報告したほうが無難でしょう」

 

 魔物に対応するのは、全面的に冒険者ギルドの仕事らしい。

 

 空がゆっくりと赤く染まっていく。

 もうすぐ日が落ちるのだろう。


「……そういえば、もう1人いた者は?」


 リザが思い出したかのように呟いた。

 俺は荷車の後方に目配せをする。

 リザは藁の中に紛れて体育座りで縮こまる人を見つけた。 


 彼女はもはや逃げる気力もなく、身動き一つせず縮こまっている。

 このまま街まで連れて行き衛兵に引き渡そうと思う。


「見えてきたぞ」


「おぉ……」


 視界の遠くに映るのは、平原にそびえ立つ巨大な城壁だった。

 

「これが冒険者の街 ベイルか」


 ザッハカーク大森林に相対する様に作れらた、冒険者が作った冒険者たちの街。

 ルタリア王国に置いての冒険者の本拠地。

 それがこの自由都市ベイルだ。




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― 新着の感想 ―
[一言] 平和ボケした調子こいたガキの物語か。しかも死に損ない
2019/11/23 09:23 退会済み
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