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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第198話 青の回廊7

「それにしても今回は魔物の数が少ないな。何時もこれくらい静かだと仕事も楽でいいのに」


 先頭を歩くレドが周囲を見渡しながら呟いた。


「何時もはもっと多いのですか?」


「魔物の巣窟っていうくらいだからなぁ。魔物避けの結界が遺跡の各地に設置されているらしいけど、それが本当に機能しているのか怪しいくらいに魔物は多いぞ」


 確かに魔力探知の範囲を広げて見ても、その反応は少ない。群れを作るというオーグルも何匹か発見できただけなので、彼らの縄張りというのも近くには無いのかもしれない。


「毛の生えたゴブリンは集団で厄介だし、足の速い虫は相手をするのは面倒だし、でも一番大変なのは洞窟蜥蜴だろうな」


「どんな奴ですか?」


「岩みたいな外皮に覆われたデカい奴だ。力が強くて尻尾を振り回すだけで、何人も怪我人が出たよ」


 特殊な性質を持ってる奴は、大抵有意義なスキルを持ってる。チャンスがあれば狩っておきたい所だな。


 ケイブリザード 魔獣Lv42  状態:潜伏 擬態


 来る時には無かったはずの岩山に違和感を覚え、念のために魔眼を通してみると岩に擬態した魔物だった。


 魔物が俺たちの接近に反応して擬態を解除すると同時に、レドの警戒も即座に反応し身構える。話している傍から出会えるとは運がいいな。


「レドさん、言ってた魔物ってコレですか?」


 魔物がのそりと身を起こすと、岩山は巨大な蜥蜴に姿を変えた。


「ああ、そうだよ。って、随分と余裕だな!」


 レドは腰の剣を抜き放ち、火付与を纏わせ構えた。


「グロロロロロロロロォォ――」


 喉を鳴らして威嚇する魔獣。目は退化しているのか見当たらない。大きく肥大化した頭部は、握りこぶしのようにゴツゴツしていた。岩のような外皮を備え、太い四肢が体を支えている。体に対して太く長い尻尾。確かにあれを振り回せば強力な武器になりそうだ。


 レドを目の前にして獲物と定めたのか魔獣は大きな口を開け、そして動きをピタリと止めた。


「あん?」


 魔獣の予想外の動きにレドから戸惑いの声が漏れた。


 だがそれは予想外でもなんでもなく、レドの背後で杖を構えていたリザの風魔術の効果によるものだ。


 十分に時間は稼いで貰った。練り上げておいた魔力を、魔獣へと向け解き放つ。


 それは刹那の出来事だった。轟音と閃光が魔物の体を飲み込む。空気を切り裂く雷撃は洞窟内の大気を激しく震わせた。


「リザ、もういいぞ」


「はい」


 俺の言葉にリザが静かに杖を下ろした。


「もういいぞ。じゃねーわ!!こんな洞窟で、そんな強力な魔術ぶっ放すんじゃねーよ!!」


 レドが興奮した様子で叫んだ。


「申し訳ない。驚かせてしまったか」


 いつも傍にいるリザは説明しなくても察してくれるからな。いつもの調子で説明なく動いてしまった。


「いやいや、べ、別に驚いたわけじゃねーけどよ。あれだよ、洞窟が崩れたりしたら危ないだろうが……」


 確かにそうだな。攻撃を反らされた場合などを考えると、洞窟内で使うには適さないかもしれない。


「兄様、まだ生きてるみたいですよ」


 シアンの声に視線を移すと、今まで動きの無かったケイブリザードが僅かに動いた。


 雷撃が効きにくいタイプの魔物か。効果が無いわけではないようだが、かなり威力を削がれてしまったようだ。 


 麻痺状態にあった魔物は、その場で身を翻すと大きな体を揺らして走り出した。


「おいっ、逃げたぞ!手負いの魔物を逃がすなよッ」


 手負いの魔物は凶暴になって、予期せぬ被害を生む場合がある。手を出したら原則、責任もって仕留めるものとされていた。


 洞窟内を走る魔物を追う。しかし、魔物はすでに満身創痍。足元は不確かで壁に何度も接触を繰り返していた。


 行き止まりまで追い詰めると、停止するかと思いきや逃げる勢いのまま壁に激突。音を立てて崩れる岩の下敷きになり、そこで動きが止まった。


 リザが風魔術で岩を退かせると、息絶えた魔獣がその姿を晒した。勝てぬ相手だと本能で悟り、最後の力を振り絞り逃走を図ったのだろう。


「……なんでしょうね、ここ」


 岩が崩れた先に空間が広がっていた。盗賊の地図で確認したが、空間はどことも繋がっていない。自然に生まれた空洞なのだろうか。


「何か落ちてるぞ」


 空間に侵入したレドが発見した何かを拾い上げる。それは金の装飾と宝石があしらわれたブローチだった。


「何でこんなところに」


「さて、もしかしたら海賊の隠し財宝なんかがあったりしてな」


 レヴィア諸島は大小無数の島々で構成されている。かつてはその中のいくつかの島が、海賊の隠れ家に使われていた時代もあり今もなお海賊の隠した財宝が眠っているのだと噂されていた。


 島の中には遺跡への入口のある場所も存在するので、入り組んだ遺跡に財宝を隠しほとぼりが冷めた所で回収しにくる予定だったということも考えられなくもない。


「ジン様、ケイブリザードの魔石を見つけました」


 魔石を回収したリザが、俺の元へと届けてくれた。


「ありがとう、リザ」


 魔石から“聴覚探知”を修得した。


 探知系は非常に優秀なスキルだからな。これが更なる強化に繋がったことは間違いないだろう。


 この空間には魔物はいないようだが、落ちていたブローチから人が侵入した形跡があるのは間違いない。もしかしたら、あの崩れた岩も人為的に積み上げられたものだったのかもしれない。


 好奇心もあって少し調査することをレドに提案したところ、野営地に戻るよう促していた彼も少しの時間ならばと了承してくれた。 


「もしも財宝が見つかったら、調査隊の連中も併せて山分けだぞ」


「わかってますって」


 任務中に発見した戦利品は、基本みんなで山分けというルールになっている。金策に来ているわけではないので、通常は金目当ての行動にでること自体ないことであまり意味のないルールではあるのだが。  

 

 俺を先頭にレド、リザ、シアン+ネロという隊列で隠し部屋を進むことにした。とはいえ魔物の気配はないので、擬態している奴がいないか魔眼で調べながら進めば大丈夫だろう。


 少し進むと木製の箱を発見した。頑丈な作りのようだが、作られてから長い年月が経過していると予測できるほど劣化している。


 トレジャーボックス 家具 C級


 名前もそのままの宝箱だった。見た感じも海賊が船に積んでいそうな形をしている。しかし、開けて調べてみたが中身は空だった。


 似たような箱はいくつかあったが、古い銅貨が1枚あっただけで他には何もない。


「なんだよ、期待させるだけして」


 余程がっかりしたのか、レドは吐き捨てるように呟いた。


 期待したのは自分の勝手ではと思いつつも、レドの気持ちもわかるというもの。


 あまり欲の強くないリザやシアンはそれほど乗り気でもないようだが、海賊の財宝となれば男ならばロマンを感じさせずにはいられないものなのだ。


「おっ、死体だな」


「ええ、かなり時間が経ってますね」


 ボロ布をまとった白骨死体が横たわっている。このあたりの宝箱を運び込んだ者だろうか。


 亡骸の脇を擦り抜け、奥へと進むとそこにあったのは、石で作られた円状の舞台。そしてそれを取り囲むように設置された特殊な形状をした石柱群だった。


「転移門だ。まさか、こんなところに」


 石柱や舞台には魔術文字か何かだろうか、不思議な文様が彫り込まれ淡く光を灯していた。


 様子を窺おうと近づく俺にレドが注意を呼び掛ける。


「たぶんそれ生きてるぞ。不用意に近づかない方がいい」

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ、評価よろしくお願いします(=゜ω゜)ノ



 ジン・カシマ 冒険者Lv32精霊使いLv31

 人族 17歳 男性

 スキルポイント 0/76

 特性:魔眼


 雷魔術【雷撃 雷扇 雷付与 麻痺 雷蛇】

 火魔術【灯火 筋力強化 火球】

 水魔術【潜水 遊泳 溶解 水刃 洗浄】

 土魔術【耐久強化 掘削 創造】

 闇魔術【魔力吸収 隠蔽 恐怖 黒煙】

 魔力操作【粘糸 伸縮】

 探知C級【嗅覚 聴覚 魔力 鉱石 地形】

 耐性B級【打 毒 闇 雷 氷】

 体術 盾術C級 剣術 槍術 鞭術 鎚術C級 投擲 短剣術

 闘気C級 鉄壁C級 隠密 奇襲 警戒C級 疾走 軽業F級 解体 窃盗

 繁栄 同調 成長促進 

 木工


 雷精霊の加護



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