乙女の童話『赤ずきん』
今はもういない赤ずきんの物語。
知る必要もないのだけれど、興味があるならページを捲って御覧なさい。
心の優しいアナタは、きっと後悔するでしょうけど。
むかしむかし……でもないけれど、あるところに、赤ずきんと呼ばれる、それはそれはかわいい、おんなのこが住んでいました。
赤ずきんは、蝶よ花よと育てられ、何の不自由もなく暮らしていたのですが、退屈な毎日に飽き飽きしていました。
そんなある日の事、赤ずきんはいつものようにおばあさんの家にお使いに行った帰り道、一匹の狼に出会います。
この時、狼は赤ずきんに一目惚れしてしまったのです。
しかし、赤ずきんは両親から狼とお話ししてはいけませんよ、と言いつけられていたので、話をせず逃げるように立ち去りました。
明くる日も、また明くる日も、狼は赤ずきんに話しかけます。
次第に、赤ずきんも狼に心を許し、お話しするようになりました。
今まで、自分が知らなかった世界を教えてくれる狼に、赤ずきんはだんだん心惹かれていったのです。
二人の間に、愛が芽生えるまで、そう時間はかかりませんでした。
狼は、群れの親分だったのですが、赤ずきんのために、群れを離れることを決意しました。
しかし、群の中にはそれを快く思わない悪い狼もいたのです。
その悪い狼は、赤ずきんさえいなくなってしまえば、群れに親分が帰ってくるだろうと考えました。
ある日、赤ずきんがいつものようにお使いから帰る途中、一匹の見知らぬ狼に出会います。
その狼は、自分が親分狼の手下であることを赤ずきんに話し、親分狼の為に、内緒でお誕生会を開きたいと提案しました。
そうです、今日は親分狼の誕生日だったのです。
当然、赤ずきんは誕生日を知っていたので、親分狼の為に手作りの襟巻きと、白い薔薇の花をあげようと、用意していました。
親分狼の名前を出されて、赤ずきんはその知らない狼をすっかり信用してしまいます。
その狼に言われるままについて行く赤ずきん。
やがて、二人は深い森の奥にたどり着きました。
気がつけば二人の周りに狼が集まってきています。
なんと、そこは悪い狼たちの住みかだったのです。
気付いた時にはすでに遅く、可哀想な赤ずきんは、悪い狼たちの餌食になってしまいました。
手作りの襟巻きは切り裂かれ、白い薔薇の花は奪われてしまいます。
赤ずきんは、嘆き悲しみながら自分の住む家に戻り、心を閉ざしました。
そして、いつまでもいつまでも眠り続けました。
一方、その事を悪い狼から直接聞かされた親分狼は、怒り狂い、悪い狼たちを皆殺しにしてしまいます。
そして、時が経ちました。
親分狼は、いまだに眠る赤ずきんのお見舞いに行こうにも、人間たちによって追い払われて、近づくことができません。
悲しみに暮れる親分狼は今日もまた、赤ずきんの名を呼びながら、独りで鳴くのでした。