バレンタイン
「俺、今年のバレンタインのチョコいらないから。」
はぁ!?なにそれ!それって、もしかしなくても
「遠まわしに私と別れたいってこと?」
バレンタインを目前とした彼氏からのまさかの言葉。
私ってば別れ話を切り出されたの?
嘘だよね?そんな前兆なかったよ。
え?マジで?突然過ぎない?
「バッ!ッんなわけあるか!」
焦りだす彼氏を見るとホッとするわ。
別れ話じゃないの?
本当に?
じゃあなんで?・・・本当に別れ話じゃないよね?
「なら、なんでチョコいらないなんて言ったの?・・・チョコ大好きでしょ?○▼※×のメーカーチョコが特に好きじゃないの。なのになんで?」
そう、コイツってばチョコ大好きだから職場でもらう義理チョコ等を喜んでもらい『こんなチョコも売ってるんだ♪』なんて言って私と一緒食べようとするぐらいチョコ好きだ。
・・・他の女からもらったチョコをうれしそうに食べるってどうよと思うわよ。一応イケメンの部類に入る彼がどう見ても本命チョコだろってのを貰って来ると腹が立つけど、もらう時に『ありがとう。彼女と一緒に食べるね。』と言ってるらしいし、それでも好きだ、なんだと迫ってくる子や手作りとわかるチョコを持ってくる子は受け取らないらしいし(本人&職場の同僚から裏は取れている)。
一応、周りには彼女大好きってアピールしてくれているみたいだけど、今年に限ってチョコいらないなんて。
「チョコは好き!でも、今はいらないかな。」
「だから、どうしてなの?」
理由が知りたいの。一年に一度のイベントよ?恋人達にとったら甘い、あ~ま~い日でしょ?
私とは愛しあえないの?
甘い日を過ごさせてくれないの?
愛を確かめさせてくれないの?
「俺ってばチョコ大好きジャン。・・・・で、この頃食べ過ぎた。バレンタイン時期で限定品とか珍しいチョコとか・・・ね。わかるだろ?甘いの勘弁。食べすぎで、しょっぱいのがほしいわけよ。にゃはは!」
照れながら、目線が彷徨って明後日の方向を向いてるし。
なに、その理由?
一人でバレンタインコーナーで買いあさったの!?
マジでぇ~!?
何、その無駄な勇気の使いかた。
前々から、『俺、一人で買う勇気がないから買ってきてくれって』頼まれても、2月14日に渡すからってあんまり代理で買ってきてあげなかったんだよね。
今年は勇気ふりしぼって買いあさったの!?
で、チョコ食べすぎたと・・・呆れた。
でも、本当に別れ話じゃなく良かった。
心の底から良かったと思っている。
思っているけど、でもね心配した分腹も立つわけよ。
「しょっぱい物って、おせんべいとかでも良いわけ?」
ふつふつと湧く怒りに気付いていないのか、にこやかに笑って答えてくれる彼。
「お!いいね。しょっぱくて硬くてちょうどいいジャン。俺たちの愛もかたくて壊れないってね♪」
いかにも『俺いいこと言いました』とドヤ顔で言ってくる。
「知ってる?おせんべいって簡単に衝撃がはいると割れるのよ。割れたら元の形に修復不可能だよね。そんなおせんべいに愛をなぞらえるって・・・ねえ。」
そう言って、ニタリと笑ってやる。
焦りながら『ここにいじめっ子がいる~。』とか言って二人でじゃれあって、バレンタインチョコの話がうやむやになってしまったけど、私は忘れていませんよ。別れ話かと思ったあの衝撃を。
ふふふ!ぜっ~たいチョコをプレゼントして驚かせてやる。
そして『私の愛が食べられないの?』とでも言って必ず食べさせちゃる。
甘いのは勘弁だって?もちろんわかってますよ。優しい彼女だからね。
甘い雰囲気は、今年はナシのバレンタインだね。
覚悟しとけ!ッケ!やさぐれちゃうぞ。
そして迎えた2月14日。
勝負だ!
彼の好きなチョコメーカーの一番高いヤツを買った。
ふふふ!もちろん食べてくれるよな?
甘い雰囲気なんて期待せず、勝手に勝負だと息巻いて出かけた結果は?
あれ?・・・甘いんですけど雰囲気が?
夜景の見えるレストランで、プロポーズされました。
え!?ここのレストランの予約いつからしてたの?
お店もプロポーズのお手伝い?
えぇ!?なに、この甘くうれし恥ずかしの雰囲気は?
指輪!?花束!?
えぇぇぇ!なにこの見世物は!
・・・プロポーズの返事はもちろんOKだけど・・・なに、この雰囲気に負けて返事したみたいな敗北感。
お願いだから、普通にプロポーズしてください。
お知らせいただき、ありがとうございました。誤字脱字を修正しました。
これからもよろしくお願いします。