第九話 侵入者「作戦開始」
「侵入経路はここだけだ」
影が壁を指差す。その先には空気取りの穴がぽっかりと口を開けている。
「ますます、罠の匂いがするな。入り口はダメなのか?」
「入り口は一度ロックしたら、通常の手段では開かない。が、出るのには支障ない」
「ふむ」
「残りの侵入経路はバスルームの換気孔に通じているここだけ」
「まず、罠だろうな。俺ならそこに罠を仕掛ける」
「逆に罠があるとわかっていれば対応もしやすい──だろ?」
「毒ガスでも流し込めば、いっぱつでお陀仏なんじゃないか?」
「それは前回の作戦で使った。あちらさんも警戒して対策を立てているだろうよ」
「ますますもって罠くさいな」
「ああ、まず十中八九罠だと思って間違いない」
「バレそうなら無理せず撤退すればいいだけだろ?」
「侵入がバレたら任務失敗だが、バレる前に撤退なら俺たちの勝ちだよ。後日、あらためて再戦すればいいだけ──だろ?」
「違いない。連中、まだ事故か事件か判断つけかねてる様子だし、じっくりやればバレないさ」
空気取りの穴を保護していた格子がゆっくりと取り外される。そして、その中に蠢きながら二つの影が消えていった。




