第151話 未知との遭遇
「兄様!見てください、これっ」
驚きを隠し切れない弾む声。
波打ち際で何かを発見したシアンが、それを大事そうに両手に乗せて運んでくる。
「何だそれ、何処から持ってきたんだ……」
シーワーム 魔獣Lv1
それはピンク色の円筒形という謎の物体。
生物らしくピクピクと僅かに動いているのがわかる。
幅5センチ全長20センチくらいか。微妙に脈動しているのが余計に気持ち悪い。
シアンはそれに不快感がないようで、愛おしそうに手のひらに乗せ眺めている。
「砂の中にいたのを見つけたんです。たぶん害は無いと思います」
図鑑にものっていた魔物らしく、彼女には見覚えがあるようだ。
シーワームということは、海のミミズといったようなものか。
魔物は頭部と思われる先端をもたげると、シアンの顔に勢い良く何かを噴射した。
「ふぁっ!?」
「だっ、大丈夫か!?」
少し怯んだ様子を見せた彼女だったが、直ぐに立ち直り再び観察を始める。
「大丈夫みたいです。吹き出したのは海水のようですね」
「そうか……大丈夫なら良いけど、気をつけてな」
「はいっ」
シアンは嬉しそうに返事をする。
今まで家に閉じこもりがちの生活だったのだ。見るもの全てが新鮮で、好奇心を刺激されるのだろう。
周囲には脅威となる魔物の姿も無いようだし、自由に行動しても問題はなさそうだ。
リザはと言うと、彼女は彼女で膝辺りまでを海水に濡らし、何かの採取に勤しんでいる。
海に生える薬草、いや、海藻なのか。
「凄いですね。海には初めて来ましたけど、貴重な薬草がこんな簡単に採れるなんて」
「そうか。この辺りは安全のようだけど、夢中になり過ぎないように。あまり深いところまで行くと危険だろうからな」
「はい。わかりました」
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「どうですか?気持ちいいですか?」
「あー、すごいいいですね~」
波打ち際で忙しそうにしている姉妹を見ながら、俺は浜辺でミラさんのマッサージを受けていた。
患部を揉みほぐしながら治療術を掛けるミラさん独自の技術らしく、通常よりも疲労回復効果が高まるらしい。
これは治療院で働いていた時期に、客の老人たちのために編み出したのだとか。
「制御スキルを併用することで、より繊細に術を行使できるのですね」
「それほど大層なものではありませんよ」
謙遜するミラさんだが、その技術は中々に高いように思える。
力は決して強くはない彼女だが、その指先が体の奥に蓄積された疲労を溶かしていく感覚が快感だった。
制御スキルを修得できれば、俺の操る魔術も一段階上の領域に上がれることだろう。
魔物から修得できれば良いのだが、それがいつに為るかはわからないので、ミラさんに習うという選択肢も有りかもしれない。
「ええ、勿論いいですよ。私で良ければ協力いたします。でも、人に教えるという経験が無いもので、教えるにしてもどうすれば良いのでしょうね……」
「なるほど、そうですよね」
ミラさんの制御スキルは誰かに与えて貰ったものではなく自然に身についたものらしいので、教えるにしてもどう教えて良いのかはわからないという。ミラさん自身、操作しようとしているのではなく、無意識に効果を発揮しているものなのだろう。
「ああ、そうだ。俺が所有するスキルに同調っていう感覚を共有するものがあるのですが、もしかしたらソレを使えば制御スキルの感覚を覚えるのに役立つかもしれません」
シアン・ハントフィールド 獣使いLv20
ハーフエルフ 14歳 女性
スキルポイント 1/20
特性:夜目 直感 促進
同調 E級
調教 E級
使役 D級
狙撃 D級
斧術 F級
【装備】
ミスティコート 魔装具 E級 魔術効果:認識阻害
レザーヘルム 防具 E級
ソフトレザーアーマー 防具 E級
レザーグローブ 防具 E級
ソフトレザーパンツ 防具 E級
レザーブーツ 防具 E級
力の指輪 魔装具 E級
アウトラスト 魔装具 E級 魔術効果:体温調節
サンダージェム 魔導石 E級
クレインクィン 石弓 E級
ウッドボルト 矢弾 E級
ショックボルト 魔弾 D級 魔術効果:麻痺
ボルトバック 猟具 E級
フランシスカ 魔斧 C級 魔術効果:投擲 筋力強化
ナイフ 短剣 E級
身代わりの護符 魔導具 D級
ネロ 使い魔Lv14
種族:ブラックキャット 魔獣
弱点:火雷水 耐性:闇氷
スキル:闇付与 潜伏 隠密