表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第1章 漂流者
15/274

第14話 魔導騎士

 地に膝を付き、動けない俺の目の前にウルバスが迫る。


 ギイィィィ


 言葉にならない呻き声を上げ、こちらを睨みつけている。

 

 いまだ体の自由は効かず、俺の背筋に冷たいものがはしった。


『ジン逃げろーッ』


「うおおおお」


 俺は力を振り絞るが、状況はかわらず、焦りが募る。

 そしてウルバスの腕が、ゆっくりと振り上げられ、


 ドォウッ


「!?」


 俺はわけもわからず、その場から吹っ飛ばされた。

 

『なんじゃ!?』


 吹っ飛ばされた俺は顔面から地面に着地し、地面を転がった。


「い、痛い……」


 ドォウッ


 ドォウッ


 ドォウッ


『これは、風球か!いったい何処から?』


 風の塊が、雨あられのように降り注ぐ。

 俺を吹き飛ばし、周囲にあるインプたちの骸を吹き飛ばし、あたりの地面を抉っていく。


 風球が飛んでる射線上に目をやると、ある廃屋の屋根に人影があった。


「生きてるか御仁、助太刀いたすぞ!」


『誰じゃ?』


 全身板金鎧に身を包んだ大柄な男が、そこに立っていた。

 手には長い杖を持ち、獣毛の付いた襟首に真っ赤なマントをなびかせている。

 髑髏を模した禍々しい兜が異様さを際立たせていた。


「それえぇぇぇーーーいい」


 長い杖を槍のように構え、先端に魔力を集中させると、風球が飛び出した。

 連続で発射された風球は、ウルバスにたて続けに襲いかかり、その動きを封じる。

 ダメージは無さそうだが、動きを邪魔するには十分なようで、ウルバスは防御の体制のまま身動きが出来ないようだった。


「なんかわからんけど、助かった。あれアルドラさんの知り合い?」


『知らんぞ。エルフ族で金属甲冑を身につける者はおらんだろうから、人族の冒険者じゃろう』


 無数に放たれる風球は、ウルバスを中心に着弾している。

 なかなかの命中率だ。

 それにしても愉快な人が来たものだ。

 

 あの騎士が時間を稼いでくれたお陰で、体の感覚も戻ってきた。


「人に害を成す、悪鬼魍魎どもめ、このわしが成敗してくれる!」


 なんかあの人、ノリノリだな。

 しかしあんなボロ屋で騒いでいたら、屋根抜けねぇか?


 バキィ


「あ」


 落ちた。


 髑髏騎士が落下した廃屋へとインプたちが群がっていく。


「……大丈夫かアレ?」


『問題無いじゃろ、インプの爪程度じゃ金属鎧にゃ傷も付けれんじゃろうからな。それよりも……』


「そうですね。俺が止めるしかないか」


『すまんな。本当ならわしがやらねば、ならんことなんじゃが』


「あの黒い攻撃は魔眼持ちじゃないと見えないようだし、これも何かの縁っていうことですよ」


 ウルバスの体は全身がヒビ割れたように変化している。

 顔にも縦にヒビが入り、まるで涙を流している様にも見えた。

 アルドラさんも身内のあんな痛ましい姿をいつまでも見ていたくはないだろう。

 なら俺がここで決着をつけるしか無い。


 俺は腰の剣を抜き放った。


 火魔術 C級 筋力強化

 

 土魔術 C級 耐久強化


 雷魔術 C級 雷付与


 俺はスキルポイントを変更しつつ、バフ魔術を掛ける。

 

 剣術 C級

 

 ポイントを剣術に設定しなおして、準備完了だ。

 俺は青銅剣に魔力を注ぎ込む。

 魔力に呼応して光の強さが増したような気がした。


 ギイイイイイイイィィーーーーーッ


 ウルバスは奇声を発し、黒球を連続で放ってくる。

 俺はそれを紙一重で躱していく。

 剣など握ったのは初めてのことだが、ポイントを剣術に設定すると、どう使えばいいのか、どう動けばいいのか体が自然に反応してくれるようだ。

 

 俺は脇を通り過ぎる黒球を剣で切り裂いてみる。


 サクッ


 なんの抵抗も無く黒球は分断され、その直後掻き消されたように消失した。


「行けそうだな」


 俺はウルバスに向かって直進する。

 抵抗するかのように黒球を放ってくるが、剣で払いそれらを全て消失させる。

 手を前に突き出すような予備動作が攻撃のタイミングを知らせてくれるため、今の俺でも十分に対応できる。

 俺は渦を巻くように、ウルバスに迫る。

 黒球を時に回避し、剣で払い、消失させる。


 目前に迫る俺に、最後の抵抗とばかりにいままでで一番の巨大な黒球を生み出すが、ここまで来てそのタメの長い攻撃は失敗だった。

 俺は全ての力を込めて、黒球ごと袈裟斬りに切り捨てたのだった。


 手応えはあった。


 魔術によって強化された魔剣の一撃。

 効いていないはずがない。


 俺は距離を取り、様子を伺う。


 ウルバスを見るとかろうじて立っていると言った様子だ。

 体に大きな亀裂が斜めに入っている。

 俺が付けたものだ。


 まだ倒れないなら、もう一撃。

 そう思った矢先、俺は剣を落としてしまった。

 手に力が入らない。


 ウルバスを見ると、体中からどす黒いオーラが溢れでている。

 それはまるで炎のように天に向かって立ち上っているように見えた。


「この感じ、またかよ」

 

 ウルバスの体がボロボロと崩れていく。

 どうやら満身創痍のようだが、まだ足掻くつもりでいるらしい。


『これは……まずいのう』


 俺の側にたつ、アルドラさんがぽつりとこぼす。


『ありゃ自爆するつもりじゃぞ』


 俺は地面に膝を付く。

 すでに立つことも、ままならない。


「どういうこと?」


『ありゃ魔力吸収じゃ広範囲のな。お主もたしか使えるじゃろう?おそらく周囲の、インプの骸からも魔力を集めておる。あの状態でここまで大量の魔力を集める意図といえば、それくらいしか思いつかん』 


 魔眼を発動させると、確かに周囲からオーラのような靄がウルバスに集まってきているのが見える。

 

「自爆ってどんな威力?」


『わからん。少なくとも村は吹っ飛びそうじゃの』


 十分な威力だな。


 俺は気合で剣を拾い、地面に突き立て立ち上がる。

 体からどんどん魔力が吸われていくのを感じる。

 全身の毛穴から、何かが放出されている気分だ。

 擽ったいような気持ち悪いような、妙な感覚で、うまく力が入らない。


 だがあと一撃。

 それでウルバスを止める。


 俺は足を引きずる様に、ゆっくりと迫る。

 徐々に失われる魔力。

 そういえば魔力って空になったら、どうなるんだっけ……


 足が重い、力が入らない。

 ウルバスまでもう目の前だが、これ以上足が前に進まないのだ。

 

 ビュオッ


 その時、一陣の風が吹いた。

 空気を裂く音とともに、鉄の固まりが飛んでくる。


「おりゃあぁーッ」


 髑髏騎士だった。


 アメフト選手のタックルのような勢いで、ウルバスに激突する。

 まるで交通事故である。

 突然の襲来に成すすべなく、ウルバスは吹っ飛ばされて、俺の足元まで転がってきた。


「ナイス!」


 俺は髑髏騎士へサムズアップする。

 髑髏騎士は激突した勢いのまま転がっていった。


 魔力吸収はまだ発動中のようだ。

 俺の魔力も吸われ続けている。

 

 俺はアルドラさんを見た。


『もう終わりにしてやってくれ』


 俺は静かに頷くと、地面に横たわるウルバスの首元に剣を突き入れた。

 抵抗もなく差し込まれる剣は、首もとをたやすく通過し地面に刺さる。

 その刹那、ウルバスの体は、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。


 内側に溜め込まれていた魔力はまるで靄のように、あたりに漂い、やがて散り散りに飛散し消失した。


「……終わったか」


『いや、まだじゃ』


 俺は驚いた顔でアルドラさんを見る。


『高濃度の魔素に引き寄せられて、インプが興奮しとる。あれを片付けるまで今日はゆっくり寝れんのう』


「まじかよ……」


 俺の長い夜はまだ終わらなかった。


 


   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 1章の終わりまで読ませて頂きましたが、説明不足や描写不足が多い気がしました。 魔法のランクがEからDに上がるのにポイントいくら必要なの6Lvになったら試してみようと言っているのに、あっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ