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異世界×サバイバー  作者: 佐藤清十郎
第2章 自由都市ベイル
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第104話 雷嵐

 目が覚めると傍らには一糸まとわぬ姿のリザが眠っていた。


 焚き火は勢いをなくし種火となっている。夏も近いためそれほどでもないが、朝方はまだ少し冷える。


「んっ……んぅ……」


 寄り添うように眠る彼女は、静かな寝息を立てていた。いまだ彼女は深い眠りにあるようで、目覚める気配はない。


 緑とも青ともつかない不思議な髪色。光の当たり加減では金髪にも見えるそれは宝石の翡翠を思わせる。


 雪のように白い肌は傷もくすみも1つもない。出るところは出ていて、引っ込むべきところは引っ込んでいる。そんな感じだ。


 一言でいえば女性らしい魅力的な体つきなのだ。


 そっと毛布をめくって目の保養をする。


「……くちゅんっ」


 眠りの中にいるリザが、小さくクシャミをしたので毛布を戻した。


 これ以上は、いろいろ我慢できなくなりそうだ。


 リザも疲れたのだろう。もう少し寝かせておこう。もしかしたら俺が余計に疲れさせてしまったのかもしれないが……



 俺は毛布を抜けだして身支度を整える。


 昨夜リザからたっぷり供給してもらったので魔力はほぼ全快していた。


 いつのまにかレベルがかなり上がっている。


 レベルの上がり方というのはイマイチわからない所があるが、やはり黒い巨人との戦闘が身になったということだろうか。


 レベルは低い時ほど上がりやすいということだし、急激な上昇はそういった理由なのだろう。


 

 冒険者Lv22 精霊使いLv14 スキルポイント 0/49


【闇魔術】C級


【警戒】 C級


【探知】 S級 



 とりあえず周囲の様子を探る。


 意識を集中させて【探知】の範囲を広げていく。


「……うおっ……まじかよ」


 広範囲【探知】が拾ってきた情報に思わず声が漏れた。


 外に薄明かりが差している。もうすぐ夜明けだ。


「……ジン様?」


 ぼんやりと眠気眼のリザが、体を起こしてこちらの様子を伺っている。


 俺の声で起こしてしまったか。


 ……毛布で体を隠しているのが、恥じらいもありつつ、隠し切れない曲線が要所で見えてとても良い。おっと、今はそんなことを考えている場合ではなかった。


「おはようリザ。いきなりで申し訳ないけど、すぐに支度してくれ。出発する」




>>>>>




 リザの着替えを待って外に出た。朝からいいものを見られて眼福であった。


「……ジン様?」


「いやっ、なんでもない」


 思わず顔がにやけてしまったようだ。気を引き締め直す。


 外に出て見なければわからなかったが、高濃度の瘴気に周囲は包まれていた。


 朝靄の如きそれは、視界が数メートルしか効かないような濃い霧状をしている。


 魔物の徘徊する森で、このような視界が不明瞭な時に行動するのは危険を伴うだろうが、ここに留まっていても安全を得られないのは言うまでもなかった。



【探知】は使用について、今のところ特に違和感はない。であれば、一刻も早くここから立ち去らなければならない。


「どうしたんですか?」


 俺の焦りがリザに伝わったのか、不安げな表情で俺の顔を覗き込んでくる。


 隠しても仕方がないので【探知】で知り得た情報をありのまま伝えた。


「……え?」


 リザが驚いた表情のまま固まっている。


 それもそうか。これからベイルが経験するのは最悪の異常発生なのだろうから。



 広範囲【探知】で感じた無数の反応。数えきれないほどのサイクロプスの群れが、ベイルへ向けて移動中だった。唯一の救いは彼らの歩みが遅いくらいか。


「急いでギルドへ戻ろう。もうギルドでも把握しているだろうが、万が一まだ知れてない場合は大変なことになる」


 行けば召集が発令されているかもしれない。無視するのも面倒事になってしまうので、急いで向かったほうがいいだろう。


 アルドラの手を借りることになりそうだ。手持ちがないこともあるし、黒い巨人の魔石も気になる。出来るだけ回収したい。


 そう思って黒い巨人の骸へと向かうと【探知】がこちらへと向かってくる1団を補足した。


 魔力の感じから巨人には間違いない。


 黒い巨人の骸の直ぐ側まで来ると、その魔力を感じた相手が姿を見せる。



 サイクロプス・バーサーカー 妖魔Lv46


 サイクロプス 妖魔Lv41


 サイクロプス 妖魔Lv39


 サイクロプス 妖魔Lv40


 

 濃い紫色の肌に、黒い蛇、もしくは炎のような刺青にも似た文様が両腕に入った巨人。上半身、特に両腕が異様に発達している。筋肉の怪物といった様相である。手に持つ棍棒は巨大な魔獣から得た大腿骨をそのまま利用したといった雰囲気だ。首には装飾品なのか植物の蔓が巻き付いている。


 その巨人を中心に大型の巨人が周囲を守るように彷徨いていた。まるで従者のようだ。


 一目見て紫色の巨人バーサーカーは別格だとわかった。多分黒い巨人より単純な戦闘力は上なのではないだろうか。レベルだけが理由ではない。周囲へと放つ威圧感、内包する魔力、体付き、どれも脅威を感じさせる十分なものがあった。


 仲間の死を弔っているのだろうか。黒い巨人の側を落ち込んだように佇んでいた。


 突如、紫の巨人は狂ったかのような雄叫びを上げる。


「ウグゥアアアアアアァァァァァァァーーーーーーッッ!!」


 勢い良く棍棒を振り上げると、その体に稲妻が纏わり付き、天に向かって幾つもの稲妻が放たれた。


 そして渾身の力を込めて振り下ろす。


 大地を陥没させるかのような衝撃と音が響き、地面が揺れた。同時に周囲へと無数の落雷が降り注ぐ。


 大気を引き裂くバリバリという音と共に、次々と落雷が木々を破壊していった。


 木から大地へと伝う稲妻が、まるで生き物のように暴れ回り伝染していく。ただの落雷ではない。範囲攻撃、そういった魔術の類だ。


 俺はリザを庇うように覆い隠し身を屈めた。そして巨人が起こした雷嵐が、一瞬で俺たちのいる地点まで到達し走り抜けた。


「大丈夫か?」


 外套の影に隠れたリザが顔をだす。


「はい。少し痺れたような気がしますが、痛みというほどのことはありません」


 少し驚きましたが。と彼女は胸を撫で下ろした。


 俺は雷精霊の加護のお陰で、雷魔術の類が効かないのだ。


 自らに【雷撃】を向けるのは気が引けるので試したことはないが、今の攻撃もダメージは感じなかったしやはり効かないのだろう。




「魔石を回収するのは無理そうだな」


 俺の呟きにリザも頷く。


【隠蔽】を付与しているものの、あの希少種には見つかる気がした。まったくの勘だが、危険な感じがするのだ。サイクロプスは目が良いというし、近づかないほうがいいだろう。特に希少種というのは、得体のしれない感じがあるからな。


 息を整えこの場を立ち去ろうとした時、不意に肩を叩くものがいた。

 

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