第150話 疑惑の朝
手に感じる柔らかな感触。
指を動かすと例えようのない心地よさが伝わり、朧げな意識の中でただそれを楽しんでいた。
「……?」
意識が緩やかに覚醒して行く。
「……んっ……はぁ」
溢れる甘い吐息。
横たわるミラさんは、静かな寝息を立てていた。
ネグリジェとでもいうのか、何時も着ている服装よりも露出が多い。
開かれた胸元から、白い谷間が見えている。
天幕は1つで、昨晩は皆で川の字になって眠ったのだと思いだした。
それが何故か今、ミラさんと並んで天幕で二人きりでいる。
もみっ
おおおお!?
何だこれ、すっっげーーーー柔らかい!?
リザともシアンとも違う感触。
テンピュールの枕か、マシュマロか。
今まで感じたことのない新感触に感動すら覚える。
これは良くないことだ。
最低なことだ。
そう思いつつも、手が離れない。
罪悪感を感じつつも、その甘い感触を味わっていると不意に白い腕が俺の肩を抱き寄せた。
「あ、ちょっ……」
微かな汗の匂い。
だけど不快ではなく、むしろ良い匂いだ。
豊かな膨らみを押し付けられると、俺の焦りは頂点に達した。
「……んんっ……こっちへ居らっしゃい。いい子ねぇ、ネロちゃん」
寝言なのか、小さく呟いて俺の頭を撫でている。
ミラさんは確か朝に弱くて、簡単には起きないと言っていた。
しかし、万が一この状況で起きられると、非常にマズイ気がする。
妙な誤解を生んでしまう気がする。
少しばかりミラさんの抱擁を味わったのち、俺は彼女を起こさないよう柔らかな腕から逃れるため静かに身を捩った。
彼女の拘束が意外と強く、なかなか外せない。
そうして藻掻いている内に、天幕の入口がそっと開かれた。
「兄様、起きてますか?朝食の用意ができました」
ミラさんの胸に顔を埋めている最悪の瞬間に、シアンが天幕へと入ってきたのだった。
>>>>>
外へ出ると周囲には、高さ2メートルほどの土壁が天幕を中心に築かれていた。
寝込みを襲ってくるような魔物は島には居ないと判断したものの、念のためを思っての防衛策である。
「……見張りご苦労」
土壁の上で佇むネロに声を掛けると、彼は大きなあくびをして答えた。
天幕から少し離れた所で、朝食が用意がされている。
先に起きていたリザとシアンが準備してくれたのだ。
「すいません兄様。お邪魔でしたでしょうか」
軽めの食事を取りながら、シアンが申し訳無さそうに呟いた。
「いやいやいや、だから誤解だって言っただろ?ミラさんが寝ぼけてただけだから!」
シアンの言葉に、思わず咽ながら答える。
リザの疑惑の視線を感じるが、シアンの直感よりも強力な彼女のそれは弁明する意味など無いかのように真実を見抜いてくれる事だろう。
「私は構いません。お母様と仲良くしていただけるのは、むしろ喜ばしいくらいです」
そういって彼女は微笑みを向けてくる。
何故か、まったく疑惑は晴れていなかった。
「はい。私も兄様が母様と仲良くされるのは、嬉しいです」
シアンも姉に同調し、笑顔を浮かべている。
「……ま、まぁ家族が仲良くするというのは、俺も吝かではないが……って、そういうことでは」
姉妹の笑顔をに挟まれて、俺は言葉を小さくしていくのであった。
エリザベス・ハントフィールド 薬師Lv30
ハーフエルフ 16歳 女性
スキルポイント 1/30
特性:夜目 直感 促進
調合 C級
採取 E級
風魔術 C級【脚力強化 風球 浮遊 微風 風壁 逆風】
水魔法 E級【洗浄 浄水 濃霧】
杖術 E級
【装備】
ミスティコート 魔装具 E級 魔術効果:認識阻害
ストール 衣類 E級
ハードレザーアーマー 防具 E級
レザーグローブ 防具 E級
ソフトレザーパンツ 防具 E級
レザーブーツ 防具 E級
魔術師の指輪 魔装具 C級
アウトラスト 魔装具 E級 魔術効果:体温調節
アイスジェム 魔導石 E級
ファイアジェム 魔導石 E級
身代わりの護符 魔導具 D級
解体ナイフ 魔剣 D級 魔術効果:解体
赤霊木の戦杖 魔杖 D級 魔術効果:火球
冒険者の鞄 魔導具 D級 魔術効果:収納40/40