第171話 フィッシャーマンズ・パーク2
それにしても海人族の女性たちはスタイルが良いな。
スラリとした高身長に、引き締まった肉体。種族的な青肌も、そういうものだと思えば見慣れてくる。
店の接客は海人族の若い女性が担当しているようで、見た目も麗しい美女揃いだ。
上半身は首元まで覆うノースリーブといった衣服のようだが、どうも水着のように体に密着している特殊なものらしい。
素材はなんだろう。なめらかな生地がピタリと張り付き、体の曲線が顕になってなかなかに色っぽい。
首飾りや腕輪の装飾品も見られる。種族は違えど、やはり女性というものは着飾ることを好むのだろう。だがベイルなどでよく見られる貴金属の類ではなく、貝や石を加工したような物だ。
下半身は布を巻き付けてスカートのようにしている。
布の端から望む細い脚は健康的で美しい。
「ジン様、あまりジロジロ見つめては失礼かと」
隣に座るリザに冷ややかな視線を送られ窘められる。
「いや、そうか」
それほど注視していたつもりはないが、彼女の指摘に思わず動揺してしまう。
「兄様はえっちです」
「男の子ですものねぇ。仕方ありませんよ」
「元気があって結構ではないか。ふはははは」
まるで俺が旅先の女性を物色しているかのような物言いにちょっと待てと弁明するが「わかっとる。わかっとる」とアルドラに流されてしまった。
どうしたことか俺が無類の女好きのような扱いになっている。
いや、そりゃ女性は好きだけども。しかしそれは普通のレベルでの話だ。一般的な普通の健全な健康男子として、女性が好きというだけである。
ミラさんが「若いものね」と優しく微笑んでいるが、何かしら誤解を受けているような気がしてならない。
俺は必死に釈明を試みたが、それが正しく受け入れられることはなかった。
しばらくすると舞台の演奏者が入れ替わり、曲調が変わった。
躍動感のある軽快なリズム。
それに合わせて舞踊を魅せるのは、海人族の女性舞踏家たちだった。
「たしか海人族は歌と踊りを愛する種族だと聞いたことがあるのう」
ビキニの上から透けた布をまとったような衣装に、首元や手首足首に装飾品が華やかさを添える。
女性のしなやかな曲線を強調したような舞。そこにいやらしさはなく、芸術と言って良い優雅な舞であった。
「素敵ですね」
その美しさにリザも思わず感嘆の意を唱える。
「うむ。見事なものじゃ」
「大人です」
俺たちは彼女たちの舞を酒の肴に、しばしの時を楽しんだ。
良い酒に少し飲みすぎてしまったか、俺は用を足しに席を立った。
接客の女性に案内される道すがら、若い海人族の男たちの会話が聞こえてくる。
「どうして俺たちが我慢しなきゃ為らないんだ!」
「今代の女王は弱腰過ぎる。いくら帝国が強大だからといって、これでは我ら海の民は舐められっぱなしではないか」
「このまま俺たちの誇りは、無駄に汚される事になるのか」
「女王は帝国から開国の報酬に、何か受け取っているという噂もある」
「何かってなんだ?」
「さぁな。宝石か、金か」
「先代の女王様はミスラを先導してくれる立派なお方であったのに……」
「あまり大きな声を上げるな。誰が聞いているかわからぬぞ。ミスラ戦士団に聞かれでもしたら大事だ」
「ふん。聞かせてやってるのさ。奴らは今や女王に尻尾を振るだけの、卑しい犬にしか過ぎん。嘗ての勇猛な海の戦士は、戦士長ズオウ様が亡くなったことで消滅したのだ」
「他の氏族にも声を掛けて、海人族の未来を憂う者を集めよう」
「この最中にか?」
「神聖な祭りなのだぞ」
「隠れ蓑になって良いではないか。この騒ぎに乗じて人を集める。帝国に一泡吹かせてやろう。海は我らと共にある」
「なるほど、面白そうだな」
「景気づけの酒だ。一番良い酒を頼もう」
「ああ、忙しくなるぞ」
なんか凄いきな臭い話してるなぁ……まぁ、俺には関係ないけど。
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