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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
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第140話 戦果を祝って

「レヴィア諸島ですか……」


「はい。俺としてはリザ、シアンを置いて行こうとは考えていません。ですがミラさんを残しても行けない。わがままだと思うかもしれませんが、一緒に来てもらえませんか?」


 地図で見るレヴィア諸島は北国の更に北の海上に存在する。


 おそらくこの国とは、かなり気候が違うことだろう。


 アルドラを除いてみんな遠出をしたことないというし、簡単な話しでは無い筈だ。


「わかりました。それじゃ明日から準備しなくてはいけませんね」


 そう言ってミラさんは笑顔で了承してくれた。


「皆一緒がいいです……」


 長湯でのぼせてしまったシアンが床に転がりながら答えた。


「え?いいんですか、そんな簡単に決めてしまって」


 2人は以外なほど簡単に了承してくれた。


 急な話で不安などは無いのだろうか。


「私は森とベイルくらいしか行ったことがないので、正直楽しみですね~。それに皆と一緒なら不安なんてありませんよ」


 ミラさんはまるで遠足気分なのか楽しそうだ。


「薬を用意しなければいけませんね。薬品のレシピが手に入ったので、直ぐ作れるか調べてみます」


 リザはレシピは複数手に入ったので市場で賄える素材なのか、足りないものがあれば何がどれほど足りないのか調べてみるそうだ。


 


 ベランダの柵に腰掛け、月を肴に杯を傾けるアルドラ。


 浴衣のような竜人族の民族衣装、竜衣に袖を通し差し詰め夜涼みといったところか。


 日が落ちて随分経つが未だ気温は高い。通気性の高い竜衣は火照った体に風を通してくれて、今日の様な夜でも快適に過ごさせてくれる。


 アルドラは生身ではないため必要はないのだが、気分の問題らしい。


 それにしても、このおっさんは何を着ても似合うな。



 竜衣はアルドラ、ミラさん、リザ、シアン、俺と全員分用意して貰っている。


 麗しい女性たちの肢体を、薄い布が包み込む。


 胸部や臀部の形がはっきりわかって、この竜衣というのは中々に刺激的だ。


 

 部屋には豪勢な酒と料理が並ぶ。


 今回の探索で20万弱の収益があったのだ。今日はその戦果を祝って贅沢しても、バチは当たらないだろう。


 ベイルの花街で1番の高級店である白猫館は、普通に一晩飲み食いするだけで2万くらいは掛かる。


 勿論、サービスの内容を変えれば上限はいくらでも上がる。



「そんな……遠征だなんて……」


 話に割って入らず、静かに後ろに控えていたモクランが思わず吐露する。


 

 上級の冒険者であれば遠征は珍しくはない。


 他国からの要請もあれば、護衛任務として商隊や貴族に追従することもある。


 まぁ、D級冒険者などであれば珍しいのかもしれない。


「そうですね。期間はわからないけど、しばらくは戻ってこれないと思います」


「そうなんですか……」


 モクランはがっくりと肩を落とした。




「うんうん、少年は年増女の性欲に火を付けてしまったにゃ~。こうなるとあちしでも止めれれないにゃ~」


 いつの間にか部屋に侵入していたタマが、料理を口に頬張りながら答えた。


「こんな高級店じゃやってくる客は金のある爺ばっかりにゃ。たまに肥えた商人か、一儲けした上級冒険者だにゃ。旦那みたいな少年は珍しいのにゃ。お気の毒様にゃ」


「モクラン様が辺境伯の身請け話を蹴ったっていう噂はそっから来てたのか……辺境伯って確か70近い爺さんだもんね」


 タマの隣で料理を頬張りながらミケが答える。


「爺さんは直ぐ死ぬだろうし、死んだ後自分がどうなるかもわからないからにゃ。贅沢は出来ても自由はないだろうし、死にかけの爺さんより若い男が――」


「黙りなさい」


 モクランのアイアンクローがタマを捉えた。


 メキリと鈍い音が頭蓋から響く。


「にゃにゃ!?」


 片手でタマを持ち上げると、そのまま廊下へと放り出された。


 その様を見ていたミケが顔を青ざめる。


「えっと、私はタマを止めに……し、失礼しまーす」


 ミケは後退りしながら廊下に転がるタマを回収し、素早くその場から立ち去った。


「なんか凄い音したけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。彼女意外と丈夫ですから」



 

「それにしても寂しくなりますね……出発は何時頃になるのですか?」 


「一週間後かな」


「そんなに早く……」


 顔を伏せ悩むモクラン。


 彼女は俺の元へ寄り添うようにしなだれ掛かり、顔を近づける。


「私も連れて行って欲しいな……」


「ん?モクランには仕事があるでしょう」


 モクランは白猫館の代表を務めている。


 こうして俺が店に訪れれば顔を出してくれるが、暇なわけではない。


「仕事は誰かに引き継がせればいいんです。私は小猫ではありませんから身請け代も掛かりませんし。どうですか?」


 竜衣という薄い布に包まれたモクランの体。


 先程の風呂での出来事を思い出し、胸が熱くなる思いがした。


「そんな、ダメです!」


 リザが思わず立ち上がり悲鳴を上げた。


「おっぱい好きのジン様がモクランさんを受け入れたりしたら……私の価値が……」


 立ち眩みがしたのか、思わずよろける。


 素早く身を寄せて抱きとめた。


「ジン様ぁ……」


「……俺は何も言ってないぞ」

 

「リザさん安心して下さい。第一夫人にリザさん、第二夫人にシアンさん、私は愛人枠で良いですから。お二人の邪魔はしませんよ。たまに味見するだけで良いんです」


 そう言って、モクランは笑顔で答えた。


 


 


 

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