第五話 ロバート「心折れる」
「ロバート! どうしてここにいるの?」
突然、後ろから声をかけられて、反射的に振り返る。
(ロバート──?)
一瞬、気が動転した。今の自分は“レオナルド”のはずなのに。
「ああ、オルカ。おはよう」
慌てて声のトーンを落とす。
「あら、私ったら、すみません」
視線が定まらず、両指を組んでもじもじしている。
「どうかしたの?」
「私ったら、知り合いと見間違えちゃったようで──どうかしてますね。レオナルド大佐とあんな奴と見間違えるなんて」
彼女の瞳は私の顔ではなく、銀縁眼鏡に固定されている。
(あんな奴──?)
ロバートとして会話をする時、彼女はいつも私の顔を避けるように視線をずらしていた。
だが今は違う。まるで“眼鏡が本体“だとオルカの視線が語っている。
(ロバートと呼びかけておきながら、顔を見たらレオナルドだと──? いや、待てよ。もしかして彼女は──)
下手に悩むより直接聞く方が早い。
「知り合い? 彼氏か、何かかい?」
(拒絶されたら死ねるな──)
「彼氏? そんなのいないですよ」
(はい、死亡確定……えっ?)
「確か、君には婚約者がいたはずでは?」
「あれは親が決めただけの形だけの婚約ですから、いずれ時期が来たら解消します!」
目を輝かせながら、にこにこしながらオルカが宣言した。
(あれ、なんか目尻が熱いんだけど──)
「そうか、彼氏にとっては残念なことだろうね」
「ですから、彼氏じゃありません。まあ、今までが幸運すぎたんですよ。こんな私の身近に居れたんですから。逆に私に感謝して欲しいですね」
「──強いんだね」
「ええ、もちろん!」
(こちらは心が折れたよ)
ポキッ




