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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第181話 暗殺者

黒き魔眼のストレンジャー 異世界×サバイバー 本日発売です(/・ω・)/

web版とは一部内容や設定が異なっていますので、もしよかったら書店で手に取ってお確かめください。

柚希きひろさんのイラストが素晴らしいですよ!

女性陣がみんな可愛いのです(*´ω`)

「はぁぁぁ……生き返ったぁ――」


 解体室のすぐ近くに風呂場を発見した俺は探知を使いつつ潜入した。


 誰もいないことを確認し、そのまま湯に浸かることに。ゆうに100人以上は入れる大きな湯船に溢れるほどの湯が貯めてある。


 湯船に体を滑り込ませ、ゆっくりと体を沈める。冷えた体が温まっていく――これほどの大きな風呂を見たのは、この世界に訪れてから初めての事だ。


「あー、やっぱ広い風呂は最高だな」


 俺はいつかに行った温泉のことを思い出した。そういやアルドラの村にも温泉があったが、それ以来そういったものは見かけていないな。


 アルドラの村にあるくらいだから、広いルタリアなら他の地にも温泉が出ている場所があるのではないだろうか。ベイルに帰ったらそういった情報を集めてみるのもいいな。


 それはそうと船内にこれほど大きな浴場があるというのは驚きだ。帝国には風呂や蒸し風呂の文化があるそうだが、そうだとしても装備として相当に贅沢なものであると思う。


 薄暗い浴場には船内の廊下に設置されたものと同様に、魔石を用いたランタンが淡い光を放っていた。


 それにしても、この船はかなり複雑な作りをしているようだ。地形探知で探ってみたのだが部屋数も多く迷路のように作りが複雑で、いまいち全容を掴み切れていない。


 荷物を回収し地図を取り戻せば、出口までの道順もすぐにわかるのだろうが……


 一息ついて視線を落とすと、湯船に張った水面が不自然に波立つ。


 魔力探知がそこにいる存在を察知した。


 

「……ん?」


 水中から湯を押し上げるように突如出現したのはダークエルフの女。って、こいつ何時から風呂の中に潜んでいたんだよ!?

 

 豊かな胸に括れた腰。最小限の面積しかないボディスーツが、その官能的な肉体を更に強調していた。


 浅黒い肌に肩口まで伸びた灰色の髪。目尻の下がった深緑の瞳が眠たそうにこちらを見つめている。


「やっと見つけたぁ~。もう、ちょっと目を離した隙にいなくなっちゃうんだもん」


 濡れた髪をかき上げ、女が間延びした声でそう宣った。


 風呂に入ってからは隠密や隠蔽を解除してあった。それで見つかってしまったか。浴場には誰もいないようなので、少しの間だけリラックスをと考えていたのが仇となった。


 警戒は解除していないのでこちらへ殺気を放っていれば気づけたのだが、今のところそれがないということは敵意がないということなのだろうか。


「風呂くらいゆっくり入らせてくださいよ」


 何気なく答えた言葉に、女はにこりと微笑む。


「ん~。アタシが指示されているのは、船から逃がさないようにって話だけだし~。いいのかなぁ?」


 緊張感のない女の語りに思わず力が抜ける。どうでもいいけど、凄いおっぱいだなこの人。巨乳っていうか、爆乳っていうか。背が高くスタイルもいい。ほとんど隠す要素のない衣から暴力的にまで自己主張した物体が飛び出している。


「よくわかんないけど、俺に何の用なんですか?あと服と荷物返してほしいんだけど」


 そう言いつつ俺は魔眼を発動させる。


 探知を潜ってここまで接近してきたという時点で実力者だとは思うが、今のところその雰囲気はあまりない。


 ブラック・マッドガーデン 暗殺者Lv58

 ダークエルフ 89歳 女性

 特性:夜目 献身

 スキル:強奪C級

     体術B級

     奇襲C級

     隠密C級

     闇魔術C級

     軽業E級


 と思ったら予想通りの実力者だった。


「んっ、見られちゃったぁ~」


 ブラックは両手で胸を隠す様な仕草をする。魔眼の視線を感じ取られたのか。とはいえあまり気にしていない様子だ。


「魔法の鞄は危ないもの入ってるかもしれないし~、念のため取り上げておけって話だからね~。それに連れてこられた理由は、察しがついてるんじゃないの~?」


 ブラックが動くたびにおっぱいが目の前で揺れる……おっと、思わず見入ってしまったが、こんなことをしている場合じゃなかった。


 俺の視線に気が付いているブラックと目が合い、その様子に失笑される。


「悪いけど全然察しついてないです」


 俺がそういうとブラックは俺の腕を指差した。


「それだけは外せなかったんだよねぇ」


 それは唯一身に着けている装身具、雷精霊の腕輪だった。


「加護がある人を欲しがるのは当然でしょ?君みたいに凄いの初めて見たって喜んでたもん」


 精霊の加護を受ければ魔術の素養が強化されたり、加護と同系統の魔術から身を守ってくれたり、更には加護を受けた人物が危機的に状況にいると、助言を与えてくれるなど不思議な恩恵があるという。


 確かにそれらは持たざる者からすれば魅力的な力なのだろう。精霊の存在は一般的には忘れられた存在で、その加護についてもあまり知られていないようだが。


「見えない人が存在を信じられないのも仕方がない話よねぇ~」


「その口ぶりだと自分は見えるみたいですね」


 その言葉にブラックは一歩俺へと歩み寄る。


 そして自ら胸元を押し広げるように見せつけた。谷間に隠されていたのは魔法陣のような特殊な記号の集合体。そしてその中心にいる、小さな黒い蜥蜴だった。


「可愛いでしょ?」


 ちろちろと動く小さな蜥蜴は女の肌を滑るように移動し怯えたように姿を消した。


「あなたも加護があるんですね」


「あなたじゃないよ、アタシはブラックっていうの。ロゼに付けてもらったんだ。カッコいい名前でしょ?」


 女性に付けるにはどうなんだろうと一瞬思ったが、本人が満足そうなので肯定しておいた。


 俺とは価値観が違うかもしれないし、余計なことは藪蛇になりそうだ。


「話があるなら頭を下げて口頭でお願いしますよ。こうやって暴力や権力で人を動かそうとするような人を俺は好きになれない」


 俺の言葉にブラックはくすくすと笑いだす。


「好きになれない?ふふふ、可笑しいね。大丈夫きっと好きになるよ。だってロゼをみたら、誰だって目を反らせなくなるんだもん。みんな虜になって、あの子のために働くのが最高の幸せになるんだよぉ」


 そういうブラックの笑顔は何処か狂気を含んでいた。


 たぶんそれ操られてるんじゃないのかな。神器の能力か、特性の魅了か。どちらにしろ碌なものではないことは確かだ。早々にお暇した方が良さそうである。


 様子を伺いつつ、あまりことを荒立てない方法をと考えていたが、どうもそんな雰囲気ではないようだ。胡散臭さしかない。


 俺の逃げる決意を表情で感じ取ったのか、ブラックが狂気の笑顔がこちらを見据える。


「逃げられると思う?」


「今の話聞いて逃げない方がおかしいと思いますね」


 雷魔術B級 警戒B級 探知B級 耐性B級


 時間は十分にあったので、彼女の能力に併せてスキルを変更した。


 全裸のまま湯船から立ち上がり、肉体に雷付与をまとわせる。


「魔術師かぁ……あの鉄格子には、魔術師対策がしてあったと思うけど?……まぁ、いっか」


 そう言いながら彼女の視線が下腹部へと移動した様に感じたがたぶん気のせいだろう。


 水の抵抗も難なく距離を詰めるブラック。左手は俺を拘束するべく動き、右手は腹部を狙った拳打が放たれた。


「悪いけど、魔術師対策してるの鉄格子だけじゃないんだよねぇ……逃げられるとアタシが怒られちゃうから、ちょっと眠ってて貰おうかなぁ」


 警戒のスキルが攻撃に反応し、攻撃を先読みするが肉体の動きが反応についていけない。


 ブラックの左手が俺の左手首を抑え、右拳が腹部に沈み込む。


 あっぶねぇ、拳自体は軽いけど、内臓を直接抉ってくるような攻撃だ。打撃耐性がなかったらと思うとゾッとする。


「……ん?」

 

 俺の反応に違和感を覚えたのか、ブラックの動きが一瞬停止する。


 そこへ麻痺を放った。


「ッふぁ!?」


 敵とは言え褐色巨乳のお姉さんを亡き者にするのは勿体ない。いや、間違った。俺の家族に危害を加えようとするようなクズなら容赦はしないが、少々強引な勧誘だと思えば殺し合いまですることもないだろうという判断だ。


 できるだけ穏便に禍根を残さない解決をしたいだけだ。断じて目の前で揺れるおっぱいに意識を奪われたわけではない。


「あぶなーい。雷魔術を即座に無詠唱で放てるということは……雷精霊の加護なのかなぁ?」


「弾かれた!?」


 俺は驚きのあまりに声を上げる。


 するとブラックはドヤ顔で、自分の指に装着された白銀の指輪を見せつけてきた。


「にひひ、妨害の指輪だよん」


「魔術を無力化する指輪か?」


「自分に向けられた一部の効果だけだけどねぇ。でも下位の魔術師相手には十分な性能かもねぇ」


 あ、いいな。なんか使えそう、欲しい。


「俺があんたに勝ったらその指輪くれない?」


 自分へと襲い掛かってくる相手に何言ってるんだとも思うが、相手を打ちのめして荷を奪うような行為は基本的には好きじゃないんだよな。


 相手が盗賊とかなら気兼ねしなくていいんだけど。


「うふふ、いいよぉ、勝てたらねー。でも、勝てるかなぁ?魔術が効かないって、理解したでしょ?」


 ブラックは対峙する俺に両手を広げてアピールする。ノーガードだ。撃ってこいってことかな?


 妨害の指輪があるから?それとも他に対策があるのか……まぁ、考えても仕方ない。挑発に乗ってみるか、指輪の性能を見せてもらおう。


 俺は牽制の意味も込めて、左右の手からD級レベルの雷撃を同時に放った。


「……凄いな、これも防げるのか」


「に、二発同時、意外とやるねぇ……」


 少し狼狽えた様子のブラックだったが、まだ余裕がありそうだ。


 本気のS級を撃つと船ごと壊してしまいそうだしな、俺としてはあんまり派手なことはしたくない。帝国と喧嘩したいわけじゃないし。


「じゃあ、もうちょい威力をあげよう」


 左右の手それぞれに雷球を3つ、B級クラスの合計6発の雷蛇だ。


「え?……なにそれ――」


 地面に落とされた雷球は、四方八方へと拡散し獲物に向かって距離を詰める。


 危機感を覚えたブラックは咄嗟に後ろへと飛び退く。だがその程度で躱せる雷蛇ではなかった。


 飛び退いた瞬間襲ってくる正面の雷蛇2発を打ち消したようだが、背後、股下、左右から向かってくる雷蛇には対処できなかったようで――


「あああああッッッ!!!」


 叫び声を上げたブラックは空中で硬直、そして湯船へと落下した。


「……死んだ?」


 水面を滑るようにして移動する雷蛇。十分な検証はしていなかったのだが、これなら雨の日でも問題なく使用できそうだ。


 うつぶせの状態で湯船に浮かぶ女。


 状態:気絶 麻痺


 ダメージはあるようだが、死んではいないようだ。


 ともあれ、このまま放置すれば溺死しそうなので、とりあえず脱衣までは運んでやろう。


 女から指輪を抜き取り脱衣所まで担いでいく。


 妨害の指輪 魔装具 C級   魔術効果:妨害


 魔法の品物だからか、指輪は俺の指にも問題なく収まった。


 希少度も高いし効果も強力。思いがけずいいものを頂いた。思わず顔が綻ぶ。


 どうでもいいけど、今この状況を誰かに見られたら最低な誤解を招きそうだな。


 裸同然の姿の気絶した女を、裸の男が抱き上げて移動してるっていう……


 こうしてる間にも誰かが入ってくるかもしれないし、隠密と隠蔽を付与しておくか。はやく装備を回収しないとな。


 俺は急いで脱衣所まで女を連れてくると、床にそっと寝かしておいた。衣類はおろか、体を拭く様な布も見当たらないので、そのまま放置だ。


 スキルを変更し隠蔽を付与しようとしたとき、脱衣所の入口からガタガタと物音が聞こえた。

 

お読みいただき、ありがとうございます!

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