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永遠の命

作者: 瀬名孝太

永遠の命、それは永遠に続く生命。

しかし、それは永遠であっても先はない。

これからの先の成長も、衰えも、傷も、癒えも

何もかも忘れて永遠に続く。

それは命ではない。生命ではない。

永遠とは死と同義ではないか、そう思えてくる。

しかし、永遠と死は違う。永遠は続く。

続きの続き、先はない。終わりはない。

死は終わりだ。終わる。誰かの心に残滓は残るだろう。

しかし、それもいつかは消え、終わる。

先が続き、終わりがない。永遠は未来亡き死。


私はそれが分かってなお、死を拒み、永遠を欲する。

いや、永遠ならざる永遠が欲しい。

始まり、続き、終わり、また始まる永遠。

私が欲しい永遠の命。紡げる命。


死にたくない、終わりたくない、消えたくない。

誰かに観測され続けなければ気が狂いそうだ。

誰かに観られ続けなければ自分がいるのかさえわからない。怖い。

永遠はどこにあるのだろうか。それは神か。英雄か。偉人か。

有名になれば死してなお忘れられることはない。

しかし、それは死だ。終わる。終わっている。

神話も英雄譚も偉人の逸話も、いつか本が閉じられるように終わる。

人の気まぐれで消え、閉じられ、開かれなくなった本はきっと消えるだろう。

私はその可能性が怖い。


終わり始まる永遠。探して回る有限の命。

どこにある。私の命はまだ永遠ではない。

見つけなければ、私は終わりたくない。


私は探す、永遠の始まり、永遠の終わり。

探す。どこにある。東の国の人の蔵書から西の国の人の文献。

永遠を目指した好敵手達の存在が私の行く先に必ずあった。

しかし、好敵手はすでに朽ちた木の肥やしとなっていた。

私も終わるのだろうか。世界の人々は私を気が狂ったジジイと呼ぶ。誰も見なくなる。

きっと、見られなくなれば消えるのだろう。

2週間前のホテルの支配人の顔のように。観測され続けなければ消える。


ついに私の命も終わりに近づいている。

超新星爆発のように、観測者どもが私に集まってくる。

私が終わると同時に霧散していくのだろう。

散り散りに、私の記憶は消えてしまうのだろう。

知っている。私は終わる者たちを見てきた。

父、母、兄、恋人、娘。皆、終わり消えて行った。

観測しているのは私だけだ。

私が消えればもう誰も覚えていない。

最後に私を観測しているのは冷たい機械。

弱まる心音を観測している。

世界の端の小さなベッドで私は終わった。




ここはどこだろう。わからない。しかし、温かい。

いや、熱い。苦しい。分からない。狭い。

助けて、出たい。

叫ぶ、出たい。

叫ぶ、助けて。

やがて、ひどい息苦しさと共に外に出る。

体が軋む。痛い。

叫ぶ、痛い。




やがて、月日は経ち、私はふと気づく。

始まったのだと。

永遠の命に憧れる。でも、みんな永遠の命なんていらないという。

死なないのはすごいと思うんですけどね。

永遠の生きられるのはすごいと思うんですけどね。

そういうとみんな「うえ、何言ってのこいつ…。」みたいな顔をします。

永遠に生きられたら辛いだけだと大人は言います。

ですが、私は知っています。

辛いこともありますが、楽しいことだってこの世の中起こります。

これから起こるかもしれない楽しいことを死んでしまうだけのことで知れないなんて、人生損してます。

だから、私は永遠に生きたい。そう思います。

やっぱり、みなさん「うえ、何言ってのこいつ…。」と思いますか?

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