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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第105話 森は静かに動き出す

「うおおおおおおっ!?」


「うわあああああ!?」


 突然背後から肩を叩かれて、思わず驚きの声をあげる。


 叩いた相手も俺の声に驚いたのか、一緒になって声をあげていた。


 振り向くとそこにはリュカが立っていた。


「急に叫ばないでよ!驚いたじゃない!」


 驚かせたのはアンタだ!という抗議の声を飲み込んで、俺は呼吸を整えた。


 リザも口を抑えて目を丸くし固まっている。


 幸いなことに巨人たちには気づかれなかったようだ。



「……なんでリュカさんがここに?」


 燃えるような赤い髪にややツリ目がちの緋色の瞳。


 緩いウェーブの掛かったセミロングの髪に、頭頂部には三角の獣耳。

 腰からは豊かな毛量の紅いふさふさとした尾が揺れていた。


 彼女はベイルで唯一のS級冒険者、獣狼族の女剣士リュカである。


「もちろん森の調査に決まってるでしょう。なにか異様な気配を感じてこのあたりを回ってたんだけど……あぁ、さっきの落雷はアレかぁ」


 リュカの視線は紫色の肌を持つ雷巨人に注がれた。


 この濃い瘴気の中でも軽装で自由に行動できるのは、流石S級ということなのか。


「それであなた達はこんな時に、こんな所で何をしてるのかな?」


 そう笑顔を向けて訪ねてくるリュカの声には、若干の怒気が含まれていた。


 それに気がついた俺とリザは互いに顔を見合わせ、思わず気後れしてしまうのであった。


 


>>>>>




 俺はリュカへこれまでの経緯を説明した。


「なるほどね。まぁいいわ。それなら一刻も早く街に戻ったほうがいいわね」


 森へ来たのがミラのためであると理解してくれたのか、どうやら怒気を収め落ち着いてくれたようだ。


 リュカの視線が、俺の体を下から上へと舐めるように動く。


 それだけで腕のことは勿論、肉体の状態も看破されたようだ。


「その状態じゃまともに戦えないでしょ。できるだけ戦闘は避けて、ベイルへ向かいなさい。そしてゼストに【探知】で得た情報を伝えて頂戴」


 いまや高濃度の瘴気は、大森林を覆い尽くそうかというほどに広がっているらしい。


 高ランクの斥候たちの【探知】も全容を把握できないほどに。


「それにしてもそんなに高ランクの【探知】スキル持ってたんだ?たしかジンはまだ冒険者の階級はEじゃなかったかしら……?」


 リュカの訝しげな視線を笑って誤魔化した。


「リュカさんはこれからどうするんですか?」


 困った顔をしている俺に助け舟をだしてくれたのか、リザが話に割って入る。


 リュカは【冒険者たるもの他人のスキルをとやかく詮索しない】という暗黙の了解を思い出してくれたようで、それ以上スキルについて追求してくることはなかった。


「とりあえずアレをなんとかしようかなー」


 リュカの視線の先には、黒巨人の骸の周りに居座る雷巨人とその配下たちがいた。


 彼女は始末をつけたら黒巨人の魔石も回収してギルドに届けてくれる約束をしてくれた。


「え?大丈夫ですか?」


 俺は思わず驚愕の声をあげる。


「大丈夫よ。心配しなくても勝手に懐に入れたりなんかしないから。これでもS級なんだから、お金は結構持ってるのよ?」


 ふふん。と平らな胸を張るリュカ。


「いえ、そういう意味ではなく……」


「あら私の心配をしてくれてるの?」


 俺の発言の意味を理解した彼女が見せるその笑顔は、いつもの優しくも厳しいものであったが、どこか獰猛な野生の獣にも見えた。


 あの巨人がベイルまで来てしまうと面倒なので、ここで片付けてしまうのだという。


 配下の巨人も少ないので、今がチャンスらしい。それでもレベル40前後の5メートルクラスが6体もいるのだが。


 まぁアルドラの戦いぶりを見ても、英雄と呼ばれる存在の強さは俺の理解を超えたものだ。装備の整っていないアルドラでああなのだ。リュカの心配など不要ということだろう。


「わかりました。俺たちはベイルへ戻ります。あと魔人のことなんですが……」


「わかってる。余裕があったら探してみるね。あなたもリザちゃんの事しっかり守ってあげなさいよ」


「はい。後はお願いします」


 というものの、俺のほうが助けられることも多いんだよな……


 リュカに礼を言って、俺たちはその場を後にした。


 

 




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