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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第185話 幻夢を乗り越える者

 ロゼリアは神器を操り、ジンの拘束を解除した。


「ふふふ、多少の抵抗はあったが、これでお前はわらわのものだ……」


 虚ろな表情を見せるジンの顔を覗き込みロゼリアは満足した様に微笑む。


 今もなお床に伏して体力の回復を図るシェリルに向き直ると、ロゼリアは何もない空中を探る動作をした。すると空中に黒い霞の如き物体が出現する。これは自らの荷を自在に収納して置ける影空間である。


「シェリル、飲んで置け」


 ロゼリアは影空間から取り出した小瓶を投げ渡した。それは彼女がいくつか所有する希少な魔力回復薬の1つだった。


「……はぁ、なんて化物だ。こいつがロゼのいう特別な奴なのか?」


 彼女は受け取った薬を飲み干すと、重怠い体をゆっくりと起こした。失った魔力はすぐには回復しないが、体に残る倦怠感は幾らかマシになっただろう。


「まだわからん。だが可能性はある。人型の精霊など見たのは初めてだしな……」


 ロゼリアの気が逸れたその刹那、シェリルはその背後にあった気配を直感にて感じ取った。


「ロゼ、後ろだ!」


 彼女の言葉と反応よりも早く、ロゼリアは背後からの抱擁に拘束された。


「馬鹿な、幻夢が解除されたのか?早すぎる」


 ジンの思いのほか強い拘束にロゼリアは戸惑った。


「リザ……」


 耳元で囁く言葉に、ロゼリアは幻夢が完全には解除されていないことを確信する。肉体は動くようだが、意識はまだ覚醒しているわけではないようだ。


「幻夢は肉体の自由さえも奪う術だというのに……」


 なぜジンの肉体が自由を取り戻したのかと疑問を浮かべていると、彼女は足元に転がる自分の闇精霊の存在を確認した。


 大きな翼をバタバタともがくように動かし、頭から床に押し付けられている。


 頭の上を足蹴にする雷精霊が、にやりと不敵な笑みを見せた。


「貴様かッ」


 精霊の方へと注意を反らされ、ジンの行動を見逃した。


「ロゼ、危ないっ」


 不意を突かれ唇を奪われる。


「んッンンンンンーーーーッッッ!?」


 闇魔術 魔力吸収


「これはッ……魔力吸収?くっ、離せッ――」


「………」


「まだ幻夢から覚めていないのか!いい加減に目を覚ま――」


 ロゼリアは床へと押し倒され、更に魔力を奪われた。


「ロゼェぇぇぇ!!」


 目の前で主が押し倒される光景にシェリルは叫び声をあげた。


「んぁぁああ、魔力が奪われ……マズイッ……馬鹿ッ、何処触って――」




 魔力を吸い尽くされたロゼリアは魔力消失による強制睡眠、能力低下、気絶状態を引き起こし、意識を失って床に倒れた。


「そんな……ロゼが……」


 ロゼリアが屈するところを初めて見たシェリルは、目の前で起こった出来事を信じることができなかった。


 これは悪い夢だ。自分も気付かない間にロゼの幻夢に囚われていたのかもしれない。


 私が信奉する彼女が、こんなことになるなんて。


 無尽蔵に湧き出る魔力がある限り、夜の彼女に敵う者は世界中探しても存在しない。そのはずだったのに――


「そこにいたのか。悪いな、シアンも俺に魔力を分けてくれるのか」


 ジンはゆっくりとした足取りでシェリルへと近づく。その様子を見れば、いまだに幻夢は解除されていないのだとわかった。


「シアン?おい、馬鹿、やめろッ。私に近づくな!」


「ああ。助かる」


「貴様ッ、話を聞――」


 いまだ魔力は僅かにしか回復していない。逃げることも、迎え撃つ力も残ってはいないのだ。


 シェリルは何の抵抗も出来ずに、ジンに捕まりそのまま――


「ンンンンンッッ――」


 残った魔力を完全に吸い尽くされたのだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

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