表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第3章 氷壁の封印と生贄の姫巫女
144/274

第131話 ゴブリン盗賊団9

 クレイモアと外套は俺が使用し、魔導石は女性たちで分配、フランシスカはシアンの所有とした。


 両手剣にしては小型で取り回し易いクレイモアは、俺には丁度良いがアルドラには物足りないようだ。


 2ヶ月の間にアルドラから両手剣の扱いも学んでいる。スキルの補正もあり実践を繰り返せば使い物にはなるだろう。


 猟兵の外套は常磐色(ハンターグリーン)ともいうべき濃い緑色の外套だ。


 影隠の外套が損傷が激しく使い物にならなくなってしまったので、代わりのものとして丁度良かった。サイズ的にも問題無さそうだ。


 斬撃耐性というのも魅力的だし、このまま身につけてしまおう。


「希少な魔導石がこんなに。売れば1つ金貨3枚はしますよ」


 希少度はE級だが作れる者が少なく、供給される絶対数が少ないらしい。そのため利用価値は高いものの手に入りづらいのだ。


「使える装備関係は売らないで使っていこう。処分するのはあくまで自分たちでは使わないものだけで」


「それが良いじゃろう」


 フランシスカは所持しているだけで筋力強化が期待できるのだと思われる。ムーンソードの月光もそのようだしな。


 それであればシアンには丁度いいだろう。石弓のハンドルを回すにも力は必要なのだ。体を鍛えろと言っても今直ぐどうこうなるものでもないし、ガチムチになったシアンは正直ちょっと嫌だ。


「私には勿体無い気が……」


「俺のために受け取ってくれ。それぞれの身を守る為にも、できるだけ皆の装備を充実させたい」


 シアンの所持していたハンドアクスを受け取り、無理矢理交換に応じさせる。


 彼女は遠慮していたが、ここは応じてもらう。装備不十分なんかで怪我をさせたくはないのだ。


 フランシスカはハンドアクスと比べても大きさ重量とも、それほど大差無いようだ。差異はあるだろうが、その辺りは使っていけば慣れるだろう。


 史実なんかだと投擲用の武器だった気がするが、付与された効果をみると、この世界のフランシスカも似たようなものなのかもしれない。




【資材室】


 隣の部屋に移動して探索を始める。


 ここも荒らされてはいるが、武器庫程ではない。


 瓦礫に埋もれた宝箱を発見したので、リザの見つけた鍵を使ってみると開けることができた。



 魔石 素材 E級  ×32


 魔石 素材 D級  ×56


 魔晶石 素材 F級 ×3


 エリオール鋼 素材 C級


 アイアンインゴット 素材 C級


 銀製の女神像 調度品 D級


 鼠殺し 薬品 D級



「これまた結構なお宝が……」


 どれも売却すれば、いい値が付きそうな物ばかりだな。


 エリオール鋼ってのは何なんだろうか。


「さぁな。わしは聞いたことがない」


 女性たちも知らないようだ。ヴィムあたりに聞けば、わかるだろうか。


 長方形の金属の塊。全体は鈍い灰銀色で、片手で持てるくらいの大きさだ。

 



【資料室】


 他の部屋と同じような作りで、やはり荒らされているため価値のあるものは少なそうだ。


 ただ資料室というなら、ここで何が行われていたのか情報が得られるかもしれない。


 まぁ、俺は警察でもなければ、そういった任務でここを訪れたわけでもないので調べる義務はないのだが。


 だがせっかくなので探索ついでに少し調べてみよう。何かわかれば報告もしやすく、情報料として報酬も期待できるだろしな。


 

 魔剣の設計図 書類 C級   

 完成品:聖銀のクレイモア

 

 薬品の設計図 書類 D級   

 完成品:鼠殺し(ラットキラー)   


 薬品の設計図 書類 C級   

 完成品:傷薬


 薬品の設計図 書類 D級   

 完成品:燃える水


 魔法薬の設計図 書類 D級   

 完成品:魅了耐性(チャームレジスト)ポーション


 魔法薬の設計図 書類 C級   

 完成品:人魚の舞踏(マーメイドダンス)


 風の魔導書 書物 C級   

 修得魔術:逆風(ヘッドウィンド)


 火の魔導書 書物 C級   

 修得魔術:火葬(インシナレート)


 

 施錠された宝箱は発見出来なかったが、崩れた資料棚から幾つか有用と思わる品を見つけたので回収した。


 設計図には作成に必要な素材も記載されているようだ。たくさんあるし帰ってからゆっくり確認したいと思う。


 魔導書というのは、魔術師が魔術文字を使って書き上げた特殊な書物である。


 1つの魔導書には1つの魔術が記録されており、声に出して繰り返し読むことでその身に染み込ませる。朗読者が魔術を修得すると、魔導書から文字が消え魔導書としての価値を失う。つまり魔導書1冊からは1人、1度しか修得できないのだ。術を修得する朗読は1度読めばいいというものではなく、修得するまで繰り返し読まなければいけない。高度な魔術ほど厚い魔導書なので、修得には長い時間がかかるという。


「私の知らない薬の設計図(レシピ)がこんなに……。ジン様のお役に立てるよう、頑張って作りますね」


「ああ、頼りにしてるよ」



 その後、しばらく部屋内部を漁ってみたものの残された書類からは、この場所の秘密に迫る重要な情報はないように思えた。


 1つ1つ丁寧に調べるとなると、相当な時間が掛かると思われる。調べるのはこれまでとして、後はギルドに専門の人を派遣して貰おう。




「今なにか物音が聞こえなかったか?」  


 何か違和感を感じ、リザに向き直る。


「いえ、私は何も……」


「どうかしたのか?」


 アルドラも感じていない様子なので、気のせいだろうか。


「いや、部屋が揺れたような気がしただけだ」


 それにしても、ゴブリンのボスが見当たらない。


 ゴブリン自体も見なくなったし、前の襲撃で倒しすぎたのだろうか。まさかあれで全部とは思えないが。


 この辺りもそろそろ探し尽くしたと思うのだが、まだ探していない場所があるのだろうか。


「魔力探知の感覚では、魔物の存在は感じる。しかしこの辺りの瘴気濃度は、かなり高いようだからあまり当てにならないだろうな」


 周辺の地図の様子も、あと僅かで完成だ。


 虱潰しに探せば何かしら見つかるだろう。




>>>>>




 部屋から出た俺達は地図の空白部分、まだ探索の完了していない地点を虱潰しに埋めていく。


 まだ見つかっていない部屋や、ゴブリンの寝床となるような穴蔵があるはずだ。


 そう思って洞窟内の広場を彷徨いていると、見つけてしまった。


 

 コープス 死霊Lv36

 弱点:光 耐性:闇氷

 スキル 剣術


 コープス 死霊Lv38

 弱点:光 耐性:闇氷

 スキル 盾術


 コープス 死霊Lv39

 弱点:光 耐性:闇氷

 スキル 槍術



 どこから湧いて出てきたのか。


 つい先程まで部屋で2体見た限りだったはずの魔物が、広場のあちこちで彷徨いている。


 急に湧きだした?


 まるでゲームの再出現(リポップ)のようだ。


 

「ジン様!」


 リザが声を荒げるのと同時に、警戒が反応する。


 一体何だ?


 その答えは、地の底から現れた。


 地面の土が不自然に盛り上がり、亡者の戦士が地中より姿を現す。


 土葬された死者が墓場から蘇るかのように、まるでB級ホラー映画のワンシーンのような展開が目の前で起きていた。


 どうするか。


 とは言っても、このような異常事態では戻る他に選択肢はないだろう。探索は中止だ。冒険は安全第一が基本だからな。


 そう思った矢先にシアンが何かを見つけた。


「兄様あれを!」


 シアンの指し示す方角には木扉があった。位置的にまだ調べていない部屋のようである。


 その部屋の存在が、更に俺を悩ませる。


「ジン、新手の大物じゃぞ」


 アルドラの呼びかけに応じて見た先には、この場所にいるはずのない見慣れたものが存在していた。



 ウッドゴーレム 魔導兵Lv36

 弱点:火雷 耐性:水光

 スキル 木工


 ウッドゴーレム 魔導兵Lv34

 弱点:火雷 耐性:水光

 スキル 木工

 

 ウッドゴーレム 魔導兵Lv35

 弱点:火雷 耐性:水光

 スキル 木工



 身長5、6メートルはあろうかという樹木の集合体。


 木材が寄り集まって出来上がった木人形。


 ウッドゴーレムである。


 ここから距離はあるが、複数のゴーレムが洞窟内を徘徊している。


 俺達が侵入した場所は狭くて、とてもこんな巨体が通れるものではない。


 となると何処からやってきたんだ?


「ジン、のんびりしている暇はなさそうじゃ。移動したほうが良い」


「おっと、そうだった」


 土中から出現したコープスは無手だがレベルは31。生まれたばかりの魔物ではないようだ。もしかしたら土中で寝ていたのだろうか。


 騒ぎを起こすと周囲のコープスも反応してしまう可能性がある。派手な魔術は控えたほうがいいだろう。


「フンッ」


 アルドラの斬撃がコープスの腕の1本を切り落とす。怯む気配が無いことから、痛みはないのだと思われる。まぁ、ゾンビっぽいしな。いや、むしろミイラが近いかもしれない。


 間を置かず、俺は瞬時に懐へと飛び込むとムーンソードで斬撃の乱舞を放つ。魔物の体は削りきられ、反撃を許さないアルドラの更なる追撃が止めとなった。


「ジン様、あの最後の部屋も調べてしまいましょう。おそらくあそこに件の魔物がいるはずです」


 リザの直感か。


 まぁ、調べていないのは其処ぐらいなものなので、直感も何もないだろうが。


 どうしようかと悩む俺に、そっと寄り添う影があった。


 ミラさんだった。


 一瞬ドキリとさせられたが、どうやら気づかないうちに傷を負っていたらしい。患部に手をかざす様に傷を癒やしてくれる。暖かな光だ。


「ここまで来たのだから行きましょう、ジンさん」


 ミラさんはそう言って、にっこりと微笑む。


「怪我は私が治します。それほど危険はないでしょう。ジンさんとアルドラ様がいれば、大抵の危機は乗り越えられるでしょうから」


 まるで恋人のように腕を絡め、顔を覗きこむようにして微笑みかけてくるミラさんに、胸を熱くするのは良くないことなのだろうか。


 ミラさんはイマイチわかってないようだが、他に例えようのない美女であるリザの実母だ。美しく無いはずがない。


 大人の雰囲気を持ちつつ、それでいて若々しい矛盾した魅力。エルフ特有の神秘性。どこか気怠げでアンニュイな空気。

 

 

 流石にリザの母に手を出すなどというのは自重したいところだが、こうも隙を見せられると俺の鉄の精神力も揺らいでしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ