第四話 オルカ「暴走」
「き、聞かなかったことにしておくよ」
まさに、地雷を踏み抜いたとはこの事だ。
聞かない、聞いたけど知らない、つまり、『何を喋ってもいいよ』とお墨付きをくれた。
(このチャンスは逃さない)
いかに彼、レオナルド大佐との格の差があるのか、今のうちに、とことん教え込んでおく。
「そう? レオナルド様はね。背が高くて、“制服“の着こなしがカッコよくて、声がイケてて、それで将来性が抜群なのよ。凄いでしょう!!」
「えっ? あ、ああ、そうだね、凄いね、あははは──」
「なによ、その声。照れてるの? あなたの事を言ってるんじゃないわよ。レオナルド様のことよ」
「そ、そうだよね。レオナルド様、すごいな──」
「年下の後輩に抜かれて悔しくないのかしら? そんなことだから万年、使いっ走りなのよ」
頭をぼりぼりかく姿は実に頼りない。
(お父さまは何を考えて、こんな男を娘のパートナーにあてがったのかしら)
「後方勤務だから仕方ないよ」
「ふう、よくそんなことが言えるわね。みんな国を守る為に必死なのに」
(もちろん、寿退役するケースは除いてね──)
「そうだよね。だから僕も前線への転属希望を出しているんだ」
「あなたが? 根性なしなのに?」
オルカには兄弟がいないので、幼い頃は兄的な存在として頼っていた。しかし、“婚約者”の意味を知った今ではぞんざいな扱いになるのも仕方ないことだ。
「ひどいな……これでも頑張ってるんだよ」
ロバートの頭を掻く仕草にオルカは目をしかめた。
「今の稼ぎで頑張ってると言われてもねぇ。
三十年働いても小さな家すら買えないんじゃないかしら。こんなのと結婚するとか嫌すぎるんだけど」
思わず本音がこぼれた。
(本人が聞かなかったことにすると言ってるし──いまさら気にしても仕方ないわね)
いつものロバートなら聞き流してノーダメージのはず。下手に訂正なんてしたくない。
結婚したくないのは本心なのだから。




