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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第163話 海神祭

「この勝負、ジン・カシマの勝利だ!レド・バーニア隊員、異論はないな?」


 レドの戦闘継続は不可能と判断したシフォンは、勝敗の判定を言い渡した。


 はっきりと敗北を言い渡されたレドの顔には苦いものが浮かぶものの、自身の予想を覆された結果に認めざる得ないと言ったところだろう。


「……ああ、俺の負けだ」


 思いの外、すんなりと敗北を受け入れたのだった。




 俺がただのD級クラスの冒険者ではないと理解した隊員の面々からは、まだ受け入れてはいないが実力は認める。といったような雰囲気が漂っていた。


 階級が上の冒険者には実力主義といったような風潮がある。強者であればそれなりに認めてもらえるのだ。


 これでマスターのコネでやってきた役立たず、といったような認識が外れてくれれば良いのだが。


「わだかまりが全て消えたわけではないようだが、とりあえず任務と現状の話をしようか」


「よろしくお願いします」


 現在本部にいるもの全員がリビングに集まり、シフォンの説明が始まった。


「そうだ。そうだな。何から説明するか。まずは私達が何の任務にあたっているかを説明したほうがいいな」


 彼ら遺跡調査隊が行っている任務。


 それはレヴィア諸島の海底に広がっている海底遺跡。通称、青の回廊の調査だ。


 青の回廊は大部分が青晶石という珍しい素材で作られた古代の遺跡で、その素材から呼称されているらしい。


 詳しいことは解明されていないものの、時代的にはザッハカーク大森林の遺跡と似たような時代のもののようだ。


 そして、その調査というのが未だ遺跡内部で稼働し続けている失われし魔法技術ロストテクノロジーの解明と発掘である。


「この辺りの海域は、少し前まで海賊の根城が無数にある無法地帯だったらしい。当時の帝国海軍が人員を広く募集して、その掃討作戦を行ってな。その時にゼストもそれに参加していたらしく、個人的にレヴィア諸島の海人族とは繋がりがあるというのだ」


 その繋がりを利用して遺跡調査の許可を貰っているようだ。


 青の回廊というのは海人族にとっては聖域のようなものらしく、他種族の侵入を極端に嫌っている。


 今回許可を貰えたのは異例中の異例ということのようだ。


 

 アルドラに目配せすると、彼はにやりと笑った。


「しばらく海人族の漁港に滞在してな。海賊の船を100以上沈めてやったわ」


 長命種の彼に言わせれば、それほど古い話ではないという。ほんの数十年前の話だ。アルドラは当時を懐かしんで語った。


 腕試しと見聞を広めるために、諸国を仲間と共に旅していたという。


 この地にゼストが繋がりがあるというのは、彼と共に旅の途中で立ち寄ったということのようだ。


 ゼストは各地に冒険者を送り、遺跡を調査させているらしい。


 青の回廊の調査はその1つということだ。


「ジンには青の回廊での探知による地図の作成の補助、罠の解除を中心に頼むことになるだろう。魔物も多く出没するので、その対処もな。まぁ、そのつど臨機応変に、ということになるだろう」


「わかりました。ですが、罠の解除と言うのは、ほとんど経験がないのですが」


 ゴブリン討伐の際に発見したような簡単な罠ならば対処できるだろうが、専門的な知識は何一つない。


「できないことを、やらせるつもりは無いから安心してくれ。それに罠の専門家エキスパートは調査隊にもいるから、もし仕事を行うにしてもその者の指示に従って行動することになると思う」


「なるほど。了解しました」 


 現在B級の隊員が不在なのは、青の回廊で新たな調査対象が発見されたからのようだ。


 今日中には帰ってくるらしいので、その時に顔合わせをする手筈となった。


「ジンに回廊に入ってもらうには、もう少し時間が必要になる。まずは許可を頂かないとならないのだ」


 レヴィア諸島というのは、大小合わせて5000余りの島々が密集した海域。


 人間1人、立つのがやっとという小島もあれば、このミスラ島のように数千人の島民が暮らす大きな島もある。


 そんな島々を海人族の16氏族が分担して管理、支配している。


 とはいえ海人族の手中にあるのは一割ほどの500余りの島で、多くは未開の島、あるいは魔物の島であるという。


「許可ですか」


 調査隊に途中加入した経緯を説明し、この島を収めるミスラ族の女王に滞在の許可と、回廊へ立ち入る許可を得るのだという。


 途中から入ってきたものが女王に挨拶もなく聖域に侵入したとなれば、女王の機嫌を損ねてしまう恐れがあるというのだ。


 そうなると調査にも支障をきたすので、許可が降りるまで大人しくするよう忠告された。


「そうなのだ。だが今、女王は海神祭の準備で忙しくてな。なかなか面会に応じてはくれないかもしれん。少し時間が掛かるかもしれない。申し訳ないな」


 海神祭というのはレヴィア諸島に住む海人族が集結して執り行う1年に1度の祭りらしい。


 毎年、仕切る役目を16氏族で交代で行い、今年はミスラ族の仕切りで執り行うそうだ。


 海神祭は海の安全と豊漁を祈願する神聖な宴らしいのだが、仕切りが悪いと氏族全体の権威に関わる重要な問題となるらしい。


「失敗すれば他の15氏族の前で大恥かくことになるから、絶対に失敗はできない。それで準備に忙しいから他のことに構ってられない。ってことですか?」


「そういうことだな」


「その海神祭というのは、いつごろの予定なのですか?」


「ひと月後だ」 

 


お読みいただき、ありがとうございます!

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