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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第179話 脱出計画

 部屋を調べてみても俺の荷物は見当たらなかったので、仕方なく他の場所を調べてみることにした。


 闇魔術B級 隠密B級 探知B級 警戒B級 


 スキルを変更し隠蔽を付与しておく。これで隠密と合わさり俺の姿は格段に捉えにくくなるはずだ。


 今は夜で闇魔術が本来の効果を発揮する時間帯。更に言えば船内の明かりはランタンの弱い光量に頼っている。魔石を使って光を生む魔導具のようだが、疎らに設置してある程度なのでこの程度なら問題ないだろう。

 

 牢屋のある部屋から扉を出ると長い廊下に出た。


 ここからでも多くの扉があるのが確認できる。情報がないので虱潰しに探すしかないか。


 全裸のまま廊下をうろつき、手当たり次第に扉を開けて中を調べる。


 しばらくそれを繰り返していると、こちらへと近づいてくる魔力を感じた。


「ん、マズイな誰か来る……隠れる場所は――」


 隠れる場所を探してもたついていると、手に掃除道具を抱えた女はそのまま俺の存在に気付くこともなく通り過ぎて行った。


「完全に視界に入ったと思ったけど、全然見つかる気配なかったな」


 その後も何人か通り過ぎる者が現れたものの、誰も俺の姿を見つけられるものはいなかった。


 それにしても通り過ぎる者たちは皆女性だった。それに若い女が多い。この船には女しか乗っていないのだろうか。見つからないとわかったものの、全裸で行動するのは何とも落ち着かない。


「なんにせよ寒い。はやく装備を取り返したいが……」


 そう考えていると、ある部屋の中から話し声が聞こえてきた。



「まーた一番隊の連中が揉めごと起こしたらしいわよ」


「あー、聞いた。レイド様ね。お店で暴れて壊したって、噂になってるし」


「なんか男の子にぶん投げられたって」


「それって昼に連れてこられた子じゃない?まだ子供でしょ?」


「牢屋に入れられてる子?」


「うん」


「へー、凄いね。あの半巨人がやられるなんて」


「それ禁句。殺されるわよ、すごい気にしてるんだから」


「あっ、ごめんごめん、今のナシにして」


「気を付けなさいよ。あの人、女子供にも容赦ないんだから」


「でも男って馬鹿だよね、血筋なんて気にしちゃってさ。今どき、どこ探したって純血なんていないでしょ?人族だって10代もさかのぼればエルフやら獣人やら出てくるわよ」


「たしか何処かの貴族の血筋でしょレイド様って。余計なんじゃないの、そういうのにこだわるの。そういって教育されてただろうし」


 休憩室みたいだな。数人の女性たちがわいわいと話し込んでいる。


 連れてこられたっていうのは俺の事だよな。レイドを倒したのは俺ってことになってるのか、誤解ですけど。


「お風呂いま誰入ってるの?」


「解体室の子たちじゃない。今日大物けっこう入って来てるから、人増やしてるはずだけど」


「そっかー。じゃあ、あとにしよう。連中の後に入るのは勘弁だからね」


「確かに。たぶん酷いことになってるよ」


 この船には風呂があるのか。


 全裸でうろついていたら、すっかり体が冷えてしまったんだよな。ちょっとお風呂借りられないかな。



 その場を離れて再び船内をさまよう。


 すると僅かに開いた扉から冷気の漏れ出る部屋を発見した。


 部屋の入口に掲げられた金属札に視線を送ると“解体室”と書かれている。


「ここが例の解体室……」


 部屋全体が冷蔵庫みたいだな。冷気が充満している。さすがに裸では入りたくないな。これはそういう魔術か、魔導具なのだろう。かなり広い部屋で一目では部屋の全容を見定めることはできない。


 人の気配はない。休憩中だろうか。


 作業台が無数に並び、その上に何かが乗っている。


 血の滴る何物かの肉塊。血や肉片のついた骨の山。作業台から垂れ落ちた触手。たぶん解体室というのは、魔物の解体室なのだろう。部屋には血の匂いと生臭い腐敗臭のようなものが漂っている。


 まるで手術台かのように寝かされ、そこに横たわる体。鱗の生えた腕が作業台からだらりと垂れる。魚のような顔。濁った眼。下半身は魚をそのまま半分にしてくっつけたような姿だ。


「マーメイドもいるのか」


 まるで俺の声に反応するかのように人魚の腕が持ち上がる。その顔を見れば生気があるようには見えない。

 

 魚の顔をこちらへと向け、白濁した瞳が俺を見つめる。口が僅かに動く。


「アア……ァァァ……ゥゥッゥ……」


 うめき声をあげ、鋭い爪を持った腕が手招きするようにこちらへ伸びた。


 俺は扉をそっと閉めた。

  

 

 


 


お読みいただき、ありがとうございます!

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