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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第1章 漂流者
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第15話 戦い終わって

 長い夜が明けた。

 燃え残った廃材とインプの骸が周囲に散乱し、村は酷い有様だった。


「何にしても、生き残ったな……」

 

 俺は腰のバックからライフポーションとマナポーションを取り出し、飲み干した。

 失われた体力と魔力が幾らか回復していく。


 手に携える青銅剣は既にボロボロで、いつ折れてもおかしくないような状態だ。

 外套その他も返り血と傷で、相当傷んでいる。


『この村の代表として、改めて例をいう。弟を止めてくれて感謝する』


 アルドラさんは深々と頭を下げた。


「俺は自分の身を護るためにやっただけです」


 俺は少しおどけてそう答えると。

 アルドラさんはにやりと笑って、


『そうか』


 そう短く答えた。


「そういえば、あの騎士様はどうしましたかね?」


 昨日の夜には2度もピンチを救われた。

 何か礼でもしないと、申し訳ない。

 礼とは言っても、今の俺は文無しであるが……


『さて、ジャイアントインプ6体とやりあってた頃までは、元気そうじゃったがな』


 ウルバスを倒した後、この戦いも終局かと思いきや、まだ終わってなかったのである。

 数えきれない程のインプの群れが、村に雪崩れ込んできたのだ。

 ウルバスを倒したことによって、ヤツの体内に内包していた魔素、魔力が流出した。

 さらに魔力吸収で周囲の魔素、魔力も一箇所に集中していた。

 それによって、擬似的な魔素の源泉のようなものが、ここにできてしまったらしい。


 アルドラさんの話によると、魔物は濃い魔素、魔力を求める。

 高濃度のそれらを体内に取り込むことで、より強くなろうとするようだ。

 

 それが原因でインプが興奮し集まってきてしまったのだ。

 

 ちなみに源泉というのは、魔素がまるで温泉のように、地下から大量に湧き出るパワースポット的な場所らしい。

 そういった場所は強力な魔物の縄張りになっているんだとか。


 そういったことで無数のインプ相手に俺と髑髏騎士の二人で朝まで戦い続けた。

 ウルバスを倒したことで、この村にもかつての住人たちが帰ってくるだろうし、このままインプを放置するわけにもいかないと思ったのだ。

 まぁ安心して眠るには、倒すしか選択肢はなかったのだが。


 朝になると、動くものは俺達だけになっていた。

 生き残ったインプの興奮もいい加減覚めたことだろう。


「これ片付けるのも、気が重いな……」


『とりあえず魔石だけでも回収したらどうじゃ?ありかは見えるんじゃろ』


 魔物が生きているうちはよく分からないのだが、死んだ魔物の骸を見ると、何かの気配を感じる。

 うまく説明できないのだが、どうもこの感覚は結晶化した魔素である魔石の気配のようだ。

 魔眼の力によって魔石から僅かに漂う魔素を感知しているのだと思う。

 

 探知 C級


 魔力探知と組み合わせることにより、よりハッキリと正確に広範囲に探ることができる。


 俺はナイフを手に黙々と作業を続けた。




「あ、いた」


 インプの骸の中に、横たわる金属鎧。

 無数の骸に埋もれるように髑髏騎士が倒れている。

 生きてるのか?


『お、動いとるぞ』


「お、お腹すいた……」


「……大丈夫そうだな」


 とりあえず命の心配は無さそうだ。

 大丈夫そうとは思ったが、一安心だ。

 

「昨日は助かった、危ないところをありがとう」


「……いや、大したことではない。礼はいい」


 俺は腰のバックから、最後のライフポーション、マナポーションを取り出した。


「俺が持ってるのはこれが最後だ。よかったら使ってくれ」


「……いや、わしの事は気にせんでくれ、問題無い」


 そう言う声にも力が篭っていない。

 だいぶ消耗しているのは、あきらかだった。


「ん?遠慮するな、あんたもだいぶ消耗してるんだろう?使ってくれ」


 よく見れば、鎧のあちこちが砕け、割れ、破壊されている。

 そういやジャイアントインプとも戦っていたもんな。

 破壊力のある攻撃術は持ってないようだが、金属鎧らしからぬスピードのある動きで終始翻弄しつつ、戦っていた。

 相当な手だれなのは、間違いないと思うが、鎧がこれじゃ無傷ってわけでもないだろう。

 

「だ、大丈夫だ。わしのことは気にするな」


 髑髏騎士は、力を振り絞り立ち上がる。


「簡単なものでいいなら、食事の用意は出来るぞ。一緒に食べないか?」


 立ち去ろうとする騎士に俺は呼びかけるも、騎士の返答は無く、歩き出そうと足を出した直後、石に躓いて前のめりに倒れた。


「……」


 死んだ!?


『魔力の枯渇じゃないか?昨日の夜から、こやつ散々魔術使っておったじゃろう。普通あれだけ連発すれば、枯渇するのも当たり前じゃろ』


 ここの温泉には体力魔力の回復促進効果があるので、そこに浸けておけばいいか。


「とりあえず、鎧脱がすか……」

  

 ここで寝かせておく訳にもいかないだろうしな。

 鎧を着込んだ男なんて、俺には担いで行けないし。


 倒れたおっさんを担いでいくのは、ちょっと抵抗あるが、致し方ない……

 

 ところで鎧ってどうやって外すんだ?

 


 

「あれ?なにこれ……」 


 鎧の胸部は簡単に外れた。

 というより留め金の鋲が、破損して外れたんだが。  


 鎧の下はキルティングのような厚手の服を着ている。

 そのため体型は解りづらいが、この胸の膨らみは……


『女じゃな』


 ともかく鎧を全部外し、兜も脱がせると、中から翡翠のような美しい色をした髪を持つ美女が現れた。

 いや美少女か。

 よく見ればどことなく幼さも見える、まだ若い女だった。

 

「だけど声が、男だったよな……鎧を着込んだ体型だって大男に見えたし」


『うむ、そういう魔装具なんじゃろ、この鎧』


 魔装具かよ。

 まぁ今更驚かないけど、ほんと魔術って何でもありだな。


 俺は昨夜の騎士のキャラを思い出し、複雑な気分になった。


『とりあえずポーションを飲ませて、どこかで寝かせてやったほうが良いのではないか?』


「そうですね」


 俺は彼女を抱きかかえると、温泉場のほうへ向かった。




>>>>>




 俺は彼女を温泉場の脇に敷物を引いて寝かせる。

 既にポーションは飲ませたので、とりあえずは大丈夫だろう。

 今は寝ているが、起きたら食事にしようと準備もしておく。

 まぁ茹でた芋、まずい粥、干し肉くらいしか無いが。

 そうだヒワンの実がまだあったはずだな、後で取ってこよう。



  

 いろいろ聞きたいこともあるが、それも起きてからだ。

 まぁ焦らなくていいだろう。

 助けてくれたことを考えても、友好的な人物だろうし。


 そうだステータスだけは、確認しておくか。


 エリザベス・ハントフィールド 薬師Lv21

 ハーフエルフ 16歳 女性 

 スキルポイント 0/21

 特性 夜目 直感 促進

 調合 D級 

 採取 E級

 風魔術 C級

 水魔法 F級

 

 やはりけっこうレベル高かったな。

 あれだけ動けるなら、それなりにやるとは思っていたが。

 それに特性が3つもあるし。

       

 それにしてもハントフィールド?

 どっかで聞いたことあるような……


『どっかで見た顔じゃと思っとったが、リザじゃったか……』


「ん?アルドラさんの知り合い?」


『うむ、前にいうとった、孫姪じゃ』




>>>>>




 サクッ


 サクッ


 サクッ


 俺は魔石の回収に勤しんでいる。


 ナイフで魔物の体に傷を入れ、手を突っ込んで取り出すのだ。

 

 探知にポイントを設定してあるので、何かあれば異変に気づけると思う。

 まぁ昼間から魔物が攻めてくることは無いらしいが。


「だいたいこんなところかなー」


 空き家から手に入れた麻袋に魔石を詰めていく。

 けっこうな量になった。

 まぁ小型のインプからは、ほとんど入手できないので、倒した総数を考えればだいぶ少ない。


 俺は一度リザのもとに戻ることにした。


「お、気がついたか」


 彼女は体を起こし、ぼんやりとした表情で、空を見つめていた。

 俺の声に気がついて、慌てて頭を下げる。


「あ、先程は貴重な魔法薬をいただきまして、助かりましたありがとうございます」


 俺は彼女にヒワンの実を手渡し、笑って答えた。


「いや助かったのはこっちだよ。とりあえず飯にしよう。食べるだろ?」


「はい、いただきます!」




 グツグツグツ


 石で作られた即席の竈の上には鍋が置かれ、中には見慣れた具材が煮立っている。

 芋と干し肉を入れた、雑炊である。

 味付けは岩塩のみ素材の味をシンプルに活かした味付けだ。


「まぁあるもので作ったから、こんなのしか無いけど」


「でもすごいいい匂いがします。おいしそうです」


 空腹は最高のスパイスというし、腹が減ってれば何でもごちそうだよね。


「そういえば自己紹介がまだだったな、俺は鹿島仁。よろしく」


「カシ、マジン様?」


「いや違うよ?ジンが名前だから、ジンって呼んでくれたらいいよ」


「わかりましたジン様。私はエリザベス・ハントフィールド。親しい者はみなリザと呼ぶのでジン様もリザとお呼びください」


 別に様は付けなくていいんだけど、まぁいいか。


「わかった。とりあえず聞きたいことは色々あるんだけど、リザはどうしてここに?」


 魔物に滅ぼされた村。

 そういう周知のはず。

 相当な理由がなければ若い女が1人でここに訪れることも無いのではないか?


「はい。ここは私の育った村なのです」


   

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