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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第142話 注文の品2

「ほほう、ハーフエルフか……」


 ユキノジョウは値踏みするように、上から下へとシアンを見据えた。


 その眼光に気圧されたシアンは、思わず尻込みしてしまう。


「ユキさん?」


「おお、済まない。なかなか可愛らしい娘さんだな。なるほど、なるほど」


 ユキノジョウはブツブツと独り言を呟きながら、部屋の奥へと姿を消した。


 そして僅かな時間を置いて、両手に抱えるほどの荷を運んできた。


「これほど愛らしい娘なら、君の彼女を着飾りたいという気持ちもわかるな」


「わかって貰えましたか」


 

 ショーツ 衣類 C級



「とりあえず試作品が完成したので、使い心地を試してみてくれ」 


 帝国領から取り寄せた弾力、伸縮性に優れた特殊な生地を使用。フィット感を重視した設計。


 お尻、腰を包み込むようなデザインを採用し、ずり上げしにくい構造に。


 手縫いで仕上げられたレースが豊富にあしらわれ、最高級の華やかさを演出している。


「まだ試作段階だからな。もう少し制作に慣れればB級クラス、いずれはA級クラスを生み出すことも夢ではないだろう」


 現在、人類が生み出せるアイテムの等級はドワーフの鍛冶屋で刀剣類のB級が最高だとされている。


 A級、S級の製法は失われて久しいのだ。


「そうですか。それは楽しみですね」


 確かにこの手触り、素人の俺でも上質な素材、高度な技術を持ってして作られたのだと理解できる1品であった。


 更に机の上には各種下着類の他に、様々な服が並んでいる。


 これらは全て我が家の女性たちのものである。


「……兄様、これは一体?」


 シアンが驚いた表情で、こちらの顔を覗き込んできた。


「狩りに行くときは鎧を着こむのは仕方がない。仕方がないけど……普段は可愛い服を着て欲しいじゃないか……」


 俺は声を絞りだすように答えた。


 受注生産(オーダーメイド)の衣類、装備品は非常に高価だ。


 それが出来るのは豊かな資金が在ってこそ。


 武器防具などの装備品に、借金の返済と金はいくらあっても足りない状況だが、こういった事に金を使うのは間違いではないと確信している。


 言うなればこれは未来への投資だ。


 俺の心が満たされ、明日への活力が湧く。


 非常に理にかなった資産運用なのである。


「シアン、取り敢えず試着してみようか」


「ふぇ!?」




>>>>>




「素晴らしいね。ジン、君の見立ては悪く無いぞ」


「ありがとうございます。ですが、モデルも衣装も一流ですから当然だと思いますよ」


「ふふふ、なるほどな」


 ユキノジョウは着替え終わったシアンを見据え、その作品の出来に満足した様子であった。


「はぅぅぅ……」


 家に篭もりきりの生活だったシアンは、あまり人に慣れていない。


 特に積極的に距離を詰めるタイプの人は苦手の様子だ。


 羞恥に悶えるシアンが更に頬を赤くする。


 

 キャバリア・ブラウス 衣類 C級


 プリーツ・スカート 衣類 C級



「よく似あってる。シアン可愛いぞ」


 そう言って頭を撫でると、彼女は気を良くしたのか少し落ち着いたようだ。


「あ、ありがとうございます。兄様」


 白いブラウス、濃紺のスカート、シンプルで落ち着いた感じがシアンの雰囲気によく合っていた。


 

 今回の品の代金をユキノジョウに収める。


「金貨10枚、確かに受け取った。ああ、そうだ。そうだ。君に見て欲しいものがあったのだ」


 机の上に置かれたのは、両手で抱えるのもやっとという大きさの木箱だった。


「私の師匠が残した物でね。鍵はあるのだが、開かないのだ。何か魔術で封印されているのかもしれない。確か君は鑑定が使えるんだよな?試しに判別して貰えないだろうか」


 鑑定所に持ち込もうと考えていた際に、丁度良く俺が訪れたようだ。


 前に来た際にアイテムの等級を当ててしまったので、鑑定持ちだと察したのだろう。


 鑑定持ちはそこまで珍しい訳でもないので、特に隠す必用もないと思う。


「わかりました。見てみましょう」



 収納箱 家具 D級   状態:施錠



 両手で抱えて持てる程度の木箱である。


 特殊な物ではなく、何処の家庭にも存在する収納に利用されるような一般的な家具の1種だ。


「魔術を付与された形跡はないようですね。鍵を使っても開かないとなると、鍵が悪いのか錠が悪いのかどちらかでしょう」


 ユキノジョウが腕を組んで唸る。

 

「そうか……では、あとは破壊して開けるしか無いか。中に何が入っているか分からないので、破壊するのは避けたかったが仕方ない。慎重にやれば問題ないだろう」


 俺はふと新たに手に入れたスキルのことを思い出し、使えないかどうか試してみたくなった。


「ユキさん、細い金属の棒とか無いですかね?何か鍵の代用になるような……」


「金属の棒?何かするのか?」



 盗賊の道具箱(シーフツール) 雑貨 D級



 ユキノジョウが部屋の奥から用意したのは、所謂ピッキングツールという奴だ。


 小さな木箱の中には、何種類かの加工された金属の棒が収まっている。


 市場で普通に販売されている物らしく、違法性はないらしい。


「そういや、鍵を無くした場合に使おうと思って買っておいたんだった……まぁ、今まで使ったことは無いのだけど」


 俺はユキさんから盗賊の道具箱を受け取り、解錠スキルにポイントを振り込む。


「開きましたよ」


「早いな!」 



 衣類の設計図 書類 C級   完成品:ガーターベルト 


 衣類の設計図 書類 C級   完成品:ストッキング


 衣類の設計図 書類 C級   完成品:ハイソックス


 衣類の設計図 書類 C級   完成品:ベビードール


 衣類の設計図 書類 C級   完成品:ブラジャー



 箱に収まっていたのは獣皮紙の束だった。


「これは、凄いぞ……」


 ユキノジョウが興奮した様子で、獣皮紙を調べる。


「凄いんですか?」


 確かにC級はランクで言えば高い部類だ。そういった意味では凄いのかもしれない。


「ああ、現代では失われたとされていた衣類の設計図だ。何故こんな所に……師匠のコレクションか?いや、それよりも……」


 ブラジャーやハイソックスは、ベイルにもあるようだけどD級までしか無いらしい。


 つまりこれは、高品質の製品を作るための設計図ということだ。


 失われた技術が使われているために、ランクが高いようだとユキノジョウは推測している。


「素材さえあれば、私でも作れる……ふふふ、これは面白くなってきた」


 ユキノジョウは感情を抑えきれない様子で、口元から笑みをこぼすのだった。




 俺は製品が完成した際には、必ず買いに来ると約束をして店を後にした。



※盗賊の道具箱はあっても使わないらしいので、貰って帰りました。

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