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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第215話 魔力制御の検証

 拠点の屋敷に戻って来たのは朝方のことだった。


 居間でうたた寝していたリザを起こし、軽く汗を流してから寝台に向かう。とはいえ、すぐに日が昇ることになったので、あまり眠ることはできなかったが。


 日が昇ってから本部に出向き、シフォンさんにウィリアム氏のことを伝えた。前に手に入れた財宝の処分を検討してもらおう。


 その後、午前中は調査隊全員で次の遺跡探索に向けた準備に取り掛かった。休憩時間にはシダさんに頼まれた素材を届けておいた。頼まれた分量とは別に自分用にも確保してあるので、後で何か作ってみようと思う。


 

「兄様、何されてるのですか?」


 そっと近づいてきたシアンが、庭先で寝転がる俺を覗き込んだ。確か今日はリザと一緒に海岸へと、薬草摘みに出かけると言っていたと思ったが。


「まぁ、日向ぼっこかな」


 涼しい風が緩やかに吹く中、太陽を全身に浴びるのは気持ちがいいものだ。新たに手に入れた光合成は傷を癒すスキルのようだが、魔力の回復にも効果があるようだな。


 それに昨日はあまり寝れなかったから、この日差しは余計に眠気を誘う。


「私もご一緒してもいいですか?」


「ああ、もちろん」


 広げた腕の中に納まるシアン。小柄な彼女なら何時間腕枕していても苦にはならない。体を預けて小さく丸くなるシアンは、まるで小動物のようだ。


 レヴィア諸島に吹く冷たい風は、更に北にあるという年中凍った島から届けられるのだという。レヴィア諸島が北の地にあるということも1つあるが、その島の存在がこの辺りの海流に冷気をもたらしているらしいのだ。

 

 冷気と共に微小な生物も一緒に海流に乗ってくるので、そのお陰でレヴィア諸島は海の幸は非常に豊かなのだという。


 

 体が揺り動かされるのを感じ目を覚ます。


「二人とも何してるんですか」

 

 あまりの気持ちよさに本格的に寝てしまっていたのか。


「ああ、悪い。ちょっと疲れてな」


 体を起こして大きく伸びをした。


「ジン様も休むなら、お部屋でお願いします。こんな場所では体を壊しますよ」


「そうだな。でも、もう大丈夫だ」


「もう、私もご一緒したいのに……」


「ん? 何か言ったか?」


「いえ、何でもありません」


 寄りかかるシアンが寝ぼけ眼で目を覚ました。


「シアンも、そろそろ出かけますよ。準備なさい」


「……はぁい」


 リザの言葉に眠そうな声で返事をした。のそりと起き上がり、俺の体にもたれかかる。余程気持ちよかったのか、まだ眠気は取れていないらしい。


「ああ、そうだった。昨晩知り合いから魔法薬のレシピ集を貰ったんだ。リザに預けておくよ」


 禁断の魔法薬 エリオール・ライオネット著 魔法薬設計図集 B級

 

「古い物のようですが、どうされたんですか?」


 リザに預けたのは年代物の羊皮紙の書物。古いが外装はしっかりしている。書物自体に掛かる手間と経費を考えても、相当に高級な部類に入るものだろう。


「知り合いがもう必要ないといって譲ってくれたんだ。真偽のほどもわからない怪しげな魔法薬らしいけど、何かの役に立つかもしれないからな」


 処分すると言っていたので、それならばと貰って来たのだ。ウィリアム氏の研究は船の中で行われていたらしく、資料も船の中にあった。おそらく教会の目を逃れるためだろう。海に出てしまえば、とやかくいう者はいないだろうしな。


「そうなんですか。後で目を通しておきますね」


「ああ、まぁ、あまり期待しない方がいいかもしれんがな」


 B級の本が何をもってしてB級となっているかは、いまいちわからないが稀少であることは間違いないと思う。情報として持っておくのは悪くない。


「兄様、私にはないのですか?」


 シアンが俺の腕を取り、おねだりしてくる。可愛い。


「シアン、みっともないですよ」


 彼女の行動にリザが窘める。


「そうだな。シアンには、これをやろう」


 不死鳥の卵 素材 B級


 握りこぶしくらいの大きさの卵。オレンジと黄色のマーブル模様で、触れると仄かに温かい。


「温かい。生きてるんですね」


「たぶんな。上手くすれば雛が生まれるかもしれん。育ててみるか?」


「はい。大事にします!」


 不死鳥の救出に於ける謝礼は正直ちょっと悩んだ。改めて確認するとウィリアム氏は本当に何でもいいと言ってくれたし。もちろん限度はあるだろうが、そこは空気の読める日本人である。ウィリアム氏の懐もあまり傷まず、なおかつ俺の利益に繋がるものを考えたい。


 成功を収めた貿易商と仲良くなっておくという打算も少なからずあるが、それはいいか。不死鳥2匹の価値6000万の一割600万シリルでも、すぐには無理だが用意してくれるといってくれたが、俺が指定したのは生まれたばかりの不死鳥の卵だった。


 不死鳥は繁殖が難しく飼育下で卵を産んだという報告は数例しかないという。成体の価値は言わずもがな、卵にもそれに次ぐ価値があるという。育てる難しさはあるようだが魔獣であり丈夫な種族であるため、普通の動物を育てるよりは楽なのかなと思っている。


 卵を選んだ理由は単純に面白そうだからだ。まぁ、勘という奴だ。魔物でも幼体から生育すると懐きやすいとされるし、ウィリアム氏の不死鳥を見ると魔物の中でも大人しい種なのだろう。それならば扱いやすい。調教はシアンに任せてもいいしな。


 肉、羽、血、涙と生み出す素材の価値はかなり高額なものになるという。まぁ、肉にすればそれまでだが。



 リザとシアンはアルドラを連れて海岸へと素材採取に向かった。


 午後からの予定はないので、魔力制御の検証をやっておこう。屋敷の居間に移動し、この前の探索で拾っておいたミスラ鉱石を取り出した。それを創造、掘削、溶解で細工していく。


 魔力制御があれば繊細な操作コントロールが可能になる。不純物をできるだけ排除し、金属部分を圧縮するイメージだ。


 霊銀の鏃 部品パーツ F級


 掘削である程度まで削り、創造でおおまかに形作る。そして溶解で細部を調整。指先を使って調整すると、研磨したような鋭さを出すことが可能だ。

 

 しかし、出来上がった品はどれもF級ばかり。そもそも素材に不純物が多いので、それを排除しないと難しいのかもしれない。スキルだけで仕上げるには限度があるな。


 適当な長さに切り揃えた枝を取り出し、ナイフで削り出していく。木工スキルS級が利いているのか、加工は順調だ。どれくらいの効果があるのかは、いまいちわかりづらいが。


 削り出すのに慣れていなくて、少し手を切ってしまったが光魔術 治癒ヒーリングで治した。ユニコーンの魔石から修得した俺が初めて使えるようになった光系統だ。


 僅かな傷を治すのに消耗する魔力量を考えると、やはり光魔術と俺自身の相性は良い方ではない気がする。とはいえ傷を癒す手段が増えたのは僥倖といったところだろう。


 火で炙り、細部の歪みを調整する。霊銀の鏃を取り付け、鳥の矢羽根を接着させると完成だ。


 霊銀ミスリルの矢 矢弾 F級


 試しに作ったものなので、こんなものか。とはいえ、案外簡単に作れるな。木材を吟味したり、乾燥具合を調節したり、鏃の質をあげたりすれば、おそらく等級を上げることも可能だろう。


 ミスリルは魔力との親和性が高いので、付与術を行う際には有効な素材だと聞いた。雷付与、闇付与をまとわせた矢弾というのも面白いな。


 ミスリルボルト 矢弾 F級


 サイズを調整してシアン用のボルトも作成しておこう。魔術の使えないシアンではどの程度有効かはわからないがな。


 霊銀のスローイングナイフ 短剣 F級


 石を加工し、刃も柄も一体となった形状の投擲用ナイフ。始めて作ったにしては、なかなか上手い具合にいったんじゃないか。ただ、ちゃんと飛んでいくかは試してみないとわからないが。まぁ、見様見真似で作ったものなので、飛ばなくても仕方ないけどな。 


 検証を兼ねての作業に熱が入り、思いのほか大量に作成してしまった。魔力を消耗し過ぎたか。マナポーションも飲んで置こう。


 合成魔術も試してみたいしな。魔力制御によって繊細な魔力の操作が可能になった。今なら新たな魔術なんかも生み出せるんじゃないだろうか。


 例えば獣狼族の魔人が使っていた移動系スキル 縮地。雷のように素早く移動する魔術があれば、戦闘における優位性は絶対的だ。


 雷付与を体にまとい。自分自身が雷になるようにイメージする。先ほどの加工で魔力を消耗し過ぎたのか、些か残量が心もとないな。


 

「……ジンさん、大丈夫ですか?」


 屋敷に帰ってきたミラさんから声が掛かる。魔力の消耗から居間のソファで横になっていたのを見つかってしまった。


「ええ、ちょっと疲れて休憩してただけですから」


 居間には作成した矢束、ナイフ、その他の失敗した残骸が散乱していた。


「ずいぶんと熱心に研究されていたようですね」


 ミラさんの視線が部屋を見渡し、呆れたように溜め息を吐く。


「い、いや、すいません。大丈夫ですよ。ちゃんと片づけますから」


 ミラさんは本部の方で手伝いをしていたのだったな。帰ってきたということは任務は終わったのだろう。


「ふふふ、別に文句を言ってるわけではないですよ。私って、そんなに口うるさい女に見えました?」


「ああ、いや、そんなことは」


 俺の困った様子を見て、ミラさんがくすりと笑う。


「何か温かい物でも作りましょうか」


「すいません、お願いします」


 ソファへと体を起こし、キッチンへ向かうミラさんを見送る。


 活性スキルやマナポーションがあっても、失った魔力が瞬時に回復するわけでもないので時間は掛かる。検証作業には大量の魔力を必要とするので、この回復を待っているだけの時間というのは何とももどかしいな。


 リザやシアンが居れば魔力を分けて貰えるので、かなり助かるのだがその辺りは最終手段のような物としてる。魔力を失うことは疲労感を覚えるし、日常的に奪ってしまうのはデメリットが大きいからな。


 それでも必要とあれば貰ってしまうわけだが。


「魔力が必要なら私のをお分けしましょうか?」


 いつの間にか傍にいたミラさんに予想外の提案をされる。


「ええ? いや、それは」


「リザとシアンには、いつもしているではありませんか」


「まぁ、そうなんですけど」


「私が相手では嫌ですか?」


「嫌っていうか、むしろ――」


「むしろ?」


「いや、でもいいんですか」


「最近は体調もいいですし、魔力をたくさん使うこともないので。それにジンさんとは初めてではありませんし。そんなに気にしなくてもいいと思いますけど」


「あれ、あの時のこと覚えてるんですか?」


「私だけ気にしてるだなんて、ちょっと悔しいですよね。ジンさんったら、ぜんぜん気にした様子ないんですもの」

 

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ、評価よろしくお願いします(=゜ω゜)ノ


 ジン・カシマ 冒険者Lv35精霊使いLv33

 人族 17歳 男性

 スキルポイント 0/81

 特性:魔眼


 雷魔術【雷撃 雷扇 雷付与 麻痺 雷蛇 雷球 雷弾】

 火魔術【灯火 筋力強化 火球 火弾】

 水魔術S級【潜水 遊泳 溶解 水刃 洗浄】

 氷魔術【氷付与】

 土魔術S級【耐久強化 掘削 創造】

 闇魔術【魔力吸収 隠蔽 恐怖 黒煙 誘惑 闇付与】

 光魔術【治癒】

 魔力操作【粘糸 伸縮 誘導 制御】

 探知【嗅覚 聴覚 魔力 鉱石 地形】

 耐性【打 毒 闇 雷 氷 水】

 体術 盾術 剣術 槍術 鞭術 鎚術 斧術 投擲E級 短剣術F級

 闘気 鉄壁 隠密 奇襲 警戒 疾走 軽業 解体 窃盗

 繁栄 同調 成長促進 光合成

 採掘 木工A級


 雷精霊の加護



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