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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第199話 青の回廊8

「ともかく一旦戻ってシフォンさんに報告しよう。これが何処に繋がってるかは調べてみないとわからないだろうが、新しい発見には違いないだろ」


 この転移門のある場所が部屋の最奥のようなので、これ以上ここで調べるものは無さそうだ。

 

「ジン様、何か気になることでもありましたか?」


「ああ、いや、大したことではないんだが」


 これまでに獲得したスキルの総数は、自分で編み出したものも含めて52を超えた。その中には有用なスキルそうでないスキルと様々だが、特に場面を選ばず使えるスキルは当然使用頻度も高い。


 加護で強化された雷魔術、隠密スキルとの相性が良い闇魔術なんかがそうだが、使用頻度で言えば探知スキルが一番となるだろう。直接目で見えない場所も探れるという探知スキルは、斥候系の職業が発現しやすいとも言われているもので状況にもよるが優先的にポイントを割く場合の多いスキルだ。


 使用の際に消費される魔力量も微々たるものなので、常人よりも遥かに魔力量が多い俺にとっては枷になることもなく常時使えることも利点の1つであったりする。


 そんなわけで今も探知スキルは使用中なのだが、新たに加わった聴覚探知が違和感を察知した。いや、違和感というほどの事でもないか。近くを流れるような水の音だ。この青の回廊と呼ばれる古代遺跡は、この辺りの島々を繋ぐ海底遺跡。水がすぐ傍に存在するのは理解できるし、そういったこともあるのだろう。


 今のところ洞窟を歩いている限り、水音が聞こえるような場面に遭遇していなかったので違和感を覚えたのかもしれない。しかし野営地へと戻ろうと足を向けた俺たちが見かけたのは、その違和感の正体だった。


「こんな所に滝なんてあったっけ」


 隠し部屋と繋がる、魔獣の開けた崩れた穴。それを抜けた先にあったのは、段違いになる岩場を流れ落ちる小さな滝だった。滑り落ちる水が溝へと流れ込み、飲み込まれるようにして消えていく。近くまで来ればスキルを使わずとも、水音でその存在を知ることになっていただろう。


「いえ、ありませんでした」


 リザにしてみても異変を感じているようだが、その正体まではわからないでいるようだ。


「ともかく戻るぞ。ここで突っ立っていても仕方がないだろ」

 


 

 野営地のある空間に差し掛かると、誰かの言い争う声が聞こえてきた。


「そんな話は聞いたことがない」


「それはお前らが知らないだけだろ。青の回廊の1部では潮の満ち引きの関係で、月に1、2度ほど水没する場所がある。ここは俺も初めて来た場所だけど、間違いなくその水没する領域に含まれてるね」


 言い争っているのは調査隊の者とミスラ戦士団の少年。何事かと近くまで行くと、シフォンさんの姿が見えたので声を掛けた。 


「おお、お前たち丁度良いところに。困ったことになった」


 シフォンさんの話によると、つい先ほどからミスラの彼が“この辺りは間もなく水没するから脱出したほうがいい”と言い出して、調査隊に混乱が生じてしまっているのだということだ。


「遺跡には多様な罠があることは確認しているが、こういった類の物は知られていない。情報がなくてな、真偽のほどが探れないでいるのだ」


 シフォンさんの声が届いてしまったのか、少年が苛立つような声色で反応してみせる。


「あーん?俺の話が嘘だって言うのかよ。まぁ、別に信じなくても俺は構わないぜ。危なくなれば先に脱出させてもらうからな」


 少年の言葉にシフォンさんも押し黙り、思案を巡らせているようだ。


「シフォンさん、俺たちからも報告が――」


 隠し部屋の転移門、洞窟内に突如現れた水の流れ。シフォンさんは黙って俺たちの報告に耳を傾けた。


「海人族は皮膚感知って特性を持ってますよね。肌で魔素の変動を感知する能力だって聞きましたけど、それで水没するかどうかってのがわかるんじゃないですか」


「なるほど、なるほどな。確かにそうかもしれない」


 海人族の持つもう1つの特性である流動は、激しい水の流れの中でも自在に行動することができる能力だったはず。おそらく万が一の場合は、自分たちだけなら逃げられる自信があるのだろう。

 

 彼らの今までのスタンスから、そうなった場合は調査隊を助けようなんて行動にはならないと思う。そういった指示は受けていないとか言って、あっさり見捨てて脱出しそうな気がするな。いや、忠告してくれただけいいのか。


「今まで見なかった水の流れは予兆かもしれません。決断するなら急いだほうが」


 そういってからのシフォンの行動は早かった。リディルに通ってきた道を確認させるも魔物の姿を確認し断念、野営地の荷を捨て調査を中断し新たに発見した転移門での移動を試みることにした。


「あの砂地で戦闘になれば時間を取られる。我が隊は足の速い者ばかりではないからな。ならば戻るより先へ進む方が可能性はあるだろう」


 転移門は基本的な機能として、魔物避けの力が備わっている。これは魔物に転移門を破壊されたり、占拠されないようにするための措置だろうと予測されている。


 しかし魔物避けとはいっても排除するといったような強力なものではなく、意味合い的には“居心地悪いから近づきたくない”程度の効果らしい。


 それでも効果としては十分で、魔物が意図的に寄ってくることは無いようだ。


「そういった意味では機能を保っている転移門は、ある程度の安全が期待できる。もちろん絶対ではないがね」


 


 天幕を撤収するには時間が掛かると判断し、最低限の荷を回収するだけに留め新たに発見した転移門へと急いだ。


 多くの荷は魔法の鞄(マジックバッグ)に収納できるので、それほど時間は取られないのだが不測の事態ということもあって念にはという判断だ。


「滝の水量が増えてますね」


 俺たちが見かけた洞窟内にできた滝は、僅かな時間に水量を増やし溢れ出る流れが小さな池を作ってた。急いで行動したのは正解だったようだ。この水の勢いならば辺りが水没するのも、そう時間は掛からないだろう。


 辿り着いた転移門を目の前にして一行の足が止まった。


 研究者の1人が石柱の1つを調べている。この転移門が使える状態にあるのか、どこに繋がっているものなのかを調べているらしい。


「どうやら問題なく使えるようだ。転移する場所も近距離だとわかった。今まで侵入したことのない地域だが、近い場所であったのは都合がいい」


 転移門は遠方であればあるほど消費される魔力が増大する。通常は転移門自体に存在する魔力の貯蔵庫のようなものに蓄積された魔力を消耗して移動するわけだが、それが長距離となると1人分だけで貯蔵された魔力を消費してしまう場合も考えられる。


 転移門がある場所にもよるのだが、自然に蓄積される魔力は微々たるものなのだ。そうなると足りない部分は魔石などで補填することになるのだが、人数が増えればその負担は計り知れない。


 近い距離であれば移動に掛かる消費は少なくて済む。最近使われた形跡のない転移門は、調査隊全員の移動を賄う魔力が貯蔵されているようだ。


「であれば、後は転移先の安全を如何にして確認するかということだが」


 あまりないことだが、転移先で盗賊の類が待ち伏せしている。そういった状況も無くはない。もちろん現時点での情報からその可能性は限りなく低いのは違いないだろうが、冒険者たるものそういった不測の事態は常に考慮すべきである。

 

 シフォンが自らの鞄を探ると、2つの球体を取り出した。大きさは直径60cmはあるだろうか。鈍く輝く黄金色の金属で、真球に近いがよく見ると複雑な繋ぎ目がある。


 地面に置かれた金属球はシフォンが何かの合図を送ると、途端に繋ぎ目が分離し見る間に姿を変えていった。


「すげぇ、ロボットみたいっすね」


「ロボット?」


 球体から単眼を備えた頭部が出現し、2本の腕と2本の足を生やした小型のゴーレムに変形した。


「ああ、いや、これもゴーレムなんですね」


「そうだ。私が自作した特別性のゴーレムだよ」


 ポーンゴーレム 魔導兵Lv21

 弱点:火 耐性:雷土

 スキル:探知 警戒

 

 シフォンさんの人形操師という職業は、自ら生み出した魔導兵ゴーレムを使役し活用するのを生業とする職業であるらしい。


「それほど戦闘力は高くはないが、危険が予測されるような場所へ送り出して斥候役にさせることもできる。リディルほど探知力は優れていないし、罠解体もできないから使える場面は限られるがコイツなら失っても痛ましくはないしね」


 そんなこんなで話し合いの結果、様子見として転移門へ最初に侵入するのはアルドラとフィール、シフォンの2体のゴーレムに決まった。


「いやいや、様子見なら私のゴーレムで十分だ。転移門に貯蔵された魔力も十分にある。2人とも待機してくれていて構わないんだぞ?」


 アルドラとフィールの身を案じ、取りあえず待機しておくように促すシフォンだったがアルドラとフィールはやんわりと断った。


「しばらくじっとしておったでな、暇しておったところじゃ。なに邪魔になるようなことはせんよ」


「転移先に魔物がいた場合、露払いに人手がいるだろう。そのゴーレムでは戦力にはならないからね」


 アルドラは戦いの気配を感じ取ったのか、気のせいか少し嬉しそうだ。もしかしたらフィールも同種なのかもしれない。2人の筋肉マンが並んでいると、そうそう危ない場面にはならなそうなので任せても大丈夫だろう。ああ、フィールは女性なので筋肉マンレディか。いや、まぁ、どうでもいいが。


「フィール様、よろしければお使いください。水中でも呼吸なしで活動ができるようになる魔法薬です」


 人魚の舞踏 魔法薬 C級


 リザが彼女に手渡したのは、何時だったか手に入れた設計図から作った魔法薬である。


 作成に人魚の胆を使用するので、こちらに来てから作れるようになったのだそうだ。


「そうか、転移先が水没している可能性もあるね。ありがとう使わせてもらうよ」


 一度に移動できる人数には限りがある。この2人であれば心配する必要もないだろう。

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ、評価よろしくお願いします(=゜ω゜)ノ


 シアン・ハントフィールド 獣使いLv24

 ハーフエルフ 14歳 女性

 スキルポイント 0/24

 特性:夜目 直感 促進

 スキル:同調D級 調教E級 使役D級 狙撃D級 斧術E級



 ネロ 使い魔Lv16 

 種族:ブラックキャット 魔獣

 弱点:火雷水 耐性:闇氷

 スキル:闇付与 潜伏 隠密 魔爪



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