第二十五章 マリウス・ガリウス「鉄槌を下す」
急遽、査問会議が開催されると小耳に挟んだマリウス・ガリウス中将は息子マルゲリートを救済する為に、会議室へと急ぎ足を進めた。
中に入ると三十分以上前だというのに、すでに参加者は全員揃っているようで、被告席以外に空きは見当たらなかった。
年齢と階級章、一番末席に座る若造が憎きレオナルドだと気付く。
実に憎たらしい顔立ちをしているではないか!
階級も上であり、伯爵である自分に挨拶もしない。たかが子爵のくせにだ。
(こいつの悪行を暴き、息子の濡れ衣を晴らさねばならぬ。いや、こいつは悪者でなければ、息子がその罪を被ることになる──)
つい、気付かぬうちに無意識のまま、口から言葉が溢れていた。
「お前など、『偽物』の癖に」
レオナルドの眉毛がぴくりと動いた。
それを見逃さなかったマリウスが追撃する。
「ほらみろ、図星を突かれて動揺したか! お前など貴族でもなんでもないわ──」
「マリウス中将、それ以上は言わない方がいい──」
長官の忠告を無視して、マリウスは言葉を続けた。
「いいえ、言わせてください! そもそもこの『偽物』がサテン家を名乗り、貴族と称するのが──」
「──そこまでだ」
長官がマリウスの発言を止めた。
「今、貴殿は地獄に片足を突っ込んだ。もう誰も貴殿を救うことはできない。我々でも──」
「ど、どういうことですか?」
「貴殿は軽々しくも、レオナルド少将に対して『偽物』と言った──」
長官は一つため息をつくと、手元にあったファイルから、一枚の書類を取り出すとマリウスに見えるように突き出した。
「これが何かわかるかね?」
「任命書?」
「そうだ。陛下からレオナルド子爵への、家督相続に対する許可及び任命証だ」
「──」
「つまり、貴殿の発言は閣下への叛逆、もしくは、軍の最高機密漏洩。知り得ても口に出してはいけない事柄を口にした。どちらにせよ、重罪だ。下手な発言を続けると、国家反逆罪まで適用される可能性がある。わからないのかね?」
「これは誤解です。大いなる誤解──」
「貴殿には選択肢が二つ、情報漏洩で銃殺刑。もしくは、国家反逆罪で縛り首。貴殿に知り得ない情報を教えた黒幕を素直に教えるなら、悪いようにはしないさ」
どう転んでも貴様は死ぬ。家族を助けたくないのか?
マリウス中将に無言で問いかける長官の目は、虫ケラを見るように冷たく感情が読み取れなかった。




