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第十二話 魔法の小瓶

その瓶は、秘密の薬棚の一番奥にありました。

鍵のかかった小箱の中で、長い間静かに眠っていました。


その瓶は、勇気の瓶でした。

ずっと昔から毒島さんに勇気を与えてくれた、魔法の詰まった瓶でした。


その瓶の中身こそが、川崎さんの求めた物でした。

ほんの少しの量で、証拠も残さず、「人を殺せる薬」。


どんなにつらい事があった日も、どんなに腹が立った日も、帰ってきてこの薬を見ると、毒島さんは不思議と落ち着いたものでした。

 例えば誰かに馬鹿にされた日、部屋の中でこっそりと箱の鍵を開けて、中の薬を取り出して見るのです。そうしながら自分を馬鹿にした人のことを思い出します。するとたちまち、どんなことでも些細なことに思えて、簡単に許せてしまえるのです。

 ブス? チビ? それがどうしたって言うの。私はあんた達をいつでも殺せる。その気になれば誰だって殺せる。証拠も残さずに社会から抹殺できるんだ。ふふふふふ。

 それが毒島さんの秘密でした。


 でも……今まで毒島さんは、本当にこの薬を使ったことは一度もありませんでした。

 持っているだけで十分だったのです。本当に使わなくてもこの薬は最高の効果を発揮してくれていたのです。もし本当に使ったら……。

 だけど、今、川崎さんが、毒島さんの始めての友達が、この薬の力を欲しがっているのです。毒を。人を殺せる力を。

 川崎さんはこの薬を……、きっと、塚田君に使うつもりなのでしょう。何か酷い別れ方をしたから? 好きなのに、手に入らないから? 本当のことは毒島さんには分かりません。

 確かなのは、毒島さんは川崎さんに「そんなことやめなよ」と言うつもりはないっていうことでした。フラれたからって気にすることないよ、とか、人を殺すなんてよくないことだよ、なんてことは、毒島さんは毛ほども思ってないのです。

 ユウちゃんがそうしたいなら、私は協力するよ。


 毒島さんは肌身離さず持っていた交通安全のお守りの中から、小さな銀色の鍵を取り出し、秘密の箱を開けました。そしてその中から、まだ封を切られていない勇気の瓶を取り出しました。


 実験をしなくちゃ。

 毒島さんは思いました。そうだ、本当にこの薬が効くのかどうか、予め実験をしておかなくちゃ。本当に人を殺せるのか。本当に証拠は何も残らないのか。

 動物実験では駄目だ。これだけは。


 本当の


 人間で


 実験をしなくちゃ。



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