第164話 ベラドンナ
その後は複数ある回廊への侵入場所の確認、回廊内部の地図を見ながら危険箇所の説明。
出現が予想される魔物の特徴や対処法、各隊員の役割などの説明などが続く。
俺の能力や仲間たちの能力については、ざっくりと公表した。
もちろん魔眼やスキル修得のことなどは秘匿とし、ある程度できることできないことを伝えたような感じだ。
それらは危険な現場で一緒に仕事をするのに、必用な情報ということで理解している。
「あ、そうだ。一つ報告があるのですが……」
落ち着いたところで昨日に破壊したアースゴーレムの件を報告することにした。こちらに落ち度はないと思うのだが黙っているというのも気分的に良くはない。
「うん。なるほどな。わかった。何の忠告もしないとは。ゼストの奴め忘れていたな」
あのアースゴーレムはシフォンさんが設計したものらしい。試験的に何体か作ったうちの1体をあの場所に配置したのだ。
土地の魔素と素材を吸収して再生するように魔力回路を組み込んでいるそうで、多少破壊されても問題ないのだという。
多少というか完全に焼き尽くして魔石も回収してしまったのだが、それでも再生するのだろうか。
何となく不安も残るところだがあまり藪をつつくのもどうかと思い、問題ないというのでそれ以上とやかく言うことは止めておくことにした。
「それじゃ、行ってきます」
とりあえず今日の打ち合わせは終了ということで、一次解散となった。
時間的に今は昼頃。
調査隊の戦闘部隊の指揮をとるB級冒険者たちも、まだ帰る様子はないということでミューズの繁華街へと繰り出すことにした。
俺たちはまだ滞在許可を受けていない身なので、あまり彷徨かれるのは困るようだが家に閉じこもっているのも退屈である。
「あまり騒ぎを起こさないでくれよ?とくに帝国の連中とはな」
繁華街の近くには帝国冒険者の宿泊施設が立ち並ぶ区画があり、治安としてはあまり良くない。
冒険者同士の揉め事もさることながら、島民とのいざこざも年々増えているらしく問題になっているそうだ。
「わかりました。少し様子を見て早々に引き上げますよ」
「そうだ。そうだな。そうしてくれると助かる」
趣味程度のことだが、島の地図を完成させるためにも少し探索したいという理由もある。
他にも借金返済のためにベイルから持ち込んだ輸入品を捌くことも忘れてはいけない。
ベイルで安く買い、レヴィア諸島で高く売る。
そう上手いこといけばよいのだが、物流や市場のことなど知らないことが多すぎるので無難な物を選んで持ってきた。
ルタリア王国で生産される葡萄酒の中でも最高級とされる物だ。
ベラドンナ 飲料 C級
ヴィムの知り合いの伝手を頼って1本金貨2枚で手に入れた品である。
D級クラスならば毎年生産される中でも比較的入手し易いが、C級となると途端に市場では手に入りづらくなる。
だがそれも当然なのだ。ほぼ全ては名のある貴族が買い占めてしまうのだから。
ごく一部だけ市場に流通するもの。更にそれを蔵に隠匿し、値が上がった際に放出しようとするものから無理を言ってまとまった数を譲ってもらった。
少々無理を言ってしまったようなので、彼には別に礼をしなければならないだろう。
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